淋菌(淋病)について、インターネットで検索すればするほど、専門用語が多くて混乱したり、不安が大きくなってしまうことはありませんか?
このページでは、性感染症専門クリニックであるモイストクリニックの医師が、淋菌に関するよくあるご質問に、一つひとつ丁寧にお答えします。正しい知識を得て、あなたの不安を解消する一助となれば幸いです。
自己判断せず、少しでも気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
基礎知識について
Q1. 淋菌(淋病)とは、どんな病気ですか?どこに感染しますか?
A. 淋菌という細菌が原因の性感染症(STD)です。
主に性器・のど(咽頭)・直腸(肛門)の粘膜に感染します。特に、のどや直腸は症状が出ない「無症状」のケースが多く、ご自身が感染していることに気づかないまま、感染を広げてしまう可能性があるため注意が必要です。
Q2. どうやってうつるのですか?
A. 性行為(オーラルセックス・アナルセックスを含む)によって粘膜同士が接触することで感染します。
コンドームを正しく使用することで感染リスクを大幅に減らすことができますが、コンドームで覆われていない部分からの感染も起こり得ます。
Q3. 潜伏期間はどれくらいですか?
A. 一般的に、感染機会から2〜9日程度です。
ただし個人差が大きく、症状が全く出ない方も少なくありません。潜伏期間中であっても、他者へ感染させる可能性はあります。
Q4. トイレの便座、お風呂、タオルの共有などでうつりますか?
A. いいえ、日常生活における間接的な接触で感染することは、まずありません。
淋菌は非常に弱い菌で、人の体外ではすぐに生存できなくなります。主な感染経路は性行為による粘膜接触です。
症状や合併症について
Q5. どんな症状が出ますか?
A. 感染部位や性別によって異なります。
- 男性:排尿時の強い痛みや、黄色く粘り気のある膿が尿道から出るといった尿道炎の症状が典型的です。放置すると精巣上体炎を引き起こし、男性不妊の原因になることもあります。
- 女性:おりものの増加や不正出血、下腹部痛などがみられますが、男性に比べて症状が軽いか、無症状のことが多く発見が遅れがちです。放置すると子宮頸管炎から骨盤内炎症性疾患(PID)に進行し、不妊症や子宮外妊娠のリスクを高めます。
- のど(咽頭):ほとんどが無症状です。軽い痛みや違和感など、風邪のような症状の場合もあります。
- 直腸(肛門):不快感や分泌物、出血などがみられますが、こちらも無症状のことが多いです。
Q6. 妊娠や赤ちゃんへの影響はありますか?
A. はい、影響があります。
妊婦さんが感染していると、早産や前期破水のリスクが高まります。また、出産時に産道で赤ちゃんに感染し、新生児結膜炎を引き起こすことがあります。放置すると失明に至る危険性もあるため、妊娠を希望される方や妊婦の方は、必ず検査・治療を受けてください。
検査や受診について
Q7. 検査は痛いですか?どの検査を受ければよいですか?
A. 痛みはほとんどありませんのでご安心ください。現在は精度の高い「核酸増幅検査(NAAT法、PCR法など)」が主流です。
感染した可能性のある部位に応じて、以下の検体を採取します。
- 性器:男性は尿、女性は腟からのおりものを綿棒で採取します。
- のど:うがい液、または喉の奥を綿棒でぬぐいます。
- 肛門:肛門内を綿棒でぬぐいます。
どの検査が必要かは、医師が問診の上で判断します。詳しくは淋菌の検査|種類と方法のページをご覧ください。
Q8. 心配な行為の直後でも検査は受けられますか?
A. 症状があればすぐに受診してください。症状がない場合、感染機会から24時間以上経過してからの検査を推奨しています。
感染直後は、菌の量が少なく正確な結果が出ない「ウィンドウピリオド」の可能性があります。しかし、症状がある場合はすぐに治療が必要な場合もありますので、まずはご相談ください。
Q9. オンライン診療で対応できますか?
A. はい、当院ではオンライン診療に対応しています。
ご自宅に検査キットをお送りし、検体を返送していただくことで検査が可能です。陽性の場合は、お薬の処方もオンラインで対応できます(治療法は医師の判断によります)。来院する時間がない方、プライバシーが気になる方におすすめです。
治療や治療後について
Q10. どんな治療をしますか?市販薬や余っている薬で治せますか?
A. いいえ、自己判断での服薬は絶対にやめてください。当院ではガイドラインに基づき、主に「セフトリアキソン」という抗菌薬の点滴治療を1回行います。
近年、抗生物質が効かない「薬剤耐性菌」が世界的に大きな問題となっています。市販薬では治りませんし、間違った抗菌薬の使用は耐性菌を増やす原因になります。必ず専門の医療機関で適切な診断と治療を受けてください。
Q11. 治療後、いつから性行為を再開できますか?
A. 治療開始から7日間経過し、かつパートナーの治療も完了するまでは控えてください。
ご自身の症状が消えても、パートナーが未治療だと再び感染してしまう「ピンポン感染」の原因となります。必ず一緒に治療することが重要です。
Q12. のどに感染した場合、治ったかどうかの確認は必要ですか?
A. はい、必ず必要です。
のどは血流が少なく薬が届きにくいため、菌が生き残りやすい部位です。そのため、治療後7〜14日を目安に、再度検査をして完全に治癒したかを確認する「治癒確認検査(Test of Cure)」を強く推奨しています。
Q13. パートナーにはどう伝えればいいですか?
A. 大変デリケートな問題ですが、正直に、そして冷静に伝えることが大切です。
「自分も感染していたことがわかった。あなたにも感染している可能性があるから、今後の健康のためにお互い検査を受けてしっかり治そう」というように、相手を責めるのではなく、二人で乗り越える問題として話すことをお勧めします。当院では、伝え方に関するご相談も承っていますので、お一人で悩まず医師にご相談ください。
まとめ:次に何をすべきか
ここまで読んで、ご自身の状況に当てはまる点はありましたか?
淋菌感染症は、早期発見・早期治療、そしてパートナーとの同時治療が何よりも大切です。
- 自己判断で放置せず、まずは専門医に相談する。
- 感染の可能性がある部位を全て検査する。
- 陽性だった場合は、パートナーにも正直に伝え、一緒に治療を受ける。
当院では、あなたのプライバシーに配慮し、安心して相談できる環境を整えています。