最終更新:2025-10-19/監修:金谷 正樹 医師(日本性感染症学会 会員)
【結論から解説】検査結果のポイント
梅毒の血液検査は、「RPR」と「TP」という2種類の数値を組み合わせて判断することが不可欠です。どちらか一方だけでは、正確な診断はできません。
- RPR:病気の活動性(勢い)を示します。治療が成功すると数値が下がります。
- TP:過去に感染したことがあるかを示します。一度陽性になると、治った後も陽性のまま残ることが多い「感染の目印」です。
- RPR(+) / TP(-) の場合:梅毒ではなく、「偽陽性」(他の原因による反応)の可能性が高いパターンです。
- 治療効果の目安:治療後、RPRの数値が4分の1以下に低下すれば、治療が成功していると判断します。
【目次】気になる項目をタップ
1. なぜ2種類の検査が必要? RPRとTPの役割
梅毒の診断では、性質の異なる2つの検査を同時に行い、結果をパズルのように組み合わせることで、現在の状態を正確に把握します。
RPR検査:病気の「活動性」をみる指標
現在の感染が活発かどうか、病気の勢いを反映する検査です。数値(1:2, 1:4, 1:8…のように倍々で増加)で結果が出るため、治療によって数値が下がっていくかを見ることで、治療効果の判定に使われます。ただし、妊娠や自己免疫疾患など、梅毒以外の原因で陽性(偽陽性)になることがあります。
TP検査:感染の「有無」をみる指標
梅毒の菌そのものに対する抗体を調べる検査です。「過去に一度でも梅毒にかかったことがあるか」という感染歴がわかります。非常に精度が高い一方、一度陽性になると、適切に治療され完治した後も、生涯にわたり陽性のまま残ることが多いのが特徴です。
2. 【早見表】検査結果の4つの基本パターンと解釈
RPRとTPの組み合わせで、ご自身の状態がどう解釈されるのか、また次に何をすべきかの目安がわかります。ただし、最終的な診断は症状や感染機会の時期などを踏まえて医師が総合的に行います。
RPR(−) / TP(−) の場合
考えられる状態:
梅毒の可能性は低い。ただし、感染直後(ウィンドウ期)の可能性は残ります。
推奨される次のステップ:
不安な行為から4週間未満の場合は、時期をあけて(例:4~6週間後)の再検査を推奨します。
RPR(−) / TP(+) の場合
考えられる状態:
過去の感染(治療済み)。または、ごく初期の感染や潜伏期の可能性があります。
推奨される次のステップ:
過去の治療歴を確認。治療歴がなければ、潜伏梅毒として治療を検討する場合があります。
RPR(+) / TP(−) の場合
考えられる状態:
梅毒ではなく、RPRの「生物学的偽陽性」の可能性が高いです。
推奨される次のステップ:
念のためTP法の再検査や、時期をあけての再検査を行うことがあります。
RPR(+) / TP(+) の場合
考えられる状態:
現在、治療が必要な梅毒感染の状態。または過去の感染が考えられます。
推奨される次のステップ:
医師の診察のもと、病期を判断し、適切な治療を開始します。
3. RPRの数値(力価)の読み方|「4倍の変化」が重要
治療効果の判定では、RPRの数値(力価:りきか)がどのように変化したかを確認します。
- 治療が成功しているサイン:治療後、RPRの数値が4分の1以下(例:1:32 → 1:8)に低下した場合、治療は有効と判断します。
- 再感染・治療失敗のサイン:逆に、一度下がった数値が再び4倍以上に上昇(例:1:8 → 1:32)した場合、再感染や治療の失敗を疑い、再評価が必要です。
- 数値が下がりきらない場合(セロファスト):治療後にRPRが十分に低下し、低い数値のまま陽性が続く状態を「セロファスト」と呼びます。4倍の上昇がなければ、一般的に追加の治療は不要とされます。
4. 検査結果に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 「RPR陽性、TP陰性」と言われました。梅毒ですか?
A. いいえ、その場合は梅毒ではない可能性が高いです。RPR検査が、妊娠や膠原病など梅毒以外の要因で反応した「偽陽性」と考えられます。ただし、念のため時期をあけて再検査を行うことがあります。
Q2. 「TP陽性、RPR陰性」は、もう治ったということですか?
A. 過去に治療して治癒した場合、このパターンになります。TPは感染の目印として陽性が残るためです。ただし、もし過去に治療した記憶がない場合は、症状のない「潜伏梅毒」の可能性も考え、医師が慎重に判断します。
Q3. 治療したのにRPRの数値が下がりません。再治療は必要ですか?
A. RPRの数値の低下には時間がかかり、完全に陰性化せず低い数値のまま陽性が続くこと(セロファスト)は珍しくありません。数値が4倍以上に再上昇していなければ、一般的には追加治療の必要はありません。
Q4. 検査結果が「確実」になるのは、いつですか?
A. 個人差はありますが、感染の心当たりがある日から4〜6週間経過していれば、かなり信頼性の高い結果が得られます。それより前の検査で陰性だった場合は、医師と相談の上、再検査をご検討ください。
5. ご自身の結果に不安な方へ(当院の検査体制)
検査結果の解釈は複雑であり、ご自身の状況と照らし合わせて正しく理解することが重要です。モイストクリニックでは、患者様一人ひとりの不安に寄り添い、丁寧な説明を心がけています。
- 迅速で正確な検査:RPR(定量)とTPを同時に検査し、最短当日中に結果をご説明します。(自費 ¥9,000 ※通常検査¥4,500+即日オプション¥4,500)
- わかりやすい結果説明:専門用語を避け、「今どういう状態で、次に何をすべきか」を明確にお伝えします。
- アクセスしやすい診療体制:恵恵比寿駅徒歩3分、土日祝・夜間22時まで診療。いつでもご相談いただけます。
検査結果や今後の治療について、直接医師に相談しませんか?
6. 参考文献・出典
- CDC. Syphilis Screening and Diagnostic Testing
- 国立感染症研究所. 梅毒に関するQ&A
- 日本性感染症学会. 性感染症 診断・治療 ガイドライン 2020