
「性器ヘルペスと診断されたけど、どんな治療をするの?」
「何度も再発して、心も体もつらい…」
「パートナーにうつさないか心配…」
性器ヘルペスは、多くの方がこうした痛みや不安を抱える病気です。
この記事では、現在日本で受けられる標準的な治療法から、再発を効果的に抑えるための新しい選択肢、さらには世界で研究が進む最新の治療薬まで、性器ヘルペス治療の「今」と「未来」を網羅的に解説します。
あなたの状況に合った治療法を見つけるための一助となれば幸いです。
(※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際の治療は、必ず医師の診察のもとで決定されます。)
性器ヘルペスってどんな病気?
性器ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス(HSV-1またはHSV-2)」が原因で、性器やその周辺に水ぶくれやただれができる感染症です。
一度感染すると、ウイルスは神経節に潜伏し、疲れ・ストレス・体調不良などをきっかけに再発を繰り返す特徴があります。また、症状がない時でもウイルスが排出(無症候性排出)されることがあり、自覚がないままパートナーに感染させてしまう可能性があります。
いま日本で受けられる「標準治療」
現在、日本国内の医療機関で受けられる標準的な治療法を解説します。
1) 症状が出たときに治す「エピソード治療」
症状が出始めたら、できるだけ早く抗ウイルス薬を服用することで、症状の悪化を防ぎ、治るまでの期間を短縮します。
- 初めて症状が出た場合(初感染) 症状が強く出やすいため、7〜10日間しっかりと薬を飲みます。
- 処方例:
- バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス®):1回500mgを1日2回
- アシクロビル(ゾビラックス®):1回200mgを1日5回
- ファムシクロビル(ファムビル®):1回250mgを1日3回
- 処方例:
- 症状が再発した場合 初感染時より短い期間(5日間程度)の服用で治療します。
- 処方例:
- バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス®):1回500mgを1日2回
- アシクロビル(ゾビラックス®):1回200mgを1日5回
- ファムシクロビル(ファムビル®):1回125mgを1日2回
- 処方例:
2) “備える治療” PIT(Patient-Initiated Therapy)
再発のピリピリとした違和感などの前駆症状に気づいた時点で、患者様ご自身の判断で、あらかじめ処方された薬をすぐに飲む方法です。再発してからの来院では間に合わない場合でも、ご自身で早期治療を開始できるのが大きなメリットです。
- PITで処方される薬の例:
- ファムシクロビル(ファムビル®): 1回1000mgを2回(12時間おきに)服用し、1日で治療が完了します。
- アメナメビル(アメナリーフ®): 1200mgを1回だけ服用して完了します。食後に飲むのがポイントです。
PITは「再発の前兆を自分で識別できる方」「再発を繰り返す方」に特に有効です。ご希望の方は診察時にご相談ください。
3) 再発そのものを減らす「抑制療法」
年に何度も再発を繰り返す方(目安として年6回以上)には、抗ウイルス薬を少量、毎日1回飲み続けることで、再発の頻度を大幅に減らす治療法です。
- 期待できる効果:
- 再発による心身の負担を軽減します。
- 無症状時のウイルス排出も抑え、パートナーへの感染リスクを約50%低下させることが報告されています。
- 処方例:
- バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス®): 1回500mgを1日1回、毎日服用します。
- (※1年間服用を続けた後、一度休薬して今後の治療方針を再検討するのが一般的です。)
4) 重症例・薬剤耐性例の治療
免疫機能が低下している方などで、飲み薬が効きにくい(耐性)場合は、入院して点滴による治療(ホスカルネットなど)を行うことがあります。これは非常に稀なケースですが、治療の選択肢として存在します。
再発を減らすための生活上の工夫
薬による治療と合わせて、日々の生活で以下の点を心がけることも再発予防につながります。
- 十分な睡眠と休養: 疲れやストレスは最大の再発誘因です。
- バランスの取れた食事: 免疫力を維持する基本です。
- 体調管理: 風邪や過度な日焼け、性交渉による摩擦なども引き金になり得ます。
- 前駆症状に注意: ピリピリ・ムズムズしたら性行為を控え、すぐにPITを開始しましょう。
- コンドームの使用: パートナーへの感染リスクを減らしますが、皮膚が接触する部分を全て覆えるわけではないため、完全ではありません。
「いま注目」の新しい治療・研究トピック
現在、世界中でヘルペス治療の研究が進んでいます。ここでは患者様向けに最新の動向を簡単にご紹介します。
A. 新しい飲み薬(日本未承認)
- プリテリビル(pritelivir): これまでの薬とは異なる仕組みでウイルスの増殖を抑えるため、既存の薬が効きにくくなったヘルペスにも効果が期待されています。現在、国際的な臨床試験の最終段階に進んでおり、難治性ヘルペスに苦しむ方々の新たな選択肢となる可能性があります。
B. “注射で予防・再発抑制”をめざす抗体医薬(研究段階)
- ウイルスの働きを直接抑える「抗体」を医薬品として利用する研究が進んでいます。将来的に、月に1回などの定期的な注射で、ヘルペスの再発を予防するという新しい治療コンセプトが期待されています。
C. ワクチン(まだ世界で承認されたものはありません)
ヘルペスを根本的に解決する手段として最も期待されているのがワクチンです。
- mRNAワクチン: モデルナ社やビオンテック社(新型コロナワクチンで有名)などが、再発予防や初感染予防を目的としたmRNAワクチンの臨床試験を行っており、開発の主役として期待されています。
- 現状のまとめ: 2025年現在、残念ながら承認されたヘルペスワクチンはまだありません。しかし、特にmRNAワクチンを中心に開発は着実に前進しており、数年後の実用化が待たれます。
モイストクリニック恵比寿での受診の流れ
- 診察・検査: 症状を詳しくお伺いし、患部の状態を診察します。診断を確定するために、水ぶくれなどから検体を採取して検査を行うこともあります。
- 治療方針のご提案:
- 初めての方や症状が強い方: まずは症状をしっかり抑える「エピソード治療」を開始します。
- 再発を繰り返す方: ライフスタイルやご希望を伺い、「抑制療法」や「PIT」など、あなたに合った最適な治療プランを一緒に考えます。
- 再発予防のサポート: 薬の処方だけでなく、再発のきっかけとなる生活習慣の整理や、パートナーへの説明に関するご相談などもお受けしています。
よくある質問(Q&A)
Q. コンドームを使えばうつりませんか? A. リスクは下がりますがゼロにはなりません。皮膚が接触する部分を完全には覆えないためです。「抑制療法」「コンドームの使用」「症状がある時は性行為を控える」の三本柱が有効です。
Q. どのくらい再発したら“抑制療法”を考えますか? A. 目安として「年に6回以上」の再発が続く方は、抑制療法を検討する価値が高いと言えます。ただ、回数だけでなく、1回の症状の重さや精神的なご負担なども考慮して総合的に判断しますので、お気軽にご相談ください。
Q. 妊娠・出産は大丈夫ですか? A. 適切な管理を行えば問題なく出産できます。ただし、分娩時に活動性の病変があると赤ちゃんに感染するリスクがあるため、産婦人科と連携した管理が非常に重要です。妊娠中・妊活中の方は必ず医師にご相談ください。
まとめ
- 性器ヘルペスの治療は、症状が出てから治す「エピソード治療」、兆候が出たらすぐ飲む「PIT」、そして再発自体を抑える「抑制療法」が中心です。
- ご自身の再発頻度やライフスタイルに合わせて、最適な治療法を医師と一緒に見つけましょう。
- パートナーへの感染対策は、「症状がある時は性行為を控える」「コンドームの使用」「(必要に応じて)抑制療法」の三本柱が有効です。
- まだ実用化はされていませんが、新しい飲み薬やワクチンなどの研究も世界で活発に進んでおり、未来の治療はさらに進化する可能性があります。
受診のご案内
「自分に合うのはPIT?それとも抑制療法?」
「パートナーのことも相談したい」
など、あなたの状況に合わせて最適なプランをご提案します。症状のある方はもちろん、再発にお悩みの方、妊娠・妊活中の方もお気軽にご相談ください。
モイストクリニック(恵比寿)のご案内
モイストクリニックは、東京都渋谷区恵比寿にある【性感染症・男性科・婦人科】の専門クリニックです。
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当院では、対面・オンラインのどちらでも診療が可能。お仕事やご予定の合間でも受診しやすいよう、平日夜間(22時まで)や土日祝日も診療しています。
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症状に心当たりのある方や不安がある方も、ぜひ一度ご相談ください。
モイストクリニックは、あなたの健康と安心のために、丁寧にサポートいたします。
🔖 監修者情報

監修:モイストクリニック院長 金谷 正樹
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療を行っている。日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療を目指している。
🖊️ この記事の執筆者

監修:泌尿器科医 宮田(モイストクリニック)
国立信州大学医学部医学科を卒業後、川崎市立井田病院にて初期研修を修了。都内大学病院の泌尿器科に入局し、性感染症分野で専門性を深める。
日本性感染症学会、日本感染症学会、日本性機能学会などに所属し、現在は薬剤耐性淋菌に対する新規抗生剤の研究に携わりながら、性感染症および泌尿器科疾患の診療にあたっている。
参考文献
- 日本性感染症学会:性感染症 診断・治療ガイドライン 2020
- 医薬品医療機器総合機構(PMDA):各種抗ヘルペスウイルス薬 添付文書・審査報告書
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC): Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021
- AiCuris AG. Press Releases.
- Moderna, Inc. Pipeline.
- BioNTech SE. Press Releases.