HIV検査の種類と選び方|採血・迅速・郵送(自宅)は何が違う?【医師が解説】

「迅速検査?」「郵送検査?」「クリニックの検査?」
何が違って、どれを選べばいいか分からない…

不安な中、たくさんの検査方法があって混乱してしまいますよね。ご安心ください。それぞれの検査の「違い」と「目的別の選び方」を分かりやすく解説します。


まず結論から

  • 検査の主な違いは、「検出できる時期(ウィンドウ期)」「結果が出る速さ」です。
  • 「第4世代(採血)」「迅速検査(指先・口腔液)」「NAT(早期検査)」「郵送検査」などがあり、ご自身の状況と目的に合わせて選ぶことが大切です。

どの検査を受けるべきか、直接相談したい方へ

当院では、医師があなたのご状況を丁寧にお伺いし、最適な検査をご提案します。一人で迷わず、まずはご相談ください。→ HIV検査の予約・相談(恵比寿)

目次

1. Q. HIV検査には、どんな種類があるの?(クリックして比較)

主に4つのタイプがあります。それぞれの特徴を、クリックして確認してみてください。

① 第4世代 抗原抗体検査(クリニックでの標準検査)
  • しくみ:腕からの採血(静脈採血)で、ウイルスの一部である「p24抗原」と、体が作る「抗体」の両方を検出します。
  • 検出できる時期:18~45日後(目安)
  • 結果まで:数日(検査室で分析)。※当院ではこれをHIV検査として運用しています。
  • こんな人に:標準的で精度の高い検査を受けたい方。3週間~1ヶ月半経過した方。
② 迅速検査(即日検査)
  • しくみ:指先の血液や、口腔液(唾液)を使い、その場で結果を出します。多くは「抗体」のみ、一部「抗原抗体」を調べるキットがあります。
  • 検出できる時期:18~90日後(抗原抗体)、23~90日後(抗体のみ)
  • 結果まで:約20~30分。
  • こんな人に:「今日」「今すぐ」結果を知りたい方。
  • 注意点:ウィンドウ期が長めです。早い時期の陰性は「早すぎた陰性」の可能性があり、後日の再検査が必要です。
③ NAT(核酸増幅検査/RNA検査)
  • しくみ:血液中(静脈採血)のウイルス遺伝子(RNA)そのものを直接検出します。
  • 検出できる時期:10~33日後(目安)
  • 結果まで:数日(高度な分析が必要)。
  • こんな人に:最も早く知りたい方。高リスクな行為があった方。急性期症状(発熱・発疹など)が出ている方。
  • 注意点:費用が高額になることが多く、実施できる医療機関は限られます。
④ 郵送(自宅)検査キット
  • しくみ:自宅でご自身で血液(指先)や口腔液を採取し、検査機関に郵送します。検査方法はキットにより異なります。
  • 検出できる時期:キットの検査方法(抗体のみか、抗原抗体か)によります。
  • 結果まで:郵送含め数日~1週間程度。
  • こんな人に:匿名で検査を受けたい方。クリニックに行く時間がない方。
  • 注意点:あくまで「スクリーニング(ふるい分け)」です。陽性と出た場合は、必ず医療機関で「確認検査」を受ける必要があります。

(出典:CDC「Getting Tested for HIV」、API-Net「保健所等で実施するHIV郵送検査の手引き」)

2. Q. 結局、どの検査を選べばいいですか?(目的別ガイド)

結論:あなたの「状況」と「今どうしたいか」で最適な検査は変わります。

パターンA:「とにかく今日、結果を知りたい」方

→「迅速検査」が選択肢です。
ただし、不安な行為から3ヶ月(90日)未満の場合、その場では「陰性」でも、それは「早すぎた陰性」かもしれません。安心のため、後日(3ヶ月後目安)の再検査を必ず計画してください。

パターンB:「精度が高く、標準的な検査を受けたい」方

→「第4世代 抗原抗体検査」が最適です。
不安な行為から3週間~1ヶ月半ほど経過していれば、精度の高い結果が期待できます。当院では、この信頼性の高い検査をご提供できるよう体制を整えています。

パターンC:「まだ2週間も経っていないが、リスクが高く不安」な方

→「NAT(核酸増幅検査)」を検討します。
ただし、NATは非常に高感度な検査であり、医師の診察が必要です。まずはクリニックにご相談ください。当院では必要に応じてNATの手配や連携を行います。

パターンD:「匿名で、まずはこっそり調べたい」方

→「郵送(自宅)検査」または「保健所の匿名検査」が選択肢です。
これらは「スクリーニング」であり、確定診断ではありません。もし「陽性(要精密検査)」と出た場合は、その結果を持って必ず医療機関を受診してください。

3. Q. 検査が「陽性」だったら、それで確定ですか?

結論:いいえ、最初の検査(スクリーニング)が陽性でも、すぐに「確定」ではありません。

HIV検査は、見逃しがないように非常に感度が高く作られているため、稀にHIVに感染していないのに陽性(偽陽性)と出ることがあります。そのため、郵送検査や迅速検査、クリニックでの最初の検査で「陽性」と出た場合は、必ずより精密な「確認検査」に進みます。

日本では、スクリーニング陽性の後、「鑑別免疫測定」や「NAT」といった複数の確認検査を経て、初めて「確定診断」となります。(出典:日本エイズ学会 診断ガイドライン2020)

4. 当院でできること(恵比寿・モイストクリニック)

どの検査を受ければいいか、一人で選ぶ必要はありません。

当院では、患者様のご状況や不安な行為からの時期を丁寧にヒアリングし、医学的根拠に基づいて「今、あなたに最適な検査」をご提案します。

  • 精度の高い検査:標準的で信頼性の高い「第4世代 抗原抗体検査」を中心に、最短で不安を解消します。
  • 丁寧な結果説明:医師が結果を分かりやすく説明し、必要な再検査の計画まで一緒に立てます。
  • NATの連携:医師の診察でNATが必要と判断した場合は、外部検査や専門機関と連携して速やかに手配します。
  • 陽性時のサポート:万が一、陽性が疑われる場合は、当院が責任を持って専門の医療機関へご紹介し、治療にスムーズに移行できるようサポートします。

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5. よくあるご質問(FAQ)

Q1. 自宅の郵送検査キットは正確ですか?

A. 検査自体は検査機関で行うため精度は高いですが、ご自身での血液採取がうまくできないと正しい結果が出ない可能性があります。また、陽性と出ても確定ではなく、必ず医療機関での確認検査が必要です。

Q2. 口腔液(唾液)の検査は信頼できますか?

A. 口腔液の検査は、血液検査に比べてウィンドウ期が長くなる傾向があります(抗体のみを検出するものが多いため)。不安な行為から十分な期間(3ヶ月以上)が経過している場合の確認には使えますが、早期発見には向きません。

Q3. 指先の血液と、腕からの採血は何が違いますか?

A. 指先の血液は「迅速検査」に、腕からの採血(静脈血)は「検査室での精密検査(第4世代やNAT)」に使われるのが一般的です。一般的に、静脈血を用いた検査室での検査の方が、より高精度な分析が可能です。

Q4. 結局、どの検査が一番おすすめですか?

A. 不安な行為から3週間~1ヶ月半経っているなら、精度と早さのバランスが良い「第4世代 抗原抗体検査」が最も標準的です。最終確認は3ヶ月後の同検査をお勧めします。

6. 監修医師・参考文献

監修:モイストクリニック院長 金谷正樹

国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療を行っている。日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療を目指している。

【この記事を読んだあなたへ】
どの検査を選ぶか迷うのは当然のことです。大切なのは、あなたの状況に合わない検査を受けて「早すぎる陰性」に安心してしまうことを避けることです。当院では、その“道案内”を専門家として責任を持って行います。ぜひ一度ご相談ください。

参考文献・公的情報

  • CDC (アメリカ疾病予防管理センター)|Getting Tested for HIV
  • 厚生労働省「HIVとエイズ」
  • 日本エイズ学会「診療におけるHIV-1/2感染症の診断ガイドライン2020」
  • エイズ予防情報ネット(API-Net)「保健所等で実施するHIV郵送検査の手引き」
  • FDA (アメリカ食品医薬品局)|OraQuick In-Home HIV Test