【医師監修】ヘルペス(性器・口唇)とは?原因から症状、最新治療(アメナリーフ)まで徹底解説

【医師監修】ヘルペス(性器・口唇)とは?原因から症状、最新治療(アメナリーフ)まで徹底解説

ヘルペスは、一度感染すると体内にウイルスが潜み、心身のストレスなどをきっかけに再発を繰り返すことがある感染症です。特に性器ヘルペスは、痛みだけでなく、パートナーへの感染など、精神的な負担も大きい疾患です。「もしかしてヘルペスかも?」とご不安な方、繰り返す症状にお悩みの方は、ぜひこの記事で正しい知識を得て、適切な対処法を知ってください。

この記事の要点(30秒でチェック)

  • 原因:単純ヘルペスウイルス(HSV-1/HSV-2)の感染が原因です。性器の病変は、HSV-2の方が再発しやすい傾向があります。
  • 診断:症状が出ている部分を綿棒などでこすって調べるNAAT/PCR検査が最も正確です。血液検査だけでは「今の症状」の原因は確定できません。
  • 治療:抗ウイルス薬の内服が基本です。再発の兆候を感じてから24時間以内に飲み始めると最も効果的です。
  • 再発対策:再発を繰り返す方には、毎日お薬を飲んで発症を抑える「抑制療法」や、兆候があった時にすぐご自身で服用できる新しい単回投与薬(アメナリーフ®)もあります。
  • 注意点:症状がある間は性行為を控えましょう。コンドームは感染リスクを減らしますが、完全に防ぐことはできません。

「もしかしてヘルペスかも?」と思い当たる症状があれば、自己判断せず、お早めに当院へご相談ください。

目次

  1. ヘルペスとは?ウイルスの基本
  2. どうやってうつる?(感染経路)
  3. どんな症状が出る?(症状と経過)
  4. どうやって調べる?(検査と診断)
  5. どうやって治す?(治療の考え方)
  6. 似ている病気と合併症
  7. 日常生活とパートナーへの配慮
  8. よくある誤解とQ&A

1. ヘルペスとは?ウイルスの基本

ヘルペスは、「単純ヘルペスウイルス(HSV)」というウイルスが皮膚や粘膜に感染することで発症します。一度感染すると、ウイルスは神経節(顔なら三叉神経、性器なら仙骨神経)に潜伏し、生涯にわたって体内に存在し続けます。そして、免疫力が低下した時などに再び活性化(再発)するのが特徴です。

  • HSV-1(1型):主に上半身、特に口唇やその周りに症状が出ることが多いタイプです。
  • HSV-2(2型):主に下半身、性器や臀部(おしり)に症状が出ることが多いタイプです。性器ヘルペスにおいて、1型よりも再発や無症候性排出が多いとされています。

感染のタイミングによって、「初感染」「非初感染初発」「再発」に分けられ、それぞれ症状の重さや対処法が異なります。

2. どうやってうつる?(感染経路)

ヘルペスの主な感染経路は、ウイルスが含まれる水疱・びらん(ただれ)・粘膜・体液との「直接的な接触」です。

具体的には、オーラルセックスを含む性行為(口と性器、性器同士、性器と肛門など)や、口と口の接触(キスなど)によって感染が広がります。

特に重要なのは、「無症候性排出」の存在です。これは、見た目には水疱などの症状が全くなくても、皮膚や粘膜からウイルスが排出されている状態を指します。このため、症状がない時期のパートナーにも感染させてしまう可能性があるのです。

よくある質問:温泉や食器でうつる?

ヘルペスウイルスは熱や乾燥に弱く、物体の表面で長くは生きられません。そのため、温泉やプールの水、タオルや食器の共有などで感染する可能性は極めて低いと考えられています。過度に心配する必要はありません。

3. どんな症状が出る?(症状と経過)

ヘルペスの症状は、特徴的な経過をたどります。

  1. 前駆症状:水疱が現れる半日〜1日ほど前に、皮膚にピリピリ、チクチク、ムズムズといった違和感やかゆみが出ます。
  2. 水疱(すいほう):赤くなった皮膚の上に、小さな水ぶくれが複数できます。
  3. びらん・潰瘍:水ぶくれが破れ、ただれた状態(びらん)や、えぐれたような状態(潰瘍)になります。この時期が最も痛みが強いです。
  4. 痂皮(かさぶた):ただれた部分が乾いて、かさぶたになり、自然に剥がれ落ちて治癒します。

特に初めて感染した「初感染」の場合は、症状が広範囲に出やすく、高熱や強い痛み、リンパ節の腫れなどを伴うことが多くあります。

口唇ヘルペスと性器ヘルペスの違い

項目口唇ヘルペス性器ヘルペス
好発部位唇、口の周り、鼻性器、臀部(おしり)、太もも
初感染の症状比較的軽いことが多い高熱や強い痛みを伴うことが多い
再発頻度年に1〜2回程度が多い(特にHSV-2の場合)より頻繁に繰り返すことがある

4. どうやって調べる?(検査と診断)

ヘルペスの診断で最も重要なのは、「本当にヘルペスウイルスが原因か」を正確に特定することです。視診(見た目)だけでは判断が難しいケースも多いため、確定診断には検査が不可欠です。

  • NAAT/PCR検査(核酸増幅法)【最も推奨される検査】です。症状が出ている水疱やびらんの部分を綿棒でこすり、ウイルスの遺伝子を検出します。非常に感度が高く、ウイルスの型(1型か2型か)まで特定できます。
  • 抗体検査(血液検査):過去にヘルペスに感染したことがあるか(抗体があるか)を調べる検査です。「今の症状」がヘルペスによるものかを直接証明することはできません。また、IgM抗体検査は精度が低く推奨されていません。

5. どうやって治す?(治療の考え方)

ヘルペスの治療には、ウイルスの増殖を抑える「抗ウイルス薬」の内服(飲み薬)が基本となります。塗り薬もありますが、効果が限定的であるため、内服薬との併用、あるいはごく軽い症状の場合にのみ使用されます。

初発の治療

初めて症状が出た場合は、ウイルス量が多く症状も重くなりがちです。アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビルといった抗ウイルス薬を5〜10日間、確実に服用することが重要です。

再発時の治療(エピソード療法)

再発の場合は、「ピリピリ」などの前駆症状を感じてから24時間以内、遅くとも48時間以内に内服を開始することが最も効果的です。早期に服用することで、症状を軽くしたり、治癒までの期間を短縮したりできます。

頻繁な再発を抑える治療(抑制療法)

年に6回以上など、再発を頻繁に繰り返す方には、毎日少量の抗ウイルス薬を服用し続ける「抑制療法」という選択肢があります。これにより、再発の頻度を70〜80%減少させることができ、QOL(生活の質)の向上や、パートナーへの感染リスクを低減させる効果も期待できます。

新しい治療の選択肢:Patient Initiated Therapy (PIT)

2023年2月、新しいタイプの再発治療薬「アメナメビル(アメナリーフ®)」が承認されました。これは、あらかじめ処方されたお薬を患者様が保管しておき、「再発の兆候を感じたら、ご自身の判断で1回服用するだけ」という画期的な治療法です。医療機関へ急いで駆けつける時間がない方でも、最適なタイミングで治療を開始できます。当院でも処方が可能ですので、頻繁な再発にお悩みの方はご相談ください。

6. 似ている病気と合併症

性器周辺の潰瘍や水疱は、ヘルペス以外の病気の可能性もあります。自己判断は禁物です。

  • 鑑別が必要な病気:梅毒の潰瘍、帯状疱疹、毛嚢炎(もうのうえん)、アフタ、Mpox(サル痘)など。
  • HIVとの関連:性器ヘルペス(特にHSV-2)に感染していると、性器の粘膜に傷ができやすくなるため、HIVに感染するリスクが2〜3倍高まると報告されています。機会があれば、一度HIV検査を受けることも推奨されます。
  • 妊娠との関連:妊婦が初めて性器ヘルペスに感染すると、産道感染により赤ちゃんに重篤な影響が出ることがあります。妊娠中または妊娠を希望される方は、必ず医師に申し出てください。

7. 日常生活とパートナーへの配慮

ヘルペスと診断されたら、ご自身の症状管理だけでなく、パートナーへの配慮も大切になります。

  • 症状(水疱やただれ、前駆症状)がある間は、キスや性行為(オーラルセックスを含む)は避けましょう。
  • 症状が治まった後も、無症候性排出の可能性があるため、コンドームを使用することでパートナーへの感染リスクを減らすことができます(ただし100%ではありません)。
  • ストレス、疲労、睡眠不足、風邪などは再発の引き金になります。日頃から体調管理を心がけましょう。

パートナーへの伝え方について

ヘルペスに感染したことをパートナーへ伝えるのは、非常にデリケートな問題です。しかし、正直に話し合うことが、今後の信頼関係とパートナーの健康を守る上でとても重要です。「いつ、どのように話せばいいか分からない」といったご不安があれば、診察時にご相談ください。また、パートナーの方と一緒にご来院いただき、医師から直接ご説明することも可能です。

8. よくある誤解とQ&A

Q. 血液検査だけで「今の発疹がヘルペスか」分かりますか?

A. いいえ、分かりません。血液検査(IgG抗体)で分かるのは「過去に感染したことがあるか」までです。今出ている症状の原因を確定させるには、症状が出ている場所を直接調べるNAAT/PCR検査が必要です。

Q. 塗り薬だけで治りますか?

A. 飲み薬が治療の基本です。塗り薬単独での効果は限定的で、ウイルスの増殖を根本から抑えることは難しいため、通常は飲み薬が処方されます。

Q. 一度かかったら、もう治らないのですか?

A. ウイルスを体内から完全に排除することは現代の医療ではできません。しかし、お薬で症状を速やかに抑えたり、再発の頻度をコントロールしたりすることは十分に可能です。正しく付き合っていくことが大切です。

モイストクリニック(恵比寿)のご案内

モイストクリニックは、東京都渋谷区恵比寿にある【性感染症・男性科・婦人科】の専門クリニックです。
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症状に心当たりのある方や不安がある方も、ぜひ一度ご相談ください。
モイストクリニックは、あなたの健康と安心のために、丁寧にサポートいたします。

🔖 監修者情報

モイストクリニック 金谷院長

監修:モイストクリニック院長 金谷 正樹
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療を行っている。日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療を目指している。

🖊️ この記事の執筆者

モイストクリニック宮田先生

監修:泌尿器科医 宮田(モイストクリニック)
国立信州大学医学部医学科を卒業後、川崎市立井田病院にて初期研修を修了。都内大学病院の泌尿器科に入局し、性感染症分野で専門性を深める。
日本性感染症学会、日本感染症学会、日本性機能学会などに所属し、現在は薬剤耐性淋菌に対する新規抗生剤の研究に携わりながら、性感染症および泌尿器科疾患の診療にあたっている。

参考文献

  • CDC. (2021). Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021.
  • IUSTI. (2024). 2024 European guideline for the management of genital herpes.
  • NICE CKS / NHS. Genital herpes.
  • 厚生労働省. 単純ヘルペスウイルス感染症.
  • 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA). アメナリーフ錠200mg 添付文書改訂(2023年2月).