「ヘルペスかも?」自己判断する前に
陰部の水ぶくれ・ただれ・しこりは、見た目が似ていても、原因や治療法が全く異なる病気の可能性があります。特に性器ヘルペスと梅毒は、現在の性感染症で最も注意すべき疾患です。
- ヘルペスと梅毒は同時に検査することが基本です。(併発しているケースもあるため)
- 典型的な症状は、ヘルペス=「痛い水ぶくれ」、梅毒=「痛くない硬いしこり」ですが、例外も多く、見た目だけでの自己判断は非常に危険です。
- 最近では、Mpox(エムポックス)なども陰部や肛門周囲に症状が出ることがあります。
- 当院では、これら複数の疾患を念頭に、専門医が視診と必要な検査(PCR・血液検査)を組み合わせて正確に診断します。
この記事でわかること
- 1. 性器ヘルペスと間違えやすい主な病気
- 2. 症状でチェック:どの病気が疑われる?
- 3. 当院での診断・検査の流れ
- 4. 受診を急ぐべき危険なサイン
- 5. よくあるご質問
- 6. 費用について(税込)
- 7. 参考文献
1. 性器ヘルペスと間違えやすい主な病気
痛みの有無、数、形、分布がヒントになりますが、最終的な診断は検査が必要です。
A. 性器ヘルペス(HSV-1/2)
- 特徴:強い痛みを伴うことが多い、小さな水ぶくれが群発(複数かたまってできる)し、それが破れて浅い「びらん(ただれ)」になります。再発しやすいのも特徴です。
- 診断:病変部からのNAAT/PCR検査が最も確実です。当院では視診と合わせ、必要時に連携機関で検査を行います。
B. 梅毒(ばいどく)
- 特徴:第1期(感染初期)に「硬性下疳(こうせいげかん)」と呼ばれる、痛みのない硬いしこりや潰瘍ができます。典型的には1つだけですが、複数できたり痛みを伴ったりする非典型的なケースも増えています。リンパ節が腫れることもあります。
- 診断:血液検査(抗体検査)が必須です。ヘルペスと疑っても、必ず梅毒の検査を同時に行うことが推奨されます。
C. 毛嚢炎(もうのうえん)
- 特徴:毛穴に一致した、ニキビのような小さな膿疱(うみ)や赤いブツブツです。カミソリ負け、摩擦、ムレなどが原因で起こる細菌感染で、性感染症ではありません。
- 診断:主に視診で診断します。
D. 帯状疱疹(たいじょうほうしん)
- 特徴:水ぼうそうのウイルス(VZV)が原因です。体の片側(左右どちらか)に、神経の走行に沿って(デルマトーム配列)帯状に強い痛みが走り、その後、水ぶくれが出現します。稀に陰部(仙髄領域)にも出ることがあります。
- 診断:特徴的な見た目と症状で診断しますが、ヘルペスとの区別が難しい場合はVZVのPCR検査を行います。
E. Mpox(エムポックス)
- 特徴:以前は発熱などの全身症状が先行しましたが、最近は性器や肛門周囲に限定して症状が出るケースも報告されています。病変は深く硬く、中央がくぼんだ(臍窩状)丘疹から膿疱になるのが特徴的です。
- 診断:病変部からのPCR検査が第一選択です。
2. 症状でチェック:どの病気が疑われる?
あくまで目安です。複数の病気にかかっている可能性もあるため、専門医の診察を受けてください。
- 「強い痛み」+「小さな水ぶくれが複数」
→ 性器ヘルペスが最も疑われます。早期の抗ウイルス薬内服が重要です。 - 「痛くない」+「硬いしこりや潰瘍が1つ」
→ 梅毒を第一に疑います。ただし例外(痛い・複数)もあるため、必ず血液検査が必要です。 - 「毛穴に沿ったニキビのようなブツブツ」
→ 毛嚢炎の可能性が高いです。 - 「体の片側だけ」+「激しい神経痛」+「水ぶくれ」
→ 帯状疱疹を疑います。 - 「深く硬い」+「中央がくぼんだブツブツ」+(発熱など)
→ Mpoxの可能性を考慮し、専門機関へ連携します。
3. 当院での診断・検査の流れ
当院は性感染症専門クリニックとして、迅速な治療開始と、重大な疾患を見逃さないための正確な鑑別診断を両立します。
- 専門医による視診(最優先)
まず、医師が症状を詳細に診察します。ヘルペスの典型的な症状であれば、検査結果を待たずにその日のうちに治療(抗ウイルス薬の処方)を開始し、いち早く苦痛を取り除きます。 - 必要な検査の同時実施
陰部に潰瘍やただれがある場合、国際的なガイドラインではヘルペスと梅毒の両方を検査することが推奨されています。- 梅毒血液検査:ヘルペスが強く疑われる場合でも、併発を見逃さないために同時に採血を行います。
- 病変部PCR検査:診断を確定させる必要がある場合(初発、非典型的など)、連携機関にてPCR検査(ヘルペス、必要ならMpoxなど)を手配します。
このフローにより、「まずはヘルペスの治療を迅速に始めつつ、同時に梅毒などの重大な疾患も見逃さない」という、専門クリニックならではの対応が可能です。
4. 受診を急ぐべき危険なサイン
以下の症状がある場合は、我慢せずに当日中の受診を強くお勧めします。
自己判断で市販薬を塗ると、かえって診断が困難になったり、悪化したりすることがあります。
- 激しい痛みで歩行や排尿が困難
- 肛門の奥に強い痛みがある(ヘルペス性直腸炎の可能性)
- 発熱や強い倦怠感を伴う
- 病変(ブツブツやただれ)が広範囲に広がっている
- 妊娠中に上記のような症状が出た
5. よくあるご質問
Q. カミソリ負けかヘルペスか分かりません。
A. 毛嚢炎(カミソリ負けなど)は毛穴に一致した赤いブツブツや小さな膿疱が特徴です。一方、ヘルペスは小さな水ぶくれが集まってでき、強い痛みを伴うことが多いです。ただし、ヘルペスの初期も小さな赤いブツブツに見えることがあるため、痛みが強い場合や水ぶくれに変化してきた場合は、早めに受診してください。
Q. 梅毒は「痛くない」と聞きましたが、本当ですか?
A. 典型的な症状(硬性下疳)は、痛みのない硬いしこりや潰瘍です。しかし、最近は痛みを伴うケースや、複数できるケースも報告されており、典型例はむしろ少なくなっています。「痛いから梅毒ではない」とは決して言えません。必ず血液検査での確認が必要です。
Q. Mpox(エムポックス)が心配です。
A. Mpoxの病変は、深く硬いしこりや、中央がくぼんだ(臍窩状)特徴的な見た目をすることが多いです。性器や肛門周囲に限定して出ることもあります。疑わしい症状があり、接触歴などに不安がある場合は、速やかにご相談ください。診断は病変部からのPCR検査で行います。
6. 費用について(税込)
当院は、初診料・再診料込みの明朗会計です。ホームページに記載の金額以外に追加費用はかかりません。
- 診察料(初診・再診):4,500円
- ヘルペス治療薬(初発):7,980円
- ヘルペス治療薬(再発):4,480円
- ヘルペス抑制療法(1か月):13,440円
※梅毒検査、PCR検査などが必要な場合は、別途検査費用がかかります。診察時に医師よりご説明します。
7. 参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Diseases Characterized by Genital, Anal, or Perianal Ulcers.(性器潰瘍はHSVまたは梅毒が最多であり、両者の検査を推奨)
- CDC. Herpes (HSV) Guidelines.(病変PCRの推奨)
- CDC. Syphilis Guidelines.(一次梅毒の典型像と非典型像)
- CDC. Mpox (Monkeypox).(臨床像、検査診断)
- CDC. Shingles (Herpes Zoster).(帯状疱疹の臨床像)
- American Academy of Dermatology (AAD). Folliculitis (毛嚢炎).
