不安なあなたへ、まずお伝えしたいこと
- 当院では、まず専門医による「視診」を基本とします。ヘルペスに典型的な症状が出ている場合、視診だけでその日のうちに治療(内服薬)を開始できることが最大のメリットです。
- 病変部のPCR(NAAT)検査は、症状が非典型的で鑑別が必要な場合や、初発で正確な診断が必要な場合に用いる「最も信頼性の高い確定診断法」です。
- 血液検査(タイプ特異的IgG)は「過去の感染歴」を調べるもので、現在の症状の診断には不向きです。IgM検査は推奨されません。
- 当院では視診を基本とし、当日治療を開始します。PCR検査が必要と医師が判断した場合は、連携検査機関での検査をご案内します。
この記事でわかること
- 1. 性器ヘルペスの診断方法:視診とPCR検査
- 2. PCR検査が必要なのはどんな時?
- 3. 血液検査(IgG):何が分かる?何が分からない?
- 4. 無症状のときは検査できる?
- 5. 検査の選び方(当院の診断フロー)
- 6. 検査結果の見方と次の一手
- 7. よくあるご質問(FAQ)
- 8. 当院での費用・流れ
- 9. 参考文献
1. 性器ヘルペスの診断方法:視診とPCR検査
診断の基本は「視診」、確定診断は「PCR検査」です。
まず、医師が患部の状態を直接見る「視診(臨床診断)」が基本です。性器ヘルペスに特徴的な水ぶくれや潰瘍がある場合、熟練した医師であれば視診のみで診断を下し、治療が遅れることのないよう迅速に抗ウイルス薬の処方を開始できます。
一方、「確定診断(原因ウイルスの特定)」のためには、病変部からのNAAT/PCR検査が第一選択です。培養検査は感度が低く(特に治癒期)、盲目的なスワブ(綿棒検査)やツァンク試験は推奨されません。
- 検体採取のコツ:小水疱は“ふた”を外して底(潰瘍底)をスワブ/複数病変から採取で感度↑/早期ほど陽性化しやすい。
- タイプ判定(HSV-1/2):予後説明・再発性の見通しに重要。
2. PCR(NAAT)検査が必要なのはどんな時?
症状が典型的な場合は視診で即日治療が可能です。PCRは「初発時」や「非典型的な症状」で、診断を確定させたい場合に特に有用です。
当院では、主に以下のような場合にPCR検査(連携機関)をご案内しています。
- 初めて性器ヘルペスが疑われる症状が出た場合(確定診断のため)
- 症状が非典型的で、梅毒など他の病気との鑑別が難しい場合
- 再発を繰り返しているが、一度も確定診断を受けたことがない場合
- パートナーへの感染などに関わるため、ご自身の型(1型/2型)を正確に知りたい場合
3. 血液検査(タイプ特異的IgG):何が分かる?何が分からない?
血液検査(IgG)は「過去の感染」を調べる検査です。現在の症状の原因特定には使えません。IgM検査は不正確なため非推奨です。
役割
- 「過去の感染歴」の目安になります。
- 病変がない時や検査できない時の補助診断
- パートナーが陽性だった場合のご自身の感染歴の確認
限界と注意
- 急性期の確定診断には不向きです。(感染から抗体出現までに数週間〜数ヶ月かかります)
- 最近の感染が疑わしければ12週後に再検を検討します。
- IgM検査は不正確で推奨されません。(型特異性がなく、再発時にも陽性化することがあるため)
- 低インデックス(例:1.1–3.0)は偽陽性(本当は感染していないのに陽性)が多いため、Biokit/Western blotなど別手法での確認が望ましいです。
- 無症状者へのスクリーニングは推奨されません。(偽陽性の問題が大きいため)
4. 無症状のときは検査できる?
無症状時に、性器を綿棒でこする検査(盲目的スワブ)は診断に不適です。必要なら血液検査(IgG)を検討します。
- ウイルスは症状がなくても間欠的(時々)に排出(シェディング)されますが、無症状時に綿棒で検査しても、たまたまウイルスがいない時期であれば陰性になります。陰性であっても「感染していない」という証明にはなりません。
- 無症状時にどうしても状況把握が必要なら、タイプ特異的IgG(血液検査)を適応を絞って(例:パートナーが陽性、反復する非典型症状の評価など)検討します。
5. 検査の選び方(モイストクリニックの診断フロー)
A) 病変(水ぶくれ・ただれ)がある場合
- まずは専門医による視診
- 典型的な症状の場合 → 医師の診断に基づき、即日、内服治療を開始します。
- 非典型的な症状・初発の場合 → 確定診断のため、病変部PCR(NAAT)をご案内します。
B) 病変がない(無症状)の場合
- 状況のヒアリング
- 過去の症状、パートナーの状況などから、検査の必要性を医師と相談します。
- 必要と判断した場合 → タイプ特異的IgG(血液検査)で過去の感染歴を把握します(低インデックス陽性時は確認検査を推奨)。
6. 検査結果の見方と次の一手
PCR陽性で診断確定です。IgGの低インデックス陽性は偽陽性の可能性があり、確認検査が望ましいです。
- PCR陽性:HSV-1またはHSV-2の感染が確定です。型判定に基づき、治療、予後(再発率)、パートナーへの説明を行います。一般にHSV-2はHSV-1よりも再発や無症候性ウイルス排出が多いとされます。
- PCR陰性だが臨床的に強く疑う:検査のタイミング(治癒期)や検体採取の問題で偽陰性(本当は陽性なのに陰性)となることがあります。再発時に再度検査を試みるか、補助的にIgG検査を検討します。
- IgG低インデックス陽性(例:1.1~3.0):偽陽性の可能性が否定できません。BiokitやWestern blotといった別の方法での確認検査が望ましいです。
7. よくあるご質問(FAQ)
Q. 血液だけで“今の発疹”がヘルペスか分かりますか?
A. 分かりません。今の症状を診断するための確定診断は、症状が出ている部分をこする「病変部PCR検査」です。血液検査(IgG)は、あくまで「過去に感染したことがあるか」を調べる目安です。
Q. IgM検査は役立ちますか?
A. 推奨されません。IgM検査は、ヘルペスの型(1型/2型)を区別できず、また再発時にも陽性になることがあるため、初感染かどうかの判断も不正確です。CDCなどの国際的なガイドラインでも非推奨とされています。
Q. IgGが低インデックス(1.1–3.0)の陽性でした。
A. 偽陽性(本当は感染していないのに陽性)が多いとされる数値範囲です。結果を確定させるためには、BiokitやWestern blotといった別の検査方法での確認が望ましいとされています。
Q. 無症状ですが心配なので“とりあえず綿棒検査”はできますか?
A. 推奨されません。症状がない時に綿棒で検査(盲目的スワブ)をしても、ウイルスの排出は一時的であるため、陰性と出ても「感染していない」という証明にはなりません。無症状で不安な場合は、まず医師にご相談ください。
8. 当院での費用・流れ
当院の検査・治療の流れ
当院では、まず医師が視診を行い、その日のうちに治療(お薬の処方)を開始することを基本としています。お忙しい中、あるいは緊急で来院された患者様をお待たせせず、迅速に苦痛を取り除くことを優先します。
診察の結果、PCR検査による確定診断が望ましいと医師が判断した場合のみ、連携の検査機関での検査をご案内します(※別途検査費用がかかります)。
費用(税込)
- 診察(視診):4,500円
- 治療(初発):7,980円
- 治療(再発):4,480円
- 抑制療法(1か月):13,440円
9. 参考文献
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC). Sexually Transmitted Infections Treatment Guidelines, 2021 – Genital Herpes.
- International Union against Sexually Transmitted Infections (IUSTI). IUSTI European guideline for the management of genital herpes (2024).
- 日本皮膚科学会ガイドライン. 単純ヘルペス診療ガイドライン 2017.
