「HPVワクチンを打った方がいいのは分かるけれど、まだ不安…」「今から打っても遅くない?」
当院は、性感染症専門クリニックとして、将来の子宮頸がんや中咽頭がん、尖圭コンジローマなどのリスクを減らすための「HPVワクチン(自費診療)」に力を入れています。
このページでは、ワクチンの種類の違い、男性接種のメリット、接種スケジュールや費用について、医学的な根拠に基づき専門医が分かりやすく解説します。
目次
HPVワクチンで予防できること
HPVワクチンの目的
HPVワクチンの主な目的は、ヒトパピローマウイルス(HPV)への感染自体を予防することです。
HPVは子宮頸がんの原因となるだけでなく、咽頭(のど)や肛門、陰茎など男女両方のがんのリスク要因でもあります。
ワクチン接種によって、将来のご自身の健康を守る「がん予防」として大きな意義を持っています。
ワクチンでカバーできるHPVタイプ
現在、日本で承認されているHPVワクチンは主に3種類あり、カバーする範囲が異なります。
9価ワクチン(シルガード®9)当院推奨 男性も接種可
【最も予防範囲が広い最新ワクチン】
4価ワクチンの対象(6・11・16・18型)に加え、さらに5つの高リスク型(31・33・45・52・58型)もカバーします。
子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%を防ぐことができます。肛門がん予防にも適応があります。
4価ワクチン(ガーダシル®)
【がん+イボを予防】
高リスク型の16・18型に加え、尖圭コンジローマ(性器いぼ)の原因となる6・11型もカバーします。
子宮頸がん予防率は約65%ですが、男女のコンジローマ予防に有効です。
2価ワクチン(サーバリックス®)
【子宮頸がん特化】
最も主要な高リスク型である16型・18型を強力にカバーします。コンジローマ(イボ)の予防効果はありません。
※現在、当院での新規接種は主に4価または9価を推奨しています。
【重要:ワクチンは「予防」であり「治療」ではありません】
HPVワクチンは、既に体内に存在するウイルスを排除したり、進行中の病変を治したりする効果はありません。
「将来の感染を防ぐもの」ですが、仮に接種時点である特定の型に感染していたとしても、「まだ感染していない他の型」への予防効果は十分に期待できます。
女性のHPVワクチン接種
接種が勧められる年齢層
日本では、小学6年生〜高校1年生相当の女性が定期接種(公費)の対象ですが、世界的には成人女性への接種も広く推奨されています。
米国などでは26歳まで、あるいは45歳頃までの接種が一般的です。
「10代で打ち逃してしまった」「大人になって必要性を感じた」という20代・30代以降の方でも、自費診療で接種を受けることは決して遅くありません。
すでに性経験がある場合のメリット
「もう性交渉の経験があるから、今さら効果がないのでは?」と心配される方が非常に多いですが、あきらめる必要はありません。
性経験があっても接種するメリット
① まだ感染していない型を防げる
性経験があっても、ワクチンがカバーするすべての型(9価なら9種類)に感染済みという方は稀です。
「まだ感染していない型」に対する予防効果は、10代の方と同じように期待できます。
② 再感染のリスクを下げる
一度感染して自然に排除された後でも、再び同じ型や別の型に感染するリスクはあります。ワクチンで免疫をつけておくことで、将来の感染リスクを下げることができます。
なぜ「検診との併用」が必要なのか?
大人の女性が子宮頸がんを確実に防ぐためには、ワクチンだけでなく、定期的な子宮頸がん検診が不可欠です。理由は主に2つあります。
ワクチンは「予防」であり、接種する前にすでに感染していたHPVを排除したり、現在進行している病変を治したりする効果はありません。
【理由2】全ての型をカバーできないため
9価ワクチンは主要な原因ウイルスの約90%を防ぎますが、残り数%の稀な型によるがんは防げません。
だからこそ、以下の「2重の備え」が最強の手段となります。
(一次予防)
新たな感染をブロックする
(二次予防)
早期発見して治す
当院は性感染症内科のため、内診台を使用する「子宮頸がん検診(細胞診)」は行っておりません。
ワクチンは当院で接種し、定期的ながん検診は婦人科・産婦人科で受けていただくようお願いいたします。(接種時に検診のタイミングなどのアドバイスは可能です)
男性のHPVワクチン接種
「HPVは女性だけの問題」ではありません。
性経験のある人の約80%以上が生涯で一度はHPVに感染すると言われており、男性にとっても非常に身近なリスクです。
男性にとってのHPVリスク(がん・イボ)
男性がワクチンを接種する最大のメリットは、ご自身の「がん」と「イボ」の予防です。具体的なデータを見ると、そのリスクがよく分かります。
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尖圭コンジローマ(性器のイボ)
性器や肛門周りにカリフラワー状のイボができる病気です。
原因ウイルスの
約90% が6型・11型治療後の再発率
約25% (3ヶ月以内)ワクチン予防効果
高 (4価・9価で可)★ここがポイント:
尖圭コンジローマの原因の9割を占める「HPV6型・11型」は、4価・9価ワクチンでカバーされています。
「治療の痛みや精神的苦痛」「高い再発率」を未然に防げる点が、男性接種の大きなメリットです。 -
中咽頭がん・肛門がん・陰茎がん
特に「中咽頭がん(のどのがん)」は男性に増加傾向にあります。
HPV関連の中咽頭がんの多くからは「HPV16型」が検出されますが、これはすべてのHPVワクチンで予防可能な型です。
パートナーを守るという視点
HPVは性交渉によってお互いにうつし合うウイルスです。
男性がワクチンを接種し、ウイルスを保有・拡散しないようにすることで、将来のパートナーを「子宮頸がん」などのリスクから守ることにつながります。
結婚や新しい交際を控えたタイミングで、エチケットとして接種される男性も増えています。
何歳まで意味がある?
「もう大人だけど、今から打っても意味がある?」というご質問をよくいただきます。
推奨年齢(定期接種など)は10代ですが、45歳くらいまでの男性であれば、接種のメリットは十分にあると考えられています(米国CDCガイドライン等の基準)。
- まだ感染していないHPV型に対する予防効果が得られる
- 将来、新しいパートナーができた際の相互感染を防げる
「自分はもう遅いかも」と自己判断せず、まずはご相談ください。
当院では、年齢やライフスタイルに合わせて医師がアドバイスいたします。
4. 接種回数・スケジュールの目安
HPVワクチンで十分な免疫をつけ、長期間その効果を持続させるためには、決められた回数を最後まで接種することが非常に重要です。
原則は「合計3回」の接種です
現在、15歳以上の方(自費診療の主な対象者)は、どのワクチンを選んでも3回接種が基本です。
標準的には、約6か月かけて完了します。
- 1回目: 初回接種
- 2回目: 1回目から2か月後
- 3回目: 1回目から6か月後
① 確実な免疫(抗体)をつけるため
1回や2回の接種でも一時的に抗体は上がりますが、3回接種することで抗体価が十分に高まり、免疫が定着します。
② 効果を「長期間」持続させるため
3回目の接種は「ブースター接種」とも呼ばれ、免疫の記憶を強化し、予防効果を数十年単位で長持ちさせるために不可欠です。
途中でやめてしまうと、せっかくの効果が短期間で切れてしまう可能性があります。
15歳未満なら「2回」で済む理由
9価ワクチン(シルガード9)に限り、15歳未満(14歳まで)に1回目を接種すれば、合計2回(0・6か月)での完了が認められています。
💡 どうして子供は2回でいいの?
小中学生などの若い世代は、大人に比べてワクチンに対する「免疫反応(抗体を作る力)」が非常に活発だからです。
医学的なデータにより、「9~14歳の2回接種」は「15~26歳の3回接種」と同等以上の抗体ができることが証明されています。
※15歳以上になると免疫の反応が落ち着いてくるため、確実に効果を出すために3回の接種が必要になります。
【スケジュールの調整について】
「忙しくて予定通りに来られない」という場合も、最短4〜5か月で完了させるスケジュール調整や、間隔が空いてしまった場合の対応が可能です。途中で諦めずに医師にご相談ください。
5. 副反応について知っておきたいこと
HPVワクチンは世界中で接種されている実績のあるワクチンですが、他の注射と同様に、接種後に身体の反応が出ることがあります。
正しい知識を持って接種に臨んでいただけるよう、頻度の高い症状と稀な症状についてデータを元に解説します。
① よくある症状(数日で自然に治まります)
接種部位の反応は多くの人に見られますが、これは身体が免疫を作ろうとしている反応でもあります。
| 症状 | 発生頻度の目安 | 対応 |
|---|---|---|
| 痛み・腫れ | 50%以上 (非常に多い) |
数日〜1週間程度で自然に治まります。気になる場合は冷やしてください。 |
| 赤み | 10〜50% | 数日で消失します。 |
| 頭痛・発熱 | 10%前後 | 水分を摂って安静にしてください。市販の解熱鎮痛剤も使用可能です。 |
② 血管迷走神経反射(立ちくらみ)
注射の痛みや緊張、不安などがきっかけで、血圧が下がってフラッとしたり、失神したりする反応です。
- 特徴: 若い世代や痛みに敏感な方に起こりやすい一時的な反応です。
- 対策: 接種後30分程度、背もたれのある椅子に座って安静にすることで防げます。
③ 重い副反応(非常に稀です)
重篤な症状の報告もありますが、頻度は極めて稀であり、ワクチンとの因果関係が明らかでないものも含まれます。
【代表的な重い副反応の報告頻度】
- アナフィラキシー(重いアレルギー反応):
約96万接種に1回 (製造販売業者報告データより)
※接種後すぐに起こる呼吸困難や蕁麻疹など。 - ギラン・バレー症候群、ADEM(急性散在性脳脊髄炎):
約400万接種に1回程度
※手足の力の入りにくさや神経症状など。
※かつて報道された「多様な症状(慢性的な痛みや運動障害など)」については、大規模な疫学調査の結果、「ワクチン接種者と非接種者で発生頻度に差がない(ワクチンが原因であるという証拠はない)」と結論付けられています。
当院の安全対策
万が一に備え、当院では以下の体制を整えています。
✅ 接種後観察: 迷走神経反射や急なアレルギーに備え、接種後15分〜30分は院内で安静にしていただきます。
✅ 救急対応: アナフィラキシー対応薬(エピペン等)を常備しています。
✅ 痛みの配慮: 痛みが苦手な方にはベッドで横になっての接種も可能です。遠慮なくお申し付けください。
6. 費用・助成・キャッチアップ接種
当院でのHPVワクチン接種は、公費対象外の方(男性や対象年齢を過ぎた女性)向けの「自費診療(全額自己負担)」となります。
※定期接種(小6~高1相当の女性)やキャッチアップ接種(公費)をご希望の方は、お住まいの自治体指定の医療機関へお問い合わせください。
※自治体によっては、男性や成人女性への独自の費用助成を行っている場合があります。詳しくはお住まいの自治体HP等をご確認ください。
当院のHPVワクチン料金(税込)
シルガード®9(9価ワクチン)
子宮頸がんの原因の約90%をカバー。男性の接種も可能です。
(3回接種の総額目安:89,400円)
ガーダシル®(4価ワクチン)
主要な発がん性HPVと、尖圭コンジローマを予防します。
(3回接種の総額目安:54,000円)
お支払い方法・キャンセルについて
- お支払い方法:
現金のほか、各種クレジットカード、電子マネー、QR決済(PayPay等)がご利用いただけます。
※3回分の一括払いではなく、接種ごとの都度払いです。 - キャンセルポリシー:
ワクチン確保のため、直前のキャンセルはお控えください。体調不良等でやむを得ず変更される場合は、お早めにご連絡をお願いいたします。
7. モイストクリニックで受けるメリット
当院は性感染症に特化したクリニックとして、HPVワクチン接種や関連疾患(コンジローマ等)の診療実績が豊富です。
男性の接種にもいち早く対応しており、性別を問わず、特有の疑問や不安に専門医が的確にお答えします。
「性に関する予防接種で、他の人の目が気になる」という方もご安心ください。
プライバシーに配慮した完全個室の診察室や、お名前ではなく番号でお呼び出しするシステムを導入しています。スタッフも話しやすい雰囲気づくりを徹底しています。
恵比寿駅から徒歩圏内の好立地で、お仕事帰りやお買い物ついでに立ち寄りやすい環境です。
平日夜間や土日診療(※)も行っており、複数回の通院が必要なワクチン接種も、無理なくスケジュールを組むことができます。
※詳しい診療時間は公式サイトをご確認ください。
