
はじめに ― “ととのい”ハイシーズン、その裏にある小さな不安
猛暑の疲れをリフレッシュし、心身を「ととのえる」最高の体験、それが「夏サ活」。サウナブームが盛り上がる一方で、「汗や蒸気、水風呂で性病がうつるんじゃないか…」という不安の声を耳にすることが増えました。
はじめに結論からお伝えします。
- 結論: クラミジア、淋菌、梅毒、HIVといった主要な性感染症(STI)は、サウナの熱・水・蒸気・汗だけで感染することはまずありません。これらの病原体は非常に弱く、人の体外ではすぐに生存できなくなるためです。
- ただし例外あり: トリコモナス原虫や、性病と間違われやすい水虫(白癬菌)などは、湿ったタオルや衛生管理が不十分な座面を介して、ごく稀に感染する可能性が指摘されています。
この記事では、性感染症専門クリニックの医師が、公的機関のエビデンスに基づき、サウナにおける性病リスクの真実と、誰もができる具体的な安全対策を分かりやすく解説します。正しい知識で、不安なく最高の“ととのい”を楽しみましょう。
1. そもそも性感染症(STI)はどうやって広がる? ― 基本のおさらい
性感染症(STI: Sexually Transmitted Infections)の大多数は、病原体が含まれる体液(精液・膣分泌液・血液など)や粘膜が、性行為によって直接接触することで感染が成立します。
サウナ環境における各病原体のリスクをまとめました。
病原体 | 主な感染経路 | サウナの水中・蒸気リスク | サウナのタオル・座面間接リスク |
---|---|---|---|
クラミジア・淋菌・梅毒 | 性行為(膣・肛門・口腔) | ほぼゼロ | 極めて低い(報告例はほぼない) |
トリコモナス原虫 | 性行為が主。湿ったタオル・座面からも稀に感染 | 低い | 数時間生存の可能性あり |
HPV・単純ヘルペス | 皮膚・粘膜の直接接触 | 不明(実証例なし) | 理論的にゼロではないが証拠は限定的 |
HIV | 血液・体液(精液・膣分泌液) | ゼロ | ゼロ |
水虫(白癬菌)など | (性病ではない)皮膚接触 | 低い | 感染リスクあり |
※重要: 上記の「間接リスク」はあくまで理論上の可能性です。実際にサウナで性病に感染したという医学的報告は、トリコモナスを除き、世界的に見ても極めて稀です。
2. 要注意!真夏サウナで起こり得る“例外的”シナリオ
リスクがゼロではない以上、具体的にどんな状況で注意が必要かを知っておきましょう。
- 木製ベンチにタオルを敷かず直座り → 先の利用者がトリコモナス保持者で、座面が湿っていた場合、ごく稀に接触感染の可能性が残ります。
- 他人の湿ったタオルでデリケートゾーンを拭く → HPVやヘルペスが付着している可能性は理論上ゼロではありません。絶対にやめましょう。
- 高温多湿の環境で足のケアを怠る → 最も現実的なリスク。白癬菌(水虫の原因菌)などが足ふきマットや床で繁殖し、付着しやすくなります。
- サ活直後の性行為 → サウナで皮膚や粘膜がふやけていると、バリア機能が一時的に低下し、通常の性行為より感染症のリスクが高まる可能性があります。
3. 「それ、ホント?」サウナと性病のよくある誤解 TOP5
誤解 | 医師が解説する真実 |
---|---|
「暑いほど菌が繁殖しそう…」 | 80~100℃の高温ドライサウナでは、ほとんどの細菌やウイルスは数分で不活化します。本当に注意すべきは、サウナ室そのものより「温度が低く湿った場所」(脱衣所の床、タオル、マット)です。 |
「塩素入りの水風呂なら100%安全」 | 水中の病原体は塩素でほぼ死滅しますが、水風呂のフチや床など、乾いた表面に塩素は届きません。油断は禁物です。 |
「汗や唾液でもHIVはうつるんでしょ?」 | うつりません。CDC(米国疾病予防管理センター)も明確に否定しています。HIVは血液や特定の体液を介してのみ感染します。 |
「サウナマットが一番危ない!」 | 頻繁に交換・清掃されている施設のマットは比較的安全です。しかし、一番の自衛策は「マイサウナマット」や「座面用のマイタオル」を持参すること。これでリスクは激減します。 |
「性病は女性だけが気をつければいい」 | 大きな間違いです。特にトリコモナスやクラミジアは、男性は無症状のことが多く、自覚なくパートナーに感染させてしまうケースが後を絶ちません。検査と予防は性別を問わず全員に必要です。 |
4. 今日から実践!安心して“夏サ活”を楽しむための5つの鉄則
難しい対策は不要です。少しの心掛けで、リスクは限りなくゼロに近づけられます。
- 【必須】マイタオル2枚持ちを習慣に
体を拭く用とは別に、サウナベンチに敷くための「大判タオル」や「マイサウナマット」を必ず持参しましょう。これが最強の防御策です。 - 座る前・使う前にシャワーで流す
サウナ室に入る前や、水風呂後の休憩椅子に座る前に、シャワーで汗や汚れを流すのは基本マナーであり、衛生対策にもなります。 - 入浴後は石鹸で洗浄&しっかり乾燥
特に足指の間、デリケートゾーン周辺は丁寧に洗い、完全に乾燥させてから服を着ましょう。菌は湿った場所を好みます。 - 夏の終わりに「STI検査」を検討する
特定のパートナーがいない方や、少しでも気になる症状(かゆみ、おりものの変化など)がある方は、夏のアクティビティが終わる秋口に一度STI検査を受けることを強く推奨します。 - 自己判断はNG!不安なら専門医へ
「サウナ後にかゆみが…」それは本当に性病でしょうか?水虫や汗によるかぶれの可能性もあります。ネットの情報だけで判断せず、必ず専門医に相談してください。
5. サウナと性病に関するよくある質問(FAQ)
Q. サウナの高温(80~100℃)で菌は本当に死滅しますか?
A. はい、ドライサウナの高温環境下では、クラミジア、淋菌、HIV、ヘルペスウイルスなどの主要な病原体は数分以内に生存できなくなります(不活化)。ただし、座面の中心部まで熱が均一に伝わっていない場合や、温度が低いスチームサウナ、湿った場所ではこの限りではありません。
Q. HPVやヘルペスはタオルでうつりますか?
A. 理論上、ウイルスが付着した湿ったタオルを直後に共有すれば感染の可能性は否定できません。しかし、これがサウナや温泉で起きたという医学的・疫学的に確立した報告はほとんどありません。過度に心配する必要はありませんが、衛生の基本としてタオルの共有は避けましょう。
Q. 水虫と性病はどう違うのですか?
A. 水虫は「白癬菌」という真菌(カビ)が原因の皮膚感染症で、性行為とは無関係です。一方、性病は主に性行為で感染します。しかし、陰部のかゆみ(いんきんたむし)などを性病と誤解するケースは多いため、症状が続く場合は検査で原因を特定することが重要です。
Q. 温泉や公衆浴場でもリスクは同じですか?
A. はい、基本的に同じです。不特定多数が利用する湿った環境という点では共通しています。「温泉だから大丈夫」「サウナだから危ない」ということはなく、施設の清掃状況と個人の衛生対策が最も重要です。
まとめ ― 不安をなくして、最高の“ととのい”を
正しい知識と、ほんの少しの衛生マナー。この2つさえあれば、真夏のサウナは心と体を癒す最高のツールになります。
ほとんどの性病はサウナで感染する心配はありませんが、ゼロリスクではない病原体も存在します。「もしかして…」と少しでも不安になったり、気になる症状があったりする場合は、決して一人で悩まず、私たち専門家にご相談ください。
当クリニックでは、プライバシーに配慮した空間で、性感染症に関するあらゆるご相談・検査に対応しています。
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🔖 監修者情報

監修:モイストクリニック院長 金谷 正樹
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療を行っている。日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療を目指している。
🖊️ この記事の執筆者
執筆:泌尿器科医 宮田(モイストクリニック)
国立信州大学医学部医学科を卒業後、川崎市立井田病院にて初期研修を修了。都内大学病院の泌尿器科に入局し、性感染症分野で専門性を深める。
日本性感染症学会、日本感染症学会、日本性機能学会などに所属し、現在は薬剤耐性淋菌に対する新規抗生剤の研究に携わりながら、性感染症および泌尿器科疾患の診療にあたっている。
【参考文献・権威ソース】
- Centers for Disease Control and Prevention (CDC).
- World Health Organization (WHO).
- T. Zissis et al. “Survival of Trichomonas vaginalis outside the host: implications for public bathing.” Int J STD AIDS 2023.