【医師監修】性器ヘルペスの症状・原因と最新治療法|早く治す薬とパートナーへの感染対策

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルス(HSV)への感染によって引き起こされる、世界中で非常に多くの人が持つ一般的な性感染症です。 「一度感染すると治らない」というイメージをお持ちの方も多いかもしれませんが、現在は優れた抗ウイルス薬によって症状を速やかに鎮め、再発をコントロールすることが可能です。

この記事の重要ポイント
  • 原因:単純ヘルペスウイルス(HSV-1型または2型)の感染。
  • 症状:性器や肛門周辺の水疱・潰瘍・痛み。無症状のケースも多い。
  • 特徴:神経節に潜伏するため再発することがあるが、薬で抑制可能。
  • 治療:内服薬(抗ウイルス薬)による早期治療が極めて有効。

性器ヘルペスは、性行為経験のある方なら誰でも感染する可能性がある病気です。 正しい知識を持ち、適切な治療を行うことで、普段と変わらない生活を送ることができます。 本記事では、性器ヘルペスの原因から最新の治療法、パートナーへの配慮まで、専門医が詳しく解説します。

1. 病原体と感染経路(HSV-1と2型の違い)

性器ヘルペス(Genital Herpes)は、ヘルペスウイルス科に属する単純ヘルペスウイルス(Herpes Simplex Virus:HSV)の感染によって引き起こされる性感染症です。
主な感染経路は性的接触(性交、オーラルセックス、アナルセックス等)であり、ウイルスを含んだ粘膜や皮膚、体液と接触することで感染します。

HSV-1型とHSV-2型の特徴と違い

原因となるHSVには「1型(HSV-1)」と「2型(HSV-2)」の2種類が存在します。
従来、1型は「口唇ヘルペス」、2型は「性器ヘルペス」と住み分けられていましたが、近年の性行動の変化(オーラルセックスの一般化など)により、HSV-1による性器ヘルペスの発症が増加しており、現在では性器ヘルペスの原因として両方の型が重要視されています。

比較項目 HSV-1型(単純ヘルペス1型) HSV-2型(単純ヘルペス2型)
本来の感染部位 主に上半身(口唇、顔面など) 主に下半身(性器、臀部、肛門など)
性器への感染経路 主にオーラルセックス(口→性器) 主に性器同士の接触(性器→性器)
再発の頻度 性器感染の場合、再発頻度は比較的低い 再発頻度が高い(再発性器ヘルペスの主体)
疫学・傾向 若年層の初感染例で増加傾向にある 反復再発例やHIV感染リスクの増大と関連

神経節への「潜伏感染」という性質

HSVの最大の特徴は、一度感染するとウイルスが完全に消えることはなく、体内の神経節(仙骨神経節など)に生涯にわたり潜伏感染する点です。
普段は免疫によって抑え込まれていますが、疲労、ストレス、月経、発熱、紫外線曝露などで免疫力が低下した際に、ウイルスが再活性化し、神経を伝って皮膚や粘膜に戻り症状を引き起こします。これを「回帰発症(再発)」と呼びます。

⚠️ 症状がなくても感染する「無症候性排泄」

「パートナーには何の症状もなかった」というケースは非常に多く見られます。
性器ヘルペスは、明らかな水疱や潰瘍が出ていない時期でも、唾液、精液、愛液などの体液中にウイルスが排出されていることがあります。これを無症候性排泄(Asymptomatic Shedding)と呼びます。
特に感染初期や再発を繰り返している時期は、自覚症状がなくてもウイルス排出量が多い可能性があるため、注意が必要です。

母子感染(新生児ヘルペス)のリスク

極めて稀ですが、分娩時に妊婦の性器にウイルスが排出されていると、産道を通じて新生児に感染し、重篤な「新生児ヘルペス」を引き起こす可能性があります。
特に妊娠後期の初感染は母体から胎児への抗体移行が間に合わず、新生児への感染リスクが高まります。妊娠中の方や、パートナーが妊娠中の方は、必ず医師に相談し、適切な管理(抗ウイルス薬の投与や帝王切開の検討など)を受けることが推奨されます。

2. 疫学:実は5人に1人が感染している?

性器ヘルペスは、決して珍しい病気ではありません。むしろ、世界中で最も一般的な性感染症(STD)の一つです。
「ヘルペス=不潔」という誤ったスティグマ(偏見)が存在しますが、疫学データを見ると、ごく一般的な社会生活を送っている人々の中に広く浸透している感染症であることがわかります。

WHO推計 世界規模での感染状況

世界保健機関(WHO)の2020年のデータによると、15歳〜49歳の世界人口において、以下の推計がなされています。

  • 約8億4,600万人がいずれかの性器ヘルペス感染を有している
  • これは同年代の人口の約5人に1人以上に相当
  • 毎年、約4,200万件(毎秒1人ペース)の新規感染が発生

日本国内の感染傾向

日本国内においても、性器ヘルペスはクラミジアや淋病と並んで頻度の高い性感染症です。
感染症発生動向調査によると、患者報告数は男女ともに20代〜30代の性活動期層に多く見られますが、近年は20代前半の若年層や、50代の中高年層での報告も散見されます。

注意すべき点は、これが「医療機関を受診し、診断された数」に過ぎないということです。
成人のHSV-1抗体保有率(約50%以上)やHSV-2抗体保有率(約10%台)を考慮すると、無症状のために診断されていない「隠れ感染者」を含めた実際の感染者数は、報告数よりも遥かに多いと推測されます。

近年増加する「HSV-1型」による性器感染

かつては「性器ヘルペス=2型(HSV-2)」という常識がありましたが、現在、先進国を中心に疫学的な変化が起きています。
本来は口唇ヘルペスの原因であるHSV-1型が性器に感染するケースが増加しており、特に若年女性の初感染例では、HSV-1型が2型と同程度、あるいはそれ以上の割合を占めるという報告もあります。

なぜ「1型」の性器感染が増えているのか?

背景には2つの要因が考えられています。

  1. 衛生環境の向上:昔に比べ、小児期に親からHSV-1(口唇ヘルペス)をうつされる機会が減り、抗体を持たないまま大人になる人が増えた。
  2. 性行動の変化:抗体を持たない状態で、パートナーからのオーラルセックスを受けることで、初めてHSV-1が「性器」に感染してしまう。

※HSV-1による性器感染は、HSV-2に比べて再発頻度が低い傾向にありますが、初感染時の症状は激しい場合があるため、適切な診断と治療が必要です。

3. 症状と経過(初感染と再発の違い)

性器ヘルペスの症状は、「初めて感染した時(初感染)」「再発した時」で、重症度が劇的に異なります。
潜伏期間は通常2〜10日(平均3〜7日)です。感染後、数日の潜伏期を経て発症しますが、中には感染してもすぐには発症せず、数ヶ月〜数年経ってから何らかのきっかけで初めて症状が出るケースもあります。

[Image of genital herpes symptom timeline primary vs recurrent]
初感染・初発(初めてかかった時)

症状:非常に重い
免疫がない状態でウイルスが増殖するため、激しい炎症を伴います。

  • 激痛を伴う多数の水疱・潰瘍(えぐれた傷)が広範囲に出現
  • 38℃以上の高熱、倦怠感、頭痛などの全身症状
  • 鼠径リンパ節(足の付け根)の腫れと痛み
  • 排尿困難(痛くて尿が出せない)、歩行困難

※重症例では髄膜刺激症状(強い頭痛・首の硬直)や、尿閉・便秘(仙骨神経障害)を併発し、入院が必要になることもあります。

再発(回帰発症)

症状:軽度・短期間
免疫があるためウイルスの増殖が抑えられ、症状は軽く済みます。

  • 数個程度の小さな水疱やびらん(ただれ)
  • 痛みは軽く、少ししみる程度や痒みだけのことも
  • 発熱などの全身症状は伴わない
  • 多くは1週間以内に治癒する

※再発部位は前回と同じ場所が多いですが、臀部や大腿部、肛門周囲に出ることもあります。

専門医の視点:「初めての発症」でも2つのタイプがある

「初めて症状が出た」という場合でも、医学的には以下の2つに区別されます。
症状の重さが異なるため、診断時に重要になります。

① 初感染初発(True Primary)
HSVの抗体を全く持っていない人が初めて感染し、発症した場合。上述の通り症状が最も重くなります
② 非初感染初発(Non-primary First Episode)
すでに血液検査でHSV抗体を持っている(過去に無症状で感染していた、または口唇ヘルペス等の既往がある)人が、初めて性器ヘルペスの症状を発症した場合。
既存の免疫があるため、初感染に比べて症状は軽く、治癒も早い傾向があります。

治療の鍵となる「再発の予兆(前駆症状)」

再発を繰り返す患者様の多くは、皮膚に水疱ができる数時間〜1日ほど前に、患部に独特の違和感を感じ取ることができます。これを前駆症状(Prodrome)と呼びます。

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よくある前駆症状のサイン 「ピリピリ・チクチクする神経痛」「ムズムズする痒み」「太ももや足の裏のしびれ・違和感」など

この「前兆」を感じた段階ですぐに薬を服用する(PIT療法)ことで、水疱や潰瘍ができる前にウイルスを抑え込み、発症を回避したり、極めて軽症で済ませたりすることが可能です。
※PIT療法については後述の「治療」セクションで詳しく解説します。

再発のきっかけ(誘因)になりやすいもの

  • 疲労・睡眠不足、過度のストレス
  • 月経(生理前後のホルモンバランス変化)
  • 性行為による物理的な刺激
  • 強い紫外線(海水浴やスキーなど)
  • 他の病気による発熱や免疫力低下

4. 検査と診断:PCR法と迅速検査

性器ヘルペスの診断は、医師による視診と問診(症状の経過や性的接触の履歴)が基本となります。
しかし、症状が典型的でない場合や、初めての感染で確定診断が必要な場合には、病原学的検査(ウイルスそのものを検出する検査)が推奨されます。

水疱や潰瘍(病変)がある場合の検査

患部を綿棒でぬぐい、ウイルスが存在するかどうかを直接調べます。
主に以下の2つの方法があります。

検査方法 PCR法(核酸増幅検査) 迅速抗原検査キット
特徴 ウイルスのDNAを増幅して検出する世界的なゴールドスタンダード インフルエンザ検査のように、その場で判定可能な簡易キット。
精度(感度) 極めて高い
微量のウイルスでも検出可能。
PCRに比べると低い。
ウイルス量が少ないと偽陰性(感染しているのに陰性)になりやすい。
型判定 HSV-1型と2型の判別が可能 通常、1型・2型の区別はできない(陽性か陰性のみ)。
推奨ケース 確定診断、症状が軽い場合、型を特定したい場合。 明らかな水疱があり、すぐに結果を知りたい場合。

血液検査(抗体検査)の正しい活用法と注意点

「症状はないが心配」「過去に感染したか知りたい」という場合には、血液検査で抗体(IgG)を調べます。
ただし、血液検査の結果解釈には専門的な知識が必要です。安易な判断は誤解を招くため注意が必要です。

⚠️ 専門医の注意点:IgM抗体とIgG抗体の違い
  • IgM抗体(検査非推奨): 感染初期に上昇するとされますが、ヘルペスに関しては「非特異的反応(関係ないのに陽性に出る)」が多く、型(1型/2型)の区別もできないため、診断にはほとんど役に立ちません。現在のガイドラインでは推奨されていません。
  • IgG抗体(標準検査): 「過去の感染歴」を示します。感染してから陽性になるまで数週間かかるため、直近の感染(初感染直後)では陰性になることがあります。ペア血清(期間をあけて2回測定)での比較や、再発予測のスクリーニングに有用です。

抗体検査で「HSV-1型が陽性」と出た場合

日本人の成人の約半数はHSV-1の抗体を持っています(多くは小児期に感染した口唇ヘルペスの抗体です)。
したがって、血液検査でHSV-1が陽性であっても、「現在、性器にヘルペスがいる」ことの証明にはなりません。
一方、HSV-2抗体が陽性の場合は、性感染による性器ヘルペスの既往である可能性が極めて高くなります。

他の性感染症との鑑別・合併

性器に潰瘍を作る病気はヘルペスだけではありません。特に梅毒(第1期)による潰瘍(硬性下疳)はヘルペスと見分けがつきにくいことがあります。
また、潰瘍がある状態は粘膜のバリアが破壊されているため、HIVなどの他のウイルスが侵入しやすくなっています。

当院の推奨:
性器ヘルペスと診断された場合、あるいは疑わしい潰瘍がある場合は、念のため梅毒とHIVの検査も同時に受けることを強く推奨しています。
当院の診断方針:原則「視診」のみで行います

「検査結果を待つ数日間、痛みを我慢する必要はありません」

医学的な教科書ではPCR法などの検査が推奨されていますが、モイストクリニックではあえて「熟練した医師による視診(見た目での判断)」を最優先し、基本的にはその場で検査を行わずに治療を開始します。これには明確な2つの理由があります。

1
PCR検査よりも「治療開始」が圧倒的に早い

精密なPCR検査は結果が出るまでに数日かかります。しかし、ヘルペスの激しい痛みは「今」患者様を苦しめています。
視診で診断すれば、その場で抗ウイルス薬を処方し、すぐに服用を開始できます。このスピード感こそが、症状を最小限に抑え、早く治すための最大の鍵です。

2
迅速キットよりも「専門医の目」の方が正確な場合が多い

その場でわかる迅速キット(抗原検査)もありますが、ウイルス量が少ないと「本当はヘルペスなのに陰性(偽陰性)」と出てしまうことが多々あります。
当院の医師は性感染症の症例経験が豊富です。不確実なキットの結果に頼るよりも、多くの症例を見てきた医師が患部の特徴(水疱の配置や潰瘍の形状)を直接診て判断する方が、結果的に診断精度が高いと考えています。

※もちろん、症状が非典型的で判断が難しい場合や、患者様が強く希望される場合には検査を行うことも可能です。あくまで「患者様の利益(早期治療・経済的負担の軽減)」を第一に考えた方針です。

5. 治療法:抗ウイルス薬と再発抑制

現在の医学では、一度神経節に入り込んだヘルペスウイルスを完全に体内から排除することはできません。
しかし、優れた「抗ヘルペスウイルス薬」を使用することで、ウイルスの増殖をブロックし、辛い症状を速やかに鎮静化させたり、再発そのものを未然に防いだりすることが可能です。

最重要

① 初感染・初発時の治療

初めて発症した際はウイルス量が非常に多く、免疫もないため症状が重篤化しやすい状態です。
そのため、再発時よりも長期間(通常10日間)、十分な量の抗ウイルス薬を内服し、徹底的にウイルス増殖を叩く必要があります。

  • 標準治療:バラシクロビル等を1日2回、10日間継続して内服します。
  • 重症例:排尿困難や歩行困難がある場合、点滴治療が必要になることもありますが、多くの場合は早期の内服開始でコントロール可能です。
時々再発する方

② 再発時の治療(PIT療法・エピソード治療)

再発時は免疫があるため、初発に比べて短期間の治療で済みます。特に現在は、前兆を感じた段階で服用する「PIT療法」が推奨されています。

★PIT療法(短期療法)

「ピリピリ・ムズムズ」という前兆を感じてから6時間以内に服用開始。
薬剤により「1日2回」または「1回のみ」の服用で治療が完了します。水疱ができる前に治せる可能性が高く、非常に利便性が高い方法です。

通常のエピソード治療

水疱や潰瘍が出現してから開始する方法です。通常5日間内服します。

頻繁に再発する方

③ 再発抑制療法(毎日の予防内服)

「おおむね年6回以上」再発を繰り返す場合や、再発による精神的苦痛が強い方が対象です。
少量の抗ウイルス薬(バラシクロビル等)を毎日1回、1年間継続して服用します。

  • 再発を劇的に減らす:多くの患者様で再発がほとんど起こらなくなります。
  • パートナーへの感染防止:無症状時のウイルス排出も抑制するため、パートナーへの感染リスクを低減させる効果も証明されています。
  • 安全性:長期服用による副作用のリスクは非常に低いことが確認されています。

④ 症状緩和のための補助療法(外用薬など)

治療の基本は「内服薬」ですが、当院では患者様の辛い症状を少しでも早く和らげるため、状況に応じて補助的な治療薬を併用処方しています。

  • 抗ウイルス軟膏(ビダラビン軟膏など):
    皮膚表面のウイルス増殖を抑え、患部を保護します。内服薬と併用することで、局所の治癒をサポートする効果が期待できます。
  • 鎮痛薬(痛み止め):
    初感染時などは痛みが激しいため、ロキソプロフェンやアセトアミノフェンなどを処方し、日常生活への支障を減らします。

当院で使用する主な抗ウイルス薬

薬剤名 特徴 適応
バラシクロビル
(バルトレックス等)
世界的な標準薬。吸収が良く、確実な効果が期待できます。 初発(7日間)
再発(5日間)
抑制療法
ファムシクロビル
(ファムビル等)
PIT療法としての実績があり、短期間での効果発現に優れます。 PIT療法
初発・再発
アメナメビル
(アメナリーフ)
新機序の薬剤。腎臓への負担が少なく、PIT療法では1回飲むだけで治療が完了します。 PIT療法
ビダラビン軟膏
(カサール等)
患部に直接塗布する抗ウイルス薬。内服薬との併用で治療効果を高めます。 補助療法

Q. 市販の塗り薬だけで治せますか?

A. 基本的には内服薬をお勧めします。
市販の軟膏は軽度の口唇ヘルペスには有効ですが、性器ヘルペスの場合、ウイルスが神経の奥深くに潜んでいるため、塗り薬単独では十分な効果が得られないことが多いです。
当院では、「内服薬で体内からウイルスを叩き、軟膏で表面を保護する」という併用療法を推奨しています。

6. 予防と対策・パートナーへの配慮

性器ヘルペスにおいて、最も大切なことは「自分自身の症状コントロール」「大切なパートナーを守ること」の両立です。
100%の予防法は残念ながら存在しませんが、正しい知識と対策を組み合わせることで、感染リスクを限りなくゼロに近づけることは可能です。

パートナーを守るための3つの鉄則

① 症状がある時期はセックスをしない

水疱や潰瘍が出ている時期は、ウイルス量が爆発的に増えています。
コンドームを使っても、覆われていない皮膚から感染するリスクが高いため、病変が完全に治癒して皮膚が再生するまでは、性行為(オーラルセックス含む)を控えてください。

② 症状がなくてもコンドームを使用する

症状がない時でも、微量のウイルスが排出されていること(無症候性排泄)があります。
コンドームですべての感染を防げるわけではありません(陰嚢や陰毛部分は覆えないため)が、感染リスクを確実に低減させる最も手軽な手段です。

③ 「再発抑制療法」で感染率を下げる

抗ウイルス薬(バラシクロビル等)を毎日内服する「再発抑制療法」を行うと、無症候時のウイルス排出量が減少し、パートナーへの感染リスクを有意に低下させることが臨床試験で証明されています。
パートナーへの感染を強く心配される方には、この治療法を推奨しています。

妊娠と性器ヘルペス(新生児ヘルペス予防)

将来妊娠を希望される方や、現在妊娠中の方にとって、ヘルペスは非常に重要な問題です。
分娩時に産道にウイルスがいると、赤ちゃんに感染し「新生児ヘルペス」という重篤な全身感染症を引き起こすリスクがあります。

⚠️ 特に「妊娠後期の初感染」に注意

最もリスクが高いのは、「妊娠後期に初めてヘルペスに感染した場合」です。母体から胎児への抗体移行が間に合わず、赤ちゃんを守る免疫がない状態で出産を迎えてしまうためです。

  • 既感染者(再発型)の方: 母体に抗体があるため、赤ちゃんへの感染リスクは比較的低いですが、分娩時に再発している場合は帝王切開が選択されることがあります。
  • 対策: 妊婦健診で必ず「性器ヘルペスの既往がある(またはパートナーにある)」ことを担当医に伝えてください。状況に応じ、分娩前から抗ウイルス薬を予防内服する等の管理が行われます。

パートナーに伝えるべきか?

非常にデリケートな問題ですが、当院では感染拡大防止と信頼関係の観点から、パートナーへの告知をお勧めしています。

伝え方のポイント:

  • 「実は5人に1人が持っているありふれた病気であること」
  • 「今は薬で症状を抑えられ、感染リスクも減らせること」
  • 「症状がない時は普段通りの生活ができること」

上記の医学的事実を冷静に伝えることが大切です。
もしパートナー様が不安を感じている場合は、お二人で当院を受診し、医師から正しい説明を聞いていただくことも可能です。お一人で悩まずご相談ください。

7. 最新の研究とガイドライン(将来の展望)

性器ヘルペスの治療領域は、長年アシクロビルなどの核酸アナログ製剤が主流でしたが、近年、遺伝子工学の進歩により新たな局面を迎えています。
当院では常に世界の最新医学知見を収集し、診療に反映させています。ここでは現在研究が進んでいる新しい治療薬や、ヘルペスと他疾患との関連について解説します。

期待の新薬:プリテリビル(Pritelivir)

現在、世界的に注目されている開発中の抗ヘルペス薬です。
従来の薬(バラシクロビル等)とは異なり、ウイルスの「ヘリカーゼ・プライマーゼ複合体」を阻害するという新しい作用機序を持ちます。

  • 薬剤耐性株への効果:従来の薬が効きにくい(耐性を持った)ウイルスに対しても高い効果が期待されています。
  • 強力なウイルス抑制:既存薬よりもウイルス排出量を強力に抑えるデータが出ており、特に免疫不全の患者様や難治性の症例に対する切り札として、米国を中心に臨床試験(治験)が進んでいます。

※日本では同系統の薬剤として「アメナメビル」が既に承認・実用化されており、世界に先駆けて新しい治療の恩恵を受けることができます。

ヘルペスワクチンの開発状況

「ヘルペスを完治させるワクチンはないのか?」という質問は多く寄せられます。
現時点(2025年)で実用化されたものはありませんが、新型コロナウイルスで成功した「mRNAワクチン技術」を応用したヘルペスワクチンの臨床試験が、モデルナ社などを中心に開始されています。
将来的には、感染を予防するワクチンや、すでに感染している人の再発を完全に抑え込む治療用ワクチンの登場が期待されています。

⚠️ 重要:性器ヘルペスとHIV感染リスク

性器ヘルペス(特にHSV-2型)に感染していると、HIV(エイズウイルス)への感染リスクが約3倍に高まることがWHOから報告されています。

理由:
  1. ヘルペスの潰瘍や微細な傷口から、HIVが体内に侵入しやすくなるため。
  2. ヘルペスの炎症部位には、HIVが標的とする免疫細胞が集まってくるため。

当院からのご提案

性器ヘルペスと診断された方は、ご自身の健康を守るために「HIV検査」を定期的に受けることを強く推奨します。
また、HIV感染を未然に防ぐ予防薬「PrEP(プレップ)」の服用も、ヘルペスをお持ちの方には特に有効な選択肢となります。不安な方は診察時にご相談ください。

お一人で悩まず、専門医にご相談ください

性器ヘルペスは、適切な治療を行えば症状をコントロールでき、普段通りの生活を送ることができる病気です。
モイストクリニックでは、患者様のプライバシーに最大限配慮し、痛みを速やかに取り除く治療と、再発を防ぐためのライフスタイル提案を行っています。

「もしかしてヘルペスかも?」「再発を繰り返して辛い」とお悩みの方は、まずは当院までお気軽にご相談ください。

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※土日祝日も診療・匿名検査可能

この記事の監修者

金谷 正樹 医師

金谷 正樹

モイストクリニック 院長

国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックにて性感染症を中心に診療を行う。
日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療の実践を目指している。

所属学会・資格:
日本性感染症学会 会員

参考文献・出典