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HIV PEPとは曝露後予防の対象・開始時期・
服用後の検査
医学確認:金谷正樹 医師(2026年9月10日)
「コンドームが破れた」「相手のHIVの状態が分からない」。接触のあとに気づき、今からできることを探している方へ。
PEPは、HIV感染の可能性がある接触のあとに抗HIV薬を服用し、感染する可能性を下げる方法です。すでに起きた接触について、予防が必要かを医師と判断します。[1]
PEPが必要になるのは、どんなとき?
PEPを検討するのは、HIVを含む可能性のある血液や精液などが、粘膜・傷のある皮膚に触れた場合です。性行為では、コンドームなし・破損を伴う膣性交や肛門性交などが相談のきっかけになります。
相手のHIVの状態が不明だからといって、必ずPEPが必要になるわけではありません。医師は接触の内容、経過時間、相手の検査・治療状況などを合わせて判断します。[1]
- コンドームが破れた・外れた、使わなかった
- 膣性交・肛門性交の別や、体液・血液との接触を伝えてください。相手の検査結果が分からなくても相談できます。
- 相手がHIV陽性と分かっている
- 治療によってウイルスが持続的に抑えられているかも判断材料です。陽性という情報だけでPEPの要否は決まりません。
- オーラルセックスや皮膚への接触があった
- オーラルセックスだけでは通常PEPは勧められませんが、血液・傷・粘膜への接触などで判断が変わることがあります。傷のない皮膚への接触や、血液を伴わない唾液の接触は、通常PEPの対象になりません。
- 注射器の共有、針刺し、血液が目や口に入った
- 血液を介した曝露も評価が必要です。仕事中の事故では、勤務先へ速やかに報告し、職業曝露に対応する医療機関の指示を受けてください。
同意のない性行為のあとで、相談先に迷う方へ
まず安全な場所へ移り、医療機関または性暴力被害者のためのワンストップ支援センター(#8891)へ相談してください。HIVの予防だけでなく、緊急避妊や心身のケアについても支援につながれます。つながらない電話回線では、リンク先の地域窓口を確認できます。
相手の職業・国籍・見た目や、ご自身の症状だけでは判断できません。接触の内容を正確に伝えることが、必要な予防を選ぶ手掛かりになります。
女性・妊娠中・授乳中の方、持病のある方へ
PEPの必要性は性別だけで決まりません。妊娠中・授乳中でも、必要な場合はPEPを検討します。母体と胎児・乳児への影響を踏まえて薬を選ぶため、妊娠の可能性や授乳について診察時に伝えてください。[1]
B型肝炎や腎臓・肝臓の病気、服用中の薬・サプリメント、PrEPの服用状況も、薬の選択や検査に関わります。持病がある場合も、使用する薬とフォローの方法を個別に判断します。HIV感染がすでに確認されている場合は、予防ではなくHIVの治療につなげます。
PEPはいつまでに始める?
できるだけ早く、理想的には24時間以内、遅くとも接触から72時間以内に開始することが推奨されています。通常の服用期間は28日間です。[2]
遅くとも接触から72時間以内
処方された用法で継続
なぜ、早く始める必要がある?
PEPは、抗HIV薬でウイルスが増える過程を抑え、感染の成立を防ぐことを目指します。接触から開始までが短いほど予防できる可能性が高いため、48時間たっていても、72時間までは待たずに相談してください。[1]
数えるのは、予約や薬の注文までの時間ではなく、初回の服用までの時間です。相手の検査結果や自分の症状を待つことで、相談が遅れないようにしてください。
オンライン診療を希望する場合も、薬の受取までにかかる時間が重要です。配送や返信を待っていては開始が難しいときは、来院や、現在対応できる近隣の医療機関での受診を検討してください。
72時間を過ぎてしまった場合
72時間を超えてからのPEP開始は、効果を裏付ける根拠が十分でなく、通常は推奨されません。それでも、HIV検査と再検査の予定を立てることはできます。接触が複数回あれば、それぞれの日時を伝えてください。直近の接触は別に評価します。[1]
検査を今受けても、直近の感染を捉えられない時期があります。「遅かったから何もしない」で終えず、必要な検査と今後の予防を相談しましょう。
PEPには、どのくらい効果がある?
PEPは、感染の可能性がある接触後に使う予防法として、WHOやCDCのガイドラインで推奨されています。一方で、感染を100%防ぐことは保証できません。開始時期や飲み方、接触の条件などが異なるため、誰にでも当てはまる成功率を一つの数字では示せません。[1][2]
できるだけ早く開始し、処方どおりに継続することが基本です。飲み終えたあとも、検査で経過を確認します。服用中に新たな接触があった場合も、PEPを飲んでいるから大丈夫と考えず、処方元に伝えてください。
効果の根拠について
PEPの推奨は、動物実験、接触後に薬を使用した人の観察研究、抗HIV薬の知見などを合わせて作られています。現在使われるPEPについて、薬を使わない群と比較して人の予防効果を確定する試験はありません。「研究中に感染者がいなかった」ことも、その薬の予防率が100%である証明にはなりません。
CDCの2025年ガイドラインでは、ビクテグラビル・エムトリシタビン・テノホビル アラフェナミドの組み合わせなどを推奨していますが、その推奨を個別の輸入製品の同等性や成功率の保証へ置き換えることはできません。
PEPとPrEPは、使うタイミングが違います
| PEP:接触のあと | PrEP:接触の前から |
|---|---|
| すでに起きた接触に対する緊急の予防です。 | 今後も感染リスクのある接触が続く人のための予防です。 |
| 必要性を評価し、できるだけ早く開始。通常28日間服用します。 | HIV検査などで使用できることを確認し、予定する接触や生活に合う方法を相談します。 |
すでに接触があった場合、手元のPrEP薬を自己流で飲んでPEPの代わりにしないでください。PrEPを使っていても、開始直後や飲み忘れがある場合は、その服用状況を確認して判断します。
PEPは妊娠や、HIV以外の性感染症をまとめて予防する薬ではありません。緊急避妊薬やDoxy-PEPとも目的が異なります。
当院で使う薬と、副作用・飲み合わせ
当院ではTaffic(タフィック)を採用しています。ビクテグラビル50mg、エムトリシタビン200mg、テノホビル アラフェナミド25mgを含む配合薬です。通常は1日1回1錠を28日間服用しますが、処方時の指示に従ってください。
Tafficは日本国内では未承認の医薬品です。PEPとして国内承認を受けた製品ではありません。薬の必要性やリスクについて説明を受けたうえで使用します。
飲み忘れ・体調の変化があったときは
飲み続けるのがつらい症状、飲み忘れ、服用後の嘔吐は処方元に連絡してください。自己判断で2回分をまとめて飲んだり、用量を変えたりしないでください。
息苦しさ、顔・唇の腫れ、意識が遠のくなどの強い症状がある場合は、返信を待たず救急受診してください。
含有成分に関する資料では、吐き気・下痢・頭痛などの副作用が報告されています。腎機能や肝機能への影響にも注意が必要です。TafficをPEPとして使った場合の頻度を、国内承認品のHIV治療データからそのまま示すことはできません。[3]
処方薬だけでなく、市販薬やサプリも確認します
一緒に使えない薬や、服用の間隔・食事との関係に注意が必要な薬があります。胃薬や鉄・カルシウムなどのサプリメントを含め、お薬手帳や製品名の分かるものを診察時に用意してください。B型肝炎がある人は、服用終了後も肝炎の悪化に注意が必要です。[3]
相談から服用後の検査まで
PEPが必要かを診察で判断し、薬の受取・服用・その後の検査まで確認します。
-
01
日時・状況を伝える
- 接触した日時
- 接触の内容
- 服用中の薬・持病
-
02
診察でPEPの必要性を判断
必要な検査を確認します。PEPが必要な場合は、検査結果待ちだけで開始を遅らせないことが推奨されています。
-
03
薬を受け取り、服用する
初回はできるだけ早く。開始後は通常28日間、処方された用法で継続します。
-
04
服用後の検査へ
次の検査日と、最終評価までの予定を処方元で相談します。
開始前のHIV検査は、すでに感染していないかを確認するためのものです。接触直後の陰性結果だけで、今回の接触による感染を否定することはできません。
検査が陽性・判定保留の場合は、確認検査やHIV診療につなげます。服用を始めている場合も、自己判断で中止せず医師の指示を受けてください。[1]
PEPは、飲み終えたあとの検査まで
28日間飲み切ったことや、服用終了時に陰性だったことだけでは、感染していないと確定できません。薬の影響でHIVが検出されにくくなることがあるため、服用後も予定した検査を受けます。
| 時期 | 確認すること |
|---|---|
| 開始前 | HIVの状態、B型肝炎、腎機能・肝機能など。薬の選択にも関わります。 |
| 服用中〜終了時 | 服用状況、体調の変化、HIV検査など。症状があれば予定日を待たずに受診します。 |
| 服用終了後 | 感染の有無を評価するためのHIV再検査。検査法・服用歴・追加の接触に応じて日程を決めます。 |
次の検査について、処方元で確認すること
- 次に検査を受ける日
- 検査の項目と受ける医療機関
- 最終評価までの予定
当院では開始時と服用終了後の採血を案内していますが、その2回の採血だけで最終評価が完了するとは限りません。
検査時期のガイドライン上の目安
米国CDCの2025年ガイドライン本文では、PEP開始から4〜6週と12週を目安としたHIV検査を説明しています。抗原抗体検査と、HIVの遺伝物質を調べる核酸検査を組み合わせる推奨であり、「どの検査でも同じ時期に確定できる」という意味ではありません。
これは米国の一般的な指針です。当院の提供する検査内容や、個々の検査日程を示すものではありません。接触した日・服用開始日・検査法を確認して、必要なフォローを医師と決めます。[1]
今後もHIV感染のリスクが続く場合は、終了前からPrEPへの移行について相談できます。HIV検査とフォローを続けながら、切り替える時期を決めます。
当院の費用・受診方法
自由診療(公的医療保険の適用外)
59,800円(税込)
- 含まれるもの
- PEP薬28日分・診察料・処方料
- 別料金
- 採血、追加の性感染症検査、配送料
採血付きプランもあります。検査内容と、検査費を含む支払総額は実施前に説明します。
国内未承認薬Tafficを使用します。主なリスクは吐き気・下痢、腎機能・肝機能への影響などです。薬とリスク・未承認薬の情報
電話対応 9:00〜22:00
Web予約では、診察内容・初診/再診・日時を選びます。
Web・LINEは24時間受付です。夜間や電話がつながらない場合でも、返信を待つことで開始が遅れそうなら、現在対応できる医療機関への相談を優先してください。
恵比寿での来院・オンライン診療
対面診療は14:00〜22:00、土日祝も診療しています。来院のほか、オンライン診療にも対応しています。診療方法は個別に案内し、採血や対面での評価が必要になる場合があります。検査が必要かどうかは、料金プランとは別に判断します。深夜のオンライン診療は可能な範囲での対応となり、診察・返信をすぐに行えるとは限りません。予約・相談の際は「PEP希望」と接触日時を伝えてください。
オンラインで処方された場合、通常は宅急便コンパクトで発送し、送料は700円(税込)です。対象地域のタイムサービス便は1,900円(税込)、都内の至急配送はバイク便を個別に検討します。
17時までの受付・決済完了は当日発送処理の基準です。到着時刻や72時間以内の服用開始は保証されません。間に合わない可能性がある場合は、来院や近隣の対応医療機関を選んでください。
よくある質問
未成年でもPEPの相談はできますか?
未成年でも、接触内容によってPEPの評価が必要になることがあります。年齢と接触した日時を医療機関に伝えてください。受診できる年齢や保護者の同意・同伴の扱いは、受診先に確認が必要です。保護者に話しにくい事情がある場合も、そのことを窓口に伝えて相談できます。
海外や他院でPEPを始めた場合は?
薬がなくなる前に、まず処方元へ継続と検査の予定を確認してください。帰国・転居などで別の医療機関を受診する場合は、薬の箱や写真、開始日、残りの錠数、検査結果を用意すると引継ぎに役立ちます。継続処方の可否は、薬剤と診療情報を確認して判断されます。
相手が陰性だと分かったら、薬をやめていい?
検査の種類・時期や、その後の接触を含めて医師が確認します。相手から「陰性だった」と聞いた情報だけで自己判断せず、処方元へ伝えてください。評価の結果、PEPが不要と判断されれば中止を検討できます。
PrEPを飲んでいても、PEPが必要になる?
PrEPの種類、いつ始めたか、接触前後にどう飲んだかによって判断します。飲み忘れがあった場合は、接触日時と服用の記録を伝えてください。追加で飲む量を自分で決めないでください。
妊娠の心配もある場合は?
HIV PEPでは妊娠を防げません。緊急避妊の必要性も並行して相談してください。コンドーム破損時の対処に、妊娠と性感染症についての相談の進め方をまとめています。
