ヘルペスが再発するのは、一度感染したウイルスが神経に残り、再び活動するためです。疲れやストレス、発熱、月経などが、再発のきっかけになることがあります。
この仕組みは口唇ヘルペスと性器ヘルペスに共通します。ここからは主に成人の性器ヘルペスについて、再発する原因、日常でできる対策、繰り返すときの治療を説明します。
尿が出ない、強い頭痛や意識の異常がある方は、すぐに受診したい症状を確認してください。
治った後も再発するのは、神経にウイルスが残るため
単純ヘルペスウイルス(HSV)は、症状が治まった後も、神経細胞が集まる「神経節」に潜伏します。再び活動すると、神経を通って皮膚や粘膜へ移動し、症状を起こすことがあります。これが再発です。[1][2]
同じ神経の範囲で症状が出るため、以前と近い場所に繰り返す傾向があります。新たな性行為をしていない時期にも再発します。再発したことだけから、最近感染した、パートナーから再びうつった、と判断することはできません。[1][2][3]
抗ウイルス薬は、増殖中のウイルスを抑えて症状の回復を助けます。神経に潜伏するウイルスを取り除く治療は、現在確立していません。薬が効いて症状が治まった後も、潜伏ウイルスの再活動によって再発することがあります。[1][2]
完治する薬やワクチンはありますか?
現在の治療でできるのは、再発したときの症状を軽くすることと、服用中の再発回数を減らすことです。HSVを予防する承認済みワクチンはまだありません。ワクチンや根治を目指す研究については、性器ヘルペスの治療薬と新しい治療の研究で説明しています。[5]
疲れ・ストレス・生理は再発のきっかけになる?
体調の変化や患部への刺激が、潜伏しているウイルスの再活動のきっかけになることがあります。ただし、きっかけがはっきりしない再発もあります。「再発したから、生活管理が悪かった」と考える必要はありません。[1][3][6]
| きっかけ | 取り入れやすい工夫 |
|---|---|
| 疲れ・睡眠不足・ストレス | 休息や睡眠をとる時間を確保し、無理が続く予定を見直す。 |
| 発熱・体調不良 | 体調の回復を優先する。再発の前兆が出たら、早期治療につなげる。 |
| 月経の前後 | 症状が出た日を記録する。繰り返す時期があれば、次回の薬の備えを相談する。 |
| 性行為や衣類の摩擦 | 痛みや刺激を感じる接触、締め付けの強い衣類を避ける。前兆や病変がある間の性的接触は控える。 |
性器ヘルペスの誘因と体調管理の工夫をまとめています。日光・紫外線による再発やリップの日焼け止めは、主に口唇ヘルペスで扱う対策です。[3][6]
日々の体調管理に加え、「出始めに治療する」「頻繁なら抑制療法を相談する」という薬での対策もあります。生活を整えていても繰り返すときは、治療の選択肢を見直しましょう。免疫を抑える治療を受けている方は、その薬や病気についても診察で伝えてください。[2][3]
食事は無理なく続けられるバランスを基本にしてください。リジンなどのサプリメントや特定の食品を、性器ヘルペスの確立した再発予防法として勧められるだけの根拠は、十分ではありません。[11]
ピリピリする前兆が出たら、早めの治療を
再発時の治療は、水ぶくれが大きくなるのを待たず、前兆や症状の出始めから行います。ピリピリ・むずむずする感じ、かゆみなどの後に、小さな水ぶくれやただれが出ることがあります。再発は初めての症状より軽く、短い経過で治まる傾向があります。[2][3]
- ピリピリ感・かゆみなどの前兆いつもの再発の出始めに気づいたら、下の表で今の状態に合う対応を確認する。
- 水ぶくれ・ただれ痛みやしみる感じが出ることがあります。患部への刺激を避ける。
- 皮膚・粘膜が回復治り方には個人差があります。症状が改善しない場合は再診する。
事前に処方された薬で、再発時に自分で治療を始める方法を「PIT」と呼びます。
| 今の状態 | 次にすること |
|---|---|
| 事前にPITの処方・指導を受けている | いつもの初期症状なら、指示された条件で服用する。当院のアメナリーフの条件へ。 |
| 手元に再発時用の薬がない | 早めに受診し、通常の再発治療を相談する。前兆から時間がたっていても受診する。 |
| 初めての症状、いつもと違う、治りにくい | 診察で原因を確かめる。必要に応じて病変からの検査などを行う。 |
性器の痛みやただれには、ヘルペス以外の原因もあります。初めての症状や診断がはっきりしない場合の検査は、性器ヘルペスのPCR・血液検査をご覧ください。市販の口唇ヘルペス用クリームは、性器には使わないでください。[10]
受診までの間は、水でやさしく洗い、締め付けや摩擦を避けます。患部に触れる前後は手を洗いましょう。痛みには布で包んだ保冷剤で冷やす工夫、排尿時にしみる場合はぬるま湯をかける工夫があります。強い痛みがある場合は、鎮痛薬の使用についても医師に相談できます。[3]
何度も繰り返すときは、回数と負担に合う治療を
性器ヘルペスの再発頻度は人によって異なり、同じ人でも年月とともに減ることがあります。一般に、性器に感染したHSV-2はHSV-1より再発しやすい傾向があります。[1][2]
年に何度も再発する、痛みで仕事や睡眠に支障が出るときは、治療方法を見直す目安です。最近1年の再発回数、症状が続いた日数、使った薬をメモしておくと、診察で困りごとを伝えやすくなります。
| 治療 | 主な目的 | 飲むタイミング |
|---|---|---|
| 再発時の通常治療 | 今出ている症状を軽くし、治るまでの期間を短くする | 前兆や症状の出始めから、処方された日数 |
| PIT (事前処方) | 薬を手元に備え、次の再発に早く対処する | 初期症状に気づいたら、事前の指示どおりに |
| 再発抑制療法 | 服用中の再発回数を減らす | 症状のない日も毎日 |
今ある症状への対応は前兆や症状があるとき、治療ごとの費用は当院の料金をご覧ください。薬の選択や飲み方は診察で決めます。

再発回数を減らす、毎日の抑制療法
再発抑制療法は、症状が出るたびに飲む方法から、毎日の服用へ切り替えて再発を減らす治療です。国内のバラシクロビルの電子添文では、免疫機能が正常な方のおおむね年6回以上の再発が目安です。回数に加え、症状や生活への負担も伝えてください。[4]
CDCは、HSV-2による再発を頻繁に繰り返す人では、抑制療法により再発頻度が70〜80%減るとしています。服用中にも再発することはあります。[2]
当院ではバラシクロビル500mgを1日1回、1年間服用する方法を推奨しています。電子添文でも1年後に継続の必要性を検討することとされています。再発の状況や生活への影響を振り返り、続けるか、いったん中止して経過を見るかを医師と相談します。服用中に再発した場合は、量を自分で増やさず処方元へ連絡してください。[4]
毎日服用する負担や費用、副作用も含めて選ぶ治療です。頭痛、吐き気、腹部の不快感などが起こることがあり、腎機能が低下している方では用量の調整が必要になることがあります。妊娠や授乳中であること、腎臓の病気、服用中の薬について診察で伝えましょう。尿量の低下や意識の異常があれば、速やかに医療機関へ連絡してください。[4]
次の再発に備え、出始めに飲むPIT
PITは、あらかじめ処方された薬を手元に置き、再発の前兆(初期症状)に気づいたら自分で治療を始める方法です。性器ヘルペスの再発を繰り返し、初期症状を自分で判断できる方に、医師が診断と病歴を確認して、次の再発1回分を処方します。[7]当院ではアメナメビル(アメナリーフ)を使います。
- 症状がない時期に準備診察で適応と飲み方を確認し、薬を手元に備える。
- いつもの初期症状に気づくピリピリ感などが始まった時刻を確認する。
- 初期症状から6時間以内、食後に1回服用成人は1,200mg(200mg錠を6錠)。食事の時間でなければ軽食をとってから服用する。
6時間を過ぎた場合や、いつもと違う症状のときは処方元へ連絡してください。妊娠中・妊娠の可能性がある方・授乳中の方は、手元のPIT薬を服用せず受診してください。リファンピシンを使用中の方や、この薬の成分で過敏症を起こしたことがある方は使えません。[7]
アメナリーフの服用後に見え方の変化などが出た場合は、速やかに処方元へ連絡してください。症状が改善しない場合も、追加で服用せず再診してください。[7]薬を使った後は、次の再発に備える処方について改めて相談します。
国内の試験では、初期症状から6時間以内に服用した再発性性器ヘルペスの患者で、病変が治るまでの日数の中央値が、プラセボより約1日短くなりました。[8]
PITの治療効果を調べた試験について
2022年の国内第III相試験は、免疫機能が正常で初期症状を判断できる成人が対象でした。赤み・丘疹までにとどまり、水ぶくれなどへ進行しなかった例等を除く主要解析の結果です。比較相手はプラセボで、バラシクロビルなどの通常治療との優劣を調べた試験ではありません。[8] この試験はマルホの資金提供を受け、同社の社員が著者に含まれます。
| 服用した薬 | 治癒までの中央値 |
|---|---|
| アメナメビル(89人) | 4.0日 |
| プラセボ(97人) | 5.1日 |
詳しい薬の使い分けは性器ヘルペスの治療薬で説明しています。
パートナーへの感染を減らすために
前兆や病変がある間は、口・性器・肛門の性的接触を控え、病変が治るまで待ちましょう。症状がない時期にもウイルスが出ることがあるため、パートナーと共有し、コンドームも組み合わせます。コンドームで覆われない皮膚から感染する可能性も残ります。[2][3]
HSV-2による性器ヘルペスでは、毎日のバラシクロビルによる抑制療法が、パートナーへの感染を減らす手段にもなります。再発のつらさだけでなく、パートナーとの生活で困っていることも診察で伝えてください。[2][9]
抑制療法と感染予防の研究について
症状のあるHSV-2感染者と、HSV-2に感染していない異性パートナーの1,484組を対象に、8か月間調べた試験があります。感染者は免疫機能が正常で、固定したパートナーとの関係にある方でした。両群に予防の説明とコンドームを提供した条件です。[9]
| 感染者側の服用 | パートナーの新規感染 |
|---|---|
| バラシクロビル500mgを毎日 | 14/743人(1.9%) |
| プラセボ | 27/741人(3.6%) |
この数値は、HSV-2感染者が毎日バラシクロビルを服用した条件での8か月間の結果です。性行為1回あたりの感染率ではありません。
当院の治療費と受診方法
モイストクリニックでは、再発時の内服治療、PIT、毎日の抑制療法を提供しています。自由診療のため、健康保険は使えません。
| 治療 | 提供内容 | 料金 |
|---|---|---|
| 再発時の通常治療 | バラシクロビル500mg・1日2回、またはファムシクロビル250mg・1日3回。通常5日分。 | 4,480円 |
| PIT | アメナリーフ1,200mg・1回分(200mg錠を6錠)。 | 15,000円 |
| 再発抑制療法 | バラシクロビル500mg・1日1回。1年間を推奨。 | 13,440円/月 12か月分の薬剤治療費は161,280円 |
当院ではファムビルのPITは提供していません。上記は診察料・薬代込みです。検査料・配送料は別途かかります。通常の薬の送料は400円です。処方期間による割引はありません。用量や治療期間は、診察で症状・腎機能・併用薬などを確認して決めます。
オンライン診療でも相談できます。医師が症状と経過を確認して治療を提案し、必要に応じて対面診療や専門医療機関への受診をご案内します。今、症状がある場合は、予約時に「前兆や症状が始まった時刻」と「手元の薬」を伝えてください。
診療内容の全体は、ヘルペス外来の案内をご覧ください。
監修者プロフィール

金谷正樹 医師
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現・東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症診療に従事。日本性感染症学会会員。
医学確認:金谷正樹 医師(2026年10月7日)
参考資料
- 日本皮膚科学会:単純ヘルペスはどうして再発するのですか?
- CDC:Genital Herpes — STI Treatment Guidelines
- NHS:Genital herpes
- PMDA:バルトレックス錠500 電子添文
- WHO:Herpes simplex virus — vaccine development
- WHO:Herpes simplex virus(2025年5月30日)
- PMDA:アメナリーフ錠200mg 電子添文
- Kawashima M, et al. Single-Dose, Patient-Initiated Amenamevir Therapy for Recurrent Genital Herpes. Open Forum Infect Dis. 2022;9:ofac494.
- Corey L, et al. Once-daily valacyclovir to reduce the risk of transmission of genital herpes. N Engl J Med. 2004;350:11–20.
- 大正製薬:ヘルペシアクリームをお使いになる前に
- DiGiovanna JJ, Blank H. Failure of lysine in frequently recurrent herpes simplex infection. Arch Dermatol. 1984;120:48–51./Cochrane:Measures for preventing cold sores(2015、口唇ヘルペスが対象)
