医学確認:金谷正樹 医師(2026年9月12日)
出血・痛みの受診目安/検査する部位・時期・費用
アナルセックスとは、陰茎を肛門に挿入する性行為です。行為のあとに出血や痛みがある場合は、傷や痔のほか、性感染症が原因のこともあります。挿入された側・挿入した側のどちらも、接触した部位に合わせて確認します。指や器具だけで肛門に接触した場合も、ご相談いただけます。
まず、今ある症状を確認
出血・痛みがあるときの受診目安
行為直後の少量の出血には、摩擦による傷や切れ痔などが考えられます。ただし、「痔だから大丈夫」「出血したから性病」と、症状だけで決めることはできません。直腸の炎症でも、痛み・分泌物・出血などが起こります。[1][3]
- 少量の出血が続く・
繰り返す - 肛門科・消化器科などで診察を受けてください。性的な接触後であれば、そのことも伝えると、傷や痔だけでなく感染の可能性も含めて調べられます。
- 肛門の痛み・膿・
便が残る感じ - 性感染症による直腸炎などを確認します。強い痛みや発熱がある場合は、早めの対面診療が必要です。検査に適した日を待って我慢しないでください。
- 水ぶくれ・ただれ・
しこり・いぼ - ヘルペス、梅毒、尖圭コンジローマなどが関係することがあります。見た目だけでは区別できないため、患部の診察を受けてください。
下痢や腹痛、血便がある場合は、性感染症以外の腸の病気も考えます。口と肛門の接触があった場合は、腸管感染症も含めて医師へ伝えてください。必要な診察・検査によって、専門医療機関での対応となることがあります。[1]
症状がない場合も、部位を確認
接触した部位と必要な検査
肛門への感染を調べる検査と、性器や血液を調べる検査は別です。たとえば、挿入された側の肛門にクラミジアが感染していても、尿の検査では確認できません。両方の役割があった場合や、オーラルセックスもした場合は、その接触も伝えてください。[2]
| 接触した場所 | 確認する場所・方法 |
|---|---|
| 肛門に挿入された | 肛門・直腸のぬぐい液で、クラミジアや淋菌などを調べます。 |
| 陰茎を挿入した | 尿などで、性器のクラミジアや淋菌などを調べます。 |
| 自分の口でも接触した | のどの検査も検討します。肛門をなめる行為は、腸管感染症の確認が必要になることもあります。 |
| 水ぶくれ・ただれ・いぼ | その場所を診察します。必要に応じて患部の検査や採血を行います。 |
| HIV・梅毒・B型肝炎 | 役割を問わず、接触状況に応じて血液検査を検討します。尿や肛門の検査では代用できません。 |
すべての行を一律に検査するという意味ではありません。接触状況・症状・相手の診断が分かっている場合はその内容から、必要な項目を選びます。検査に適した時期も確認します。
肛門性交で感染リスクが高くなる理由
肛門・直腸への接触では、摩擦による傷と、粘膜や皮膚を介した感染に注意が必要です。感染する病気や部位は、挿入された側か・挿入した側か、コンドームの使用や破損、口との接触などで変わります。
コンドームは多くの性感染症のリスクを下げますが、覆われない皮膚の接触などで感染する病気もあります。「コンドームを使った」「痛みがない」という理由だけで、感染を完全には否定できません。[5]
特にHIVでは、肛門へ挿入される側の感染リスクが高いことが報告されています。直腸の粘膜は摩擦で傷つきやすく、ウイルスの侵入に関わる粘膜の性質も、膣や口とは異なります。[10][12]
次の表は、相手がHIVに感染している場合の、性行為1回当たりの推定値です。コンドーム・PrEP・相手のHIV治療による予防効果は含みません。[11]
| 性行為 | 挿入される側 | 挿入する側 |
|---|---|---|
| 肛門性交 | 1.38% | 0.11% |
| 膣性交 | 0.08% | 0.04% |
出典:Patelら(2014年)の系統的レビュー・表1。CDCのリスク説明でも採用されています。
複数の研究をまとめた推定値で、実際のリスクは相手のウイルス量や予防の状況などで変わります。相手の感染状況が不明な場合の「今回の感染確率」を示す数字ではありません。また、この数値をクラミジア・淋菌・梅毒など、他の性感染症に当てはめることはできません。[10][11]
HIVに感染していても、治療によってウイルス量が検出限界未満に保たれている場合は、性行為でHIVは感染しません。これをU=Uといいます。[11]
受診する時期と、検査で分かる時期
検査はいつ受ければよいか
症状がある方・相手の感染が分かった方は、まず相談してください。検査に適した時期が来るまで、受診そのものを待つ必要はありません。
症状はなく、検査を受ける日が分からない方は、接触日を伝えて最初の検査日を相談しましょう。早い時期に検査した場合は、後日の再確認が必要かも一緒に確認します。
感染してから検査で検出できるまでには時間がかかることがあります。行為の直後に陰性でも、その行為による感染を否定できるとは限りません。「今受ける検査」と「後日もう一度確認する検査」を分けて考えます。[6]
HIVは検査方法によって時期が異なります
当院の通常のHIV検査は、血液の抗体を調べる検査です。一般に抗体検査で感染を検出できる時期には、接触後23〜90日という幅があります。これは検査方法全体の目安で、「23日目なら当院の検査で必ず分かる」という意味ではありません。接触日と受けた検査に合わせて、再検査の時期を相談してください。PEP・PrEPを使っている方は、服用状況に応じた確認が必要です。接触から72時間を過ぎた方も、検査や今後の予防について相談できます。[6]
クラミジア・淋菌・梅毒なども、症状や接触からの日数、検査方法で判断します。すべての病気を「行為から○日で検査すればよい」と一括りにはできません。
モイストクリニックでの受診
検査の受け方と費用
接触した日と部位を伝える
「○日前に肛門へ挿入された」「挿入する側でコンドームが破れた」など、ご自身の言葉で構いません。症状、相手の検査結果、PEP・PrEPや抗菌薬の使用も分かる範囲でお知らせください。
必要な診察・検査を相談する
肛門・直腸の検査では、綿棒のような器具でぬぐい液を採取します。痛みや出血がある方は採取前に伝えてください。症状や病変によっては、先に診察を行ったり、専門医療機関での検査を案内したりします。
結果を確認し、必要な対応へ進む
結果はLINE・メールでご案内します。陽性の場合は病気と感染部位に合わせて治療を相談します。HIVのスクリーニング検査が陽性・判定保留の場合は、確定診断のため専門医療機関へ紹介します。
| 検査 | 料金 |
|---|---|
| クラミジア | 4,500円1部位・1項目 |
| 淋菌 | 4,500円1部位・1項目 |
| HIV抗体 | 4,500円 |
| 梅毒 | 4,500円RPR定量+TP |
クラミジア・淋菌は、性器・のど・肛門など、検査する部位ごとに料金がかかります。複数項目やセット検査を含め、必要な検査と総額は実施前にご確認ください。治療薬・追加検査等の費用は別です。
通常の結果までの目安は、クラミジア・淋菌が2日、梅毒が1日、HIVが5日です。検査会社の処理は月〜土曜日で、日数は確認の状況などで前後します。これは採取後に結果が出るまでの日数で、行為から検査まで待つ日数ではありません。HIVの検出可能な時期についてはこちらをご確認ください。
陰性でも痛みや出血が続く場合は、そのままにせず再度診察を受けてください。検査した病気以外の原因や、検査の時期・部位を見直します。
Web予約では「性感染症(対面)」を選び、初診・再診、日時の選択へ進みます。検査項目は診察時に相談できます。緊急の症状やPEPの相談では、LINEの返信や通常予約を待たないでください。
次の接触に備える
今後の感染と傷を防ぐために
コンドームは接触の最初から使い、水性・シリコン系の潤滑剤で摩擦を減らします。ラテックス製コンドームに油性の潤滑剤を使うと破損の原因になります。相手や接触する部位が変わるときは、コンドームも交換してください。[7]
痛みや出血があるときは、刺激になる行為を控えて診察を受けましょう。性感染症と診断された場合は、パートナーの検査・治療も必要になることがあります。性行為を再開する時期は、病気や治療内容に応じて確認してください。[1]
予防薬は目的と対象が異なります
今後もHIV感染の機会がある方には、接触前から備えるPrEPという選択肢があります。今回の接触後に緊急で検討するHIV予防薬PEPとは、使い方が異なります。[4]
Doxy-PEPは、一部の細菌性性感染症を対象とする接触後の予防です。HIVを予防する薬ではありません。国内では予防目的の適応外使用で、対象や効果には限界があるため、医師が必要性を判断します。自己判断で余った抗菌薬を飲まないでください。[8]
受診前によくある疑問
洗えば感染を防げますか?
行為後の洗浄で、性感染症を防げるとはいえません。強くこする・消毒する・肛門内を繰り返し洗うことで、刺激や傷が生じることもあります。洗ったことを理由に検査やPEPの相談を遅らせないでください。[9]
行為の内容を話すのが恥ずかしいです
検査する部位を決めるために必要なのは、接触した日・ご自身の部位・症状などです。「肛門の検査を相談したい」から話し始めていただいて構いません。診察時に見せるメモにまとめる方法もあります。
周囲に知られずに相談できますか?
プライバシーに配慮して対応します。連絡方法などに心配がある場合は、最初にお知らせください。LINE・メールの通知や共有端末の閲覧など、ご自身の利用環境にもご注意ください。診療上必要な本人情報の確認を省略できる、または誰にも知られないことを保証するものではありません。
医師紹介

モイストクリニック
金谷 正樹 医師
検査する場所や時期が分からない方へ
必要な検査を決めてから予約する必要はありません。接触した日と部位、今ある症状をもとにご相談ください。
緊急の症状・HIV予防薬PEPは、ページ冒頭の案内をご確認ください。
参考資料
- CDC:Proctitis, Proctocolitis, and Enteritis
- CDC:Chlamydial Infections
- NHS:Bleeding from the bottom (rectal bleeding)
- CDC:Preventing HIV with PEP
- CDC:How to Prevent STIs
- CDC:Getting Tested for HIV
- NHS:Condoms
- CDC:Doxy-PEP clinical guidelines, 2024
- NHS Sexual Health St Helens:After Sex
- Patel P, et al. Estimating per-act HIV transmission risk: a systematic review. AIDS. 2014;28(10):1509–1519. doi:10.1097/QAD.0000000000000298
- CDC:HIV Risk Reduction Tool — About the Data(推定値の前提とU=U)
- Baggaley RF, et al. HIV transmission risk through anal intercourse: systematic review, meta-analysis and implications for HIV prevention. Int J Epidemiol. 2010;39(4):1048–1063. doi:10.1093/ije/dyq057(粘膜の性質に関する考察)
