クンニリングスと性感染症
クンニ(クンニリングス)は、口や舌で外陰部に触れるオーラルセックスです。挿入がなくても性病がうつることがあり、する側は口・のど、される側は外陰部・性器が主な確認部位になります。症状がなくても感染している場合があります。[1]
クンニで感染する可能性がある性病
口と外陰部の接触では、次の感染症が関係します。ただし、どの病気も同じ確率でうつるわけではありません。 クンニだけを対象にした研究は限られており、1回あたりの感染確率を一律に示すことはできません。[1]
| 感染症 | 知っておきたいこと |
|---|---|
| 淋菌感染症 | 口・のどと性器の間で感染することがあります。特にのどの感染は無症状のことが多く、感染を調べるには接触した部位を検査します。 |
| 性器ヘルペス | 口のHSV-1が性器にうつることがあります。痛みを伴う水ぶくれ・ただれなどがあれば、症状があるうちに受診してください。 |
| 梅毒 | 感染性のある病変との接触でうつります。口や性器のしこり・ただれは、痛みがないこともあります。 |
| HPV感染症 | オーラルセックスで口・のどに感染することがあります。感染した場所とHPVの型によって、起こりうる病気は異なります。 |
| クラミジア感染症 | オーラルセックスで感染する可能性はありますが、咽頭クラミジアの頻度は低く、クンニによる感染確率は明確ではありません。 |
上記は感染経路の整理であり、全項目の検査を全員に勧めるものではありません。HIVの考え方は予防薬についての説明をご覧ください。[1][2][3][4]
研究で報告された咽頭淋菌の陽性率
米国の性感染症・HIV外来で行われた2009年の研究では、過去2か月のオーラルセックスとしてクンニのみを行った男性受診者群で、咽頭淋菌の陽性率は5.6%でした。これは特定の受診者群の検査結果であり、クンニ1回で感染する確率や、一般の人の感染率を示すものではありません。[11]
検査は、接触した部位と症状に合わせます
| 確認したいこと | 主な検査・診察 |
|---|---|
| する側:のどの淋菌・クラミジア | うがい液や、のどをぬぐった検体による核酸増幅検査(NAAT)など。採取方法は検査に合わせて選びます。 |
| される側:性器の淋菌・クラミジア | 膣ぬぐい液などによる核酸増幅検査。女性の性器の検査では、膣ぬぐい液が適した検体です。 |
| 水ぶくれ・ただれ・いぼ | 診察で病変を確認し、必要に応じて病変部の検査を行います。尿やうがい液だけで、これらをすべて診断することはできません。 |
| 梅毒など、血液検査で調べる感染症 | 症状、相手の診断、ほかの性行為、経過日数を踏まえて採血の必要性と時期を判断します。 |
核酸増幅検査は、病原体の遺伝物質を増幅して調べる方法です。検査する部位が違えば、別の検体が必要になります。淋菌・クラミジアの2項目の検査で、ほかの性病まで分かるわけではありません。 調べたい病気に合わせた検査・診察が必要です。[2][3][4]
研究では、のどだけ陽性のケースも
2025年に報告されたアイルランド・北アイルランドの研究では、郵送検査を利用した17〜24歳の異性愛者のうち、淋菌が陽性だった人の63%は、性器が陰性で、のどだけ陽性でした。クンニに限定した研究ではありませんが、性器の検査だけではのどの感染を確認できないことを示すデータです。[12]
検査はいつ受ければよいですか?
症状がない場合:淋菌・クラミジアは約2週間が目安
気になる接触から約2週間後が、淋菌・クラミジア検査を受ける時期の一つの目安です。早い時期に受けた検査が陰性でも、感染を十分に否定できず、再検査を勧める場合があります。「2週間で、すべての性病が分かる」という意味ではありません。[5]
症状がある・相手が陽性:日数を待たずに相談
症状がある場合や相手の陽性が分かった場合は、2週間が経過するのを待つ必要はありません。まず診察を受け、その時点でできる検査・治療と、後日の検査が必要かを確認します。[5]
梅毒やHIVなどの血液検査は、使う検査法や経過日数によって判断します。予約時や診察時に「行為をした日」をお伝えください。
当院での検査と費用
当院では、淋菌・クラミジアの通常検査・即日検査の両方に核酸増幅検査を用いています。即日検査は、抗原検査とは異なります。検査・治療は自由診療(保険適用外)です。
| 通常検査の内容 | 料金(税込) |
|---|---|
| クラミジアまたは淋菌の1項目・1部位 | 4,500円 |
| のどのクラミジア・淋菌の2項目 | 6,500円 |
| 性器のクラミジア・淋菌の2項目 | 6,500円 |
検査料金には診察料を含みます。追加検査・治療・再検査には別途費用がかかります。通常検査の結果は2日が目安で、検査の処理日や状況により前後します。即日検査は別料金です。接触内容を踏まえて、必要な項目を相談して選べます。
よくある疑問
短時間でもうつりますか?
短時間であっても、感染する可能性はあります。ただし、「何秒以内なら安全」といった線引きや、時間だけで感染確率を算出することはできません。接触した部位、症状、相手の診断などをもとに検査の必要性を考えます。[1]
うがいや口を洗うことで予防できますか?
うがいや洗口液だけで性病を防げると考えることはできません。行為後に口を洗ったことを理由に、必要な検査や受診を省かないでください。[10]
HIVのPEPや予防の抗菌薬は必要ですか?
HIVについて、口と性器の接触による感染リスクは極めて低く、クンニだけであれば、HIVの予防内服(PEP)は通常勧められません。 ただし、血液との接触や粘膜の傷、コンドームなしの膣性交・肛門性交もあった場合などは個別に判断します。HIVが心配な接触があり、72時間以内の場合は速やかに相談してください。[1][8]
抗菌薬による予防(Doxy PEP)はHIVのPEPとは別のもので、クンニをした方全員に必要な予防薬ではありません。効果が確認された対象は限られるため、希望する場合は診察で適応を相談してください。[9]
検査に迷ったら、接触内容から相談を
「いつ」「自分のどこが接触したか」「症状があるか」を分かる範囲でお伝えください。必要な検査と受診の時期を、診察で一緒に確認します。
医師紹介

モイストクリニック 院長
金谷 正樹
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療しています。
所属学会
日本性感染症学会 会員・日本性機能学会 会員
医学監修:金谷正樹 医師
医学確認日:2026年9月24日
参考資料
- CDC:About STI Risk and Oral Sex
- CDC:Gonococcal Infections Among Adolescents and Adults
- CDC:Chlamydial Infections
- CDC:Genital Herpes
- Sexual Health Oxfordshire:STI testing windows
- NHS:Vaginal discharge
- NHS:Bacterial vaginosis
- CDC:HIV nPEP recommendations, 2025, Appendix A
- CDC:Doxy PEP Guidelines, 2024
- Chow EPF, et al.:Antiseptic mouthwash for gonorrhoea prevention(OMEGA試験), 2021
- Bachmann LH, et al.:Nucleic Acid Amplification Tests for Diagnosis of Neisseria gonorrhoeae Oropharyngeal Infections, 2009
- Harrison A, et al.:Oropharyngeal gonorrhoea infections among young heterosexual users of online sexual health services across the island of Ireland, 2025
