ドキシペップ(Doxy-PEP)は、性行為の後に抗菌薬のドキシサイクリンを飲み、一部の性感染症にかかるリスクを下げる予防法です。
性行為後できるだけ早く、72時間以内に200mgを1回服用します。当院のビブラマイシン100mg錠なら、2錠を一度に飲みます。再び性行為があり次の服用が必要なときは、前の服用から24時間以上あけ、24時間に200mgを超えないようにします。
誰にでも同じ予防効果が得られるわけではないため、使用できるかは医師と相談して決めます。また、HIVや妊娠を防ぐ薬ではなく、すでに感染している場合の治療にも置き換えられません。症状があるときは予防薬だけで済ませず、検査・治療について相談してください。[1][2]
医学確認:モイストクリニック 金谷正樹医師(プロフィール)
医学確認日:2026年10月1日
ドキシペップはいつ、何錠飲みますか?
ドキシペップは、オーラルセックス・膣性交・肛門性交など、予防が必要と医師から説明された性行為の後に使います。コンドームを使わなかった場合や、途中から外れた場合などが相談の目安です。コンドームを使った場合も含め、どのような機会に服用するかを処方時に確認してください。[4] 1回量はドキシサイクリン200mgです。100mg錠を使う場合は2錠をまとめて飲み、朝と夜に1錠ずつ分けません。同じ薬でも、感染症を治療するときの飲み方とは異なります。[1][2]
時間の数え方には、次の2つがあります。「性行為から何時間か」と「前に薬を飲んでから何時間か」を分けて確認してください。
性行為から数える
72時間以内に服用
72時間まで待つ、という意味ではありません。
前回の服用から数える
服用24時間以上あける
次の服用が必要な場合
日付が変わっても、24時間たったことにはなりません。
薬を手元に持っていない方は、性行為後の服用期限に受け取りが間に合うか、処方の案内も確認してください。
水はコップ1杯程度を十分に用意して飲み、服用後1時間は横にならないようにします。食事と一緒、または食後に飲むと、吐き気などの胃の不快感を減らせる場合があります。乳製品はCDCの案内に沿って服用の前後2時間をあけます。サプリメントや薬との間隔は、飲み合わせの項目をご確認ください。[1][3]
連日・複数回の性行為がある場合
同じ日に何度も性行為があっても、そのたびに200mgを追加することはできません。[1][4]
たとえば、月曜日の朝8時に服用した後は、次のように考えます。[4]
| その後の状況・時刻 | 次の服用 |
|---|---|
| 月曜夜に再び性行為があり、火曜朝8時になった | 前の服用から24時間たったので、次の1回を服用できます。 |
| 月曜夜に再び性行為があり、火曜の午前0時になった | 服用からは16時間しかたっていないため、まだ追加しません。 |
| 服用後、新たな性行為がない | 時間がたったという理由だけで、次の1回を追加しません。 |
性行為が連日ある場合には連日使うこともありますが、性行為がなかった日まで自動的に飲み続ける方法ではありません。頻繁に使う方は、服用回数と日時を記録し、処方時に検査や継続の必要性も相談しましょう。性行為にかかわらず毎日飲む「Doxy-PrEP」とは区別してください。[1][4]

飲み忘れ・72時間超過・嘔吐のとき
飲み忘れに気づいた時点で性行為から72時間以内であれば、前回の服用からの間隔を確認したうえで、できるだけ早く服用します。埋め合わせのために2回分をまとめて飲まないでください。[1]
72時間を過ぎた場合は、推奨される服用期限を外れます。遅れて飲めば予防できると考えず、性行為の日時を伝えて、検査の時期や必要な対応を医療機関に相談してください。「72時間を過ぎた瞬間に薬の作用がなくなる」という意味ではありませんが、期限を延ばした使い方の効果は確立していません。[1][2]
飲んだ後に吐いた場合も、吸収された量を自分では判断できません。服用から嘔吐までの時間を処方医・薬剤師に伝え、飲み直すか確認してください。自己判断で追加することは避けましょう。
食べ物・薬との飲み合わせ
薬やサプリメントによっては、ドキシサイクリンの吸収や作用に影響することがあります。お薬手帳に加え、市販薬・サプリメントの名前も処方時にお伝えください。[2][3]
| 一緒に使うもの | 確認すること |
|---|---|
| 牛乳・ヨーグルトなどの乳製品 | CDCのDoxy-PEPの案内では、服用の前後2時間はあけるよう勧めています。 |
| 制酸薬、鉄・カルシウム・マグネシウムを含む薬やサプリメント | 同時に飲まず、少なくとも2時間あけることが目安です。処方薬は自己判断で中止せず、服用時刻を相談してください。 |
| ワルファリン、一部の抗てんかん薬・糖尿病薬など | 間隔をあけるだけで対応できるとは限りません。薬名を伝え、併用の可否や管理方法を確認します。 |
国内のビブラマイシンの添付文書では、食事と一緒に服用でき、ミルクによって吸収が妨げられないと記載されています。一方、上表の乳製品との間隔は、Doxy-PEPとして使う場合のCDCの服用指導に沿ったものです。[1][3]
低用量ピルを飲んでいる場合
国内の添付文書には、経口避妊薬の効果を弱めるおそれがあると記載されています。低用量ピルを使用している方は、製品名を伝え、併用中の避妊方法も医師・薬剤師に確認してください。[3]
ドキシペップ自体に避妊効果はありません。妊娠の可能性がある場合や、緊急避妊を必要としている場合は、そのことも別に伝えてください。
HIV予防薬のPrEPと併用できますか?
HIVを予防するPrEPと、ドキシペップは併用できます。Doxy-PEPの臨床試験にはHIV PrEPを使用している人も参加しており、CDCもHIV予防と組み合わせた対応を示しています。[2]
ただし、2つの薬の飲み方は共通ではありません。PrEPは処方されたPrEPのスケジュールを守り、ドキシペップは性行為後に使用します。どちらかを飲めば、もう一方も不要になるわけではありません。使用中のPrEPの製品名と飲み方を診察時に伝え、同じ時間帯に飲んでよいかも確認してください。
HIVへの感染が心配な性行為がすでにあった場合は、ドキシペップでHIVを予防しようとせず、HIVの曝露後予防(PEP)について速やかに医療機関へ相談してください。日頃の予防については、HIV PrEPの案内をご覧ください。
何を予防でき、どのような人が使えますか?
ドキシサイクリンは、細菌が増殖するためのタンパク質合成を妨げる抗菌薬です。性行為後に服用するDoxy-PEPでは、梅毒・クラミジア・淋菌感染症の発生を減らせるかが研究されています。[2][3]
CDCの2024年ガイドラインがまとめた3つのランダム化比較試験では、梅毒とクラミジアは70%超、淋菌感染症は約50%のリスク低下が報告されました。主に男性と性交渉をもつ男性(MSM)やトランスジェンダー女性を対象とした結果で、研究によって効果には差があります。[2]
これは、予防薬を使わない場合と比べて感染の発生がどれだけ少なくなったかを示す数字です。「飲んだ人の7割だけが守られる」「自分の感染確率が必ず7割下がる」という意味ではありません。淋菌では薬剤耐性の影響もあり、効果を一律に見込むことはできません。[2]
HIV・ヘルペス・HPVなどのウイルス感染症は予防できません。また、マイコプラズマなどを含め、すべての細菌性の性感染症を予防できる方法としても確立していません。コンドームなどの予防策も続け、感染機会に応じた検査を組み合わせます。[1][2]
CDCは、過去12か月に梅毒・クラミジア・淋菌感染症の既往があるMSMとトランスジェンダー女性を、利益とリスクを話し合う主な対象としています。WHOも2026年に初めてDoxy-PEPのガイドラインを公表しました。こうした推奨の対象と限界を踏まえて、自分に合う予防法を相談することが大切です。[2][5]
なお、当院で用いるビブラマイシンは国内で承認された薬ですが、性感染症の予防を目的とするDoxy-PEPは国内では適応外使用で、自由診療となります。[3]
女性も相談できますか?
当院では、性別や職業だけで一律に対象外とせず、感染機会、既往歴、服用リスクなどを医師が確認して判断します。
ただし、研究で効果が確認された対象と、相談できる方の範囲は同じではありません。シスジェンダー女性を対象にした試験では明確な予防効果を示せず、服薬の継続状況などの課題もありました。女性にも同じ数値の効果が得られるとは言えず、反対に「女性には全く効かない」と断定することもできません。[2]
副作用と、服用前に確認したいこと
吐き気・嘔吐・腹痛・下痢などが起こることがあります。基本の飲み方で案内した、水の量と服用後の姿勢に気をつけるのは、食道への刺激や食道炎・食道潰瘍のリスクを減らすためです。食後に飲めば副作用が必ず防げる、というわけではありません。[1][3]
日光に敏感になる光線過敏症もあるため、服用中は日焼け止めや衣服で日差しを避けてください。副作用が何日で治まるかは症状や体調によって異なります。つらい症状や長引く症状がある場合は、次の服用前に処方医へ相談してください。[1][3]
息苦しさや顔・喉の腫れなどが出た場合は、追加で服用せず、直ちに救急受診してください。広範囲の発疹、水ぶくれ、発熱を伴う皮膚症状、血の混じる下痢や強い腹痛も、速やかな診察が必要です。[3]
アレルギー・妊娠・授乳・持病がある方
ドキシサイクリンや同じテトラサイクリン系の薬でアレルギーを起こしたことがある方は使用できません。妊娠中・妊娠の可能性がある方、授乳中の方、肝機能障害がある方、飲み込みに問題がある方も、予防目的で自己判断で服用せず、事前に相談してください。[3]
ニキビなど別の病気でドキシサイクリンを使っている方は、その薬にドキシペップを追加しないでください。現在の用量・服用期間を医師が確認する必要があります。他の人に処方された薬や、以前の治療で余った薬を流用することも避けましょう。[1]
耐性菌が心配な場合
抗菌薬の使用は、薬が効きにくい細菌(耐性菌)が増えることに関係します。Doxy-PEPを長期に続けたときの耐性菌や腸内細菌への影響には、まだ分かっていない点があります。「定期検査を受けていれば、耐性の心配はなくなる」とは言えません。[1][2]
そのため、必要以上に回数を増やさず、診察の際に使用回数、副作用、感染機会の変化を伝え、続ける利益があるかを見直します。
飲んだ後も性感染症の検査は必要ですか?
ドキシペップで感染を完全に防ぐことはできず、感染しても症状が出ない場合があります。当院では、開始前の性感染症検査と、継続使用中は3か月ごとの定期検査を推奨しています。開始前の検査を全員に一律で必須とするのではなく、症状や最近の検査歴などを踏まえて医師が判断します。
検査する部位も大切です。たとえば、オーラルセックスによるのどの感染は、尿検査だけでは調べられません。性器・のど・直腸など、接触があった部位と、梅毒・HIVなどの血液検査を合わせて検討します。[2]
症状がある場合や、パートナーの性感染症が分かった場合は、3か月後の定期検査を待たずに相談してください。ドキシペップの1回分の服用は、感染後の治療に必要な薬・量・期間の代わりにはなりません。[1][2]
診察では、性行為の日時・接触した部位とともに、ドキシペップを飲んだ日時と量をお伝えください。感染機会からの経過や服用歴に応じて、検査の時期と結果の見方を医師が判断します。検査費用は、性感染症の料金表で確認できます。
ドキシペップの料金とオンライン処方
モイストクリニックでは、初診からオンライン診療で相談でき、医師が処方可能と判断した場合は、郵送または来院で薬を受け取れます。診察内容や検査の必要性によっては、対面受診をご案内することがあります。
診察料・薬代と、送料を含めた総額
以下は税込・自由診療の料金です。薬代には診察料を含み、郵送の場合は送料400円がかかります。検査や、感染が分かった場合の治療費は別途です。
| 処方量 | 料金(税込) |
|---|---|
| 1回分(100mg錠×2錠) | 診察・薬代 1,750円 郵送の場合:合計2,150円 |
| 5回分(100mg錠×10錠) | 診察・薬代 7,000円 郵送の場合:合計7,400円 |
5回分セットの薬代は、1回あたり1,400円です。1回分だけ処方する場合の料金とは異なります。処方量は、使用予定や医師の判断により決めます。
通販で購入するのではなく、診察を受けて処方へ
ドキシペップに使う薬は処方箋医薬品です。オンラインでも、医師の診察を受けて処方される流れになります。相談時には、最後の性行為の日時、症状、使用中の薬、薬のアレルギー、最近の検査歴をお伝えください。[3]
すでに性行為の後で急いでいる場合、郵送では72時間以内の服用に間に合わない可能性があります。診療・受け取りの方法を早めに確認してください。今後の使用を考えている方は、必要なときに薬を手元に用意できるよう、事前の診察で処方について相談できます。
処方の詳しい案内は、ドキシペップの診療ページをご覧ください。
医師紹介

金谷 正樹 医師
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療。日本性感染症学会の会員として活動しています。
参考資料
- CDC — Preventing STIs with Doxy PEP(2026年8月更新)
- CDC — Doxycycline Postexposure Prophylaxis for Bacterial STI Prevention:Clinical Guidelines(2024)
- PMDA — ビブラマイシン錠50mg/100mg 添付文書(2024年3月改訂)
- San Francisco City Clinic — About Doxy-PEP(2024年9月、服用後に再び性行為があった場合の説明)
- WHO — Doxycycline post-exposure prophylaxis for sexually transmitted infections(2026年7月、ガイドライン紹介ページ)
参考資料の最終確認日:2026年10月1日。
