監修:金谷正樹 医師|医学確認日:2026年9月22日
咽頭クラミジアは、のどに痛みや違和感がなくても感染していることがあります。症状の有無だけでは判断できません。パートナーが陽性だった、自分の口が相手の性器に触れる接触があったなど、感染の可能性が考えられるときは、のどの検査が必要かを医師へ相談しましょう。[1][2]
「のどが普通なら大丈夫」「尿検査が陰性だったから、のども陰性」とは限りません。一方、無症状の方全員が、一律に咽頭検査を受けなければならないわけでもありません。この記事では、症状がないときに何を手掛かりに判断するか、検査や結果が出た後の対応について説明します。
息苦しい、唾液も飲み込めない、のどの症状が急激に悪化している場合は、性感染症の検査日を待たず救急受診を優先してください。のどの強い症状には、クラミジア以外の原因もあります。[4]
痛みがなくても、咽頭クラミジアの可能性はありますか?
はい。厚生労働省は、クラミジアがのどに感染した場合は通常無症状と説明しています。体調がよいことと、感染していないことは別です。[1]
咽頭クラミジアは、クラミジア・トラコマティスという細菌がのどの粘膜に感染した状態です。性器に感染するクラミジアと同じ菌ですが、検査する場所は異なります。痛みが出るまで待つと、症状のない感染に気付く機会を逃してしまいます。
オランダの性感染症外来を受診した女性を対象とした研究では、咽頭クラミジア陽性例の全て(100%)で、のどの痛みが報告されていませんでした。この結果は「のどの痛み」について調べたもので、あらゆる症状がないという意味ではありません。[6]
当院でも、症状がない状態で検査を受け、咽頭クラミジアが陽性と判明したケースがあります。
のどがイガイガする、赤い、飲み込むと痛いといった症状があっても、それだけでクラミジアとは判断できません。風邪などのウイルス感染や、ほかの原因による咽頭炎でも似た症状が出ます。写真や鏡で見た赤みだけを根拠に、感染の有無を決めないことが大切です。[1][4]
無症状なら、相手にはうつしませんか?
無症状でも、性的接触を通じて相手へ感染させる可能性があります。咽頭クラミジアは、オーラルセックスで相手の性器へ感染することがあるため、陽性が確認された場合は症状がなくても治療します。[2]
症状がないことは、感染時期の手掛かりにもなりません。検査結果だけで「最近の行為が原因」「この相手からうつった」とまでは特定できません。

症状がないときは、どんな場合に検査を考えますか?
パートナーの検査結果、接触した部位、最後の接触日を手掛かりにします。「症状がないから不要」と決めず、実際にあった接触を医師へ伝えてください。
| 今の状況 | 相談するときのポイント |
|---|---|
| パートナーがクラミジア陽性 | 相手の陽性部位と、オーラルセックスなどの接触内容を伝えます。自分に症状がなくても評価の対象になります。 |
| 自分の口が相手の性器に触れた | のどが感染部位になり得ます。コンドームなどの使用状況、相手の感染情報、接触日を伝え、咽頭検査を検討します。 |
| 自分の性器検査だけ受けた | のども検査済みか、結果票の検体名を確かめます。性器の陰性結果だけで、咽頭感染を否定することはできません。 |
| 軽いキスだけで、ほかの接触はない | 軽いキスでのクラミジア感染リスクは低いと考えられます。キスだけを理由に、全員へ咽頭検査を勧めるわけではありません。 |
接触があったことは、感染が確定したという意味ではありません。米国CDCは、無症状の人に対する咽頭クラミジアの一律のスクリーニングを推奨していません。のどの感染が健康へ与える影響や、広く検査する利益には、まだ分からない部分があるためです。個々の感染機会や相手の陽性結果に応じた検査の相談と、一律の検査推奨は分けて考えます。[2]
キスの種類による違いや治療中の接触については、クラミジア治療中のキスで詳しく説明しています。パートナーが陽性だった場合の伝え方や受診は、パートナーのクラミジアと治療中の対応をご覧ください。
尿検査が陰性なら、のどの検査は不要ですか?
性器とのどの両方に感染することも、一方だけに感染することもあります。「性病検査を受けた」という記憶だけでは、のどまで調べたかは分かりません。結果票に「咽頭」「うがい液」「咽頭ぬぐい液」などの記載があるかを確認し、分からなければ検査した医療機関へ問い合わせてください。
検査では、のどをぬぐった検体や、検査方法に応じたうがい液などを使い、菌の遺伝子を調べます。PCR法などの核酸増幅検査が用いられます。採取方法や飲食・うがいに関する事前の注意は、受ける検査の案内に従ってください。[1][3][5]
咽頭淋菌も症状がないことがあり、クラミジアとは治療が異なります。接触内容に応じて同時検査を検討しますが、クラミジアが陽性だから淋菌も陽性と決まるわけではありません。違いは咽頭淋菌の症状・検査でも解説しています。
接触から何日後に検査を受ければよいですか?
感染機会の直後は、検査で捉えられない場合があります。初回検査は最後の接触から約2週間が一つの目安です。ただし、パートナーが陽性だった場合や症状がある場合は、2週間たつまで相談を待つ必要はありません。[3]
接触後2週間以内に受けた検査が陰性だった場合は、接触から2週間以降の再検査が必要かを確認します。これは早期の見逃しを考えるための再検査で、治療後の陰性確認とは目的が違います。詳しくはクラミジア検査を受ける時期にまとめています。
すでに抗菌薬を飲んでいる方は、薬の名前と服薬日を伝えてください。検査を受けるために、自己判断で薬を中断しないでください。
無症状でも、陽性なら治療が必要ですか?
咽頭クラミジアが陽性と確認された場合は、症状がなくても治療の対象です。一律に検査するかどうかの判断と、検査で見つかった感染を治療するかどうかは別の話です。[2]
当院では、クラミジア単独感染にジスロマックを第一選択としています。実際の薬は感染部位、ほかの感染症の有無、妊娠の可能性、服薬歴などを踏まえて医師が判断します。海外の指針で推奨される薬や服用日数を、そのまま当院の処方へ当てはめることはできません。
症状がないと、飲み忘れたり途中でやめたりしても問題ないように感じるかもしれませんが、服薬は処方どおりに続けます。うがい薬やトローチは、クラミジアの治療薬の代わりにはなりません。薬剤の違いや副作用は、クラミジアの治療薬で説明しています。
自然に陰性になるなら、待っていてもよいですか?
研究では、治療前に咽頭クラミジアの検査が自然に陰性になる例も報告されています。ただし、誰がいつ陰性になるかを症状から予測することはできず、陽性と分かった感染を治療せずに待つことは勧められません。[2][3]
一方で、のどの感染が、そのまま卵管へ広がって不妊になると説明するのは不正確です。不妊などの合併症は、主に性器クラミジアによる子宮や卵管の炎症と関連する問題です。のどの感染とは区別して考えます。のどの感染について、性器の合併症をそのまま当てはめて怖がる必要はありません。[2][3]
自然経過と放置した場合の考え方は、咽頭クラミジアを放置するとどうなるかをご覧ください。
治療が終わったら、何を確認しますか?
無症状だった方は、体調の変化で治ったかを判断できません。処方された薬を飲み終えたか、再び感染する接触がなかったか、必要な再検査の時期はいつかを確認します。
当院の陰性確認は服薬終了後1〜2週間から受け付け、2〜3週間後を推奨しています。一方、CDCは治療終了後4週間未満の核酸増幅検査では、死滅した菌の遺伝子が残り、陽性になる場合があると注意しています。早い時期の陽性を、直ちに治療失敗や再感染と決めつけることはできません。検査日と結果を医師に確認し、治療後の再検査の案内に沿って進めてください。[2]
オーラルセックスを含む性行為の再開は、本人とパートナーの治療状況を合わせて判断します。一般的には単回服用の治療なら服用後7日間、7日間の治療なら全ての服用を終えるまで控え、症状がある場合は改善も必要です。パートナーも必要な治療と再開条件を満たすことが大切です。実際の処方と担当医の指示を優先してください。[2]
再開後はオーラルセックスでもコンドームなどのバリアを使うことが予防につながります。予防目的の抗菌薬は、すでに見つかった感染の治療に代わるものではありません。残り薬で自己判断の予防や治療をしないでください。[1]
当院の検査費用と、受診時に伝えること
当院の性感染症診療は自由診療です。以下は1人・咽頭1部位の税込料金です。性器の検査や治療薬は別途費用がかかります。
| 検査 | 料金(税込) |
|---|---|
| 咽頭クラミジア検査 | 4,500円 |
| 咽頭の淋菌・クラミジアセット | 6,500円 |
| クラミジア治療後の陰性確認 | 4,500円 |
| 即日検査の追加料金(1項目) | +4,000円 |
通常検査の結果は標準2日です。検査処理日は月〜土曜日で、検体の状況などにより前後1日程度変わることがあります。即日検査は1項目ごとの加算で、クラミジア1項目なら合計8,500円、淋菌とクラミジアの2項目なら合計14,500円です。
受診時は、最後の接触日、口や性器など接触した部位、パートナーの検査結果、すでに受けた検査や飲んでいる薬をお伝えください。症状がなくても相談できます。必要な検査は診察で判断しますので、すべての検査を自分で選んでから来院する必要はありません。その他の費用は性感染症の料金表をご覧ください。
監修医師

金谷 正樹 医師
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療。日本性感染症学会の会員として活動しています。
参考資料
- 厚生労働省 — オーラルセックスによる性感染症に関するQ&A
- CDC — Chlamydial Infections(STI Treatment Guidelines, 2021)
- BASHH — クラミジア感染症の診療ガイドライン(2026)
参考資料の最終確認日:2026年9月22日。検査・治療は症状や診察結果に応じて判断します。
