性病は無症状でも検査が必要?潜伏期間とリスクを性感染症医師が解説|恵比寿モイストクリニック

性感染症(STI)は、痛みや膿が出るとは限りません。むしろ、「感染者の多くが無症状のまま進行する」ことが、近年の疫学調査で明らかになっています。

クラミジア感染症では女性の約7割・男性の約5割が自覚症状を持ちません。
「症状がないから安全」とは言えず、放置すると不妊症やHIV感染リスクの上昇、パートナーへの感染拡大につながります。

本ページでは、日本性感染症学会および米国CDCの最新ガイドラインに基づき、無症状で経過しやすい主要な性感染症について、リスクと正しい検査時期を解説します。

【早見表】無症状で進行する性病と検査目安
クラミジア・淋菌 無症状率:高 (50〜80%)
特にのど・女性は気づきにくい。
検査:行為から2〜3週間後
梅毒 症状が消える「潜伏期」あり
しこりや発疹が自然に消えるため治ったと勘違いしやすい。
検査:行為から4週間後〜
HIV(エイズ) 数年〜10年以上 無症状
初期症状を見逃すと、エイズ発症まで無自覚なまま進行する。
検査:行為から1ヶ月後〜
マイコプラズマ 無症状率:極めて高い
「第3の性病」として急増中。通常の検査では見つからない。
検査:行為から2〜3週間後
性器ヘルペス 感染者の80%は自覚なし
症状が軽微すぎて気づいていない「隠れ感染」が非常に多い。
検査:水疱などの症状出現時

クラミジア感染症 Chlamydia trachomatis

1. 疾患概要と無症状の頻度

クラミジア・トラコマティスによる感染症で、日本で最も患者数が多い性感染症(STD)です。
10代〜20代の若年層を中心に蔓延しており、最大の特徴は「感染しても症状が出にくい(ステルス性が高い)」点にあります。

女性の無症状率
70〜80%
男性の無症状率
約50%
咽頭(のど)感染の場合、約90%が無症状

潜伏期間は約1〜3週間ですが、この無症候期にパートナーへ感染させてしまうケースが多発しています。 コンドーム無しの性行為では、1回で約50%の確率で感染すると言われるほど感染力が強い細菌です。

2. 放置した場合の重篤なリスク

「痛くないから」と放置すると、菌は体の奥へと侵入(上行感染)し、取り返しのつかないダメージを残すことがあります。

女性:不妊症・PID
  • 骨盤内炎症性疾患(PID):子宮や卵管へ炎症が広がる。
  • 不妊症:卵管が癒着・閉塞し、自然妊娠が難しくなる(未治療の約20%が不妊に至るとの報告あり)。
  • 子宮外妊娠:卵管妊娠などのリスク増。
  • 母子感染:新生児結膜炎や肺炎の原因に。
男性:精巣上体炎
  • 精巣上体炎:炎症が精巣へ達し、激痛や腫れを起こす。
  • 男性不妊:精管が損傷し、精子の通過障害を起こす原因となる。
  • HIVリスク増:粘膜炎症により、HIV感染率が3〜5倍に高まる。

3. 推奨される検査時期と方法

潜伏期間 1〜3週間(目安)
推奨検査時期 行為から2週間後〜
※高感度NAAT検査であっても、確実性を高めるためには2週間経過後の検査を推奨しています。
検査方法 核酸増幅法(NAAT / PCR法)
男性:尿検査(初尿)
女性:腟ぬぐい液(自己採取可)
のど:咽頭ぬぐい液(綿棒による採取)

4. 最新の診断・治療ガイドライン

🌍 当院の治療方針

日本性感染症学会のガイドラインに基づき、患者様の負担と確実性を考慮した治療薬を選定しています。

  • アジスロマイシン(ジスロマック等):当院の第一選択
    「1回飲むだけで治療が完了する」単回投与薬です。
    飲み忘れのリスクがなく、患者様の負担が少ないため、当院では基本的にこちらを処方いたします。妊婦の方への安全性も確立されています。
  • ドキシサイクリン(ビブラマイシン等)
    1日2回・7日間の内服が必要です。
    近年、咽頭感染や難治例に対する有効性が再評価されており、アジスロマイシンで改善が見られない場合などに選択します。

5. 予防とパートナー対策

クラミジアは再感染(ピンポン感染)が非常に多い疾患です。
「無症状でも、二人で一緒に検査・治療する」ことが、完治への最短ルートです。
治療後3〜4週間に治癒確認検査(Test of Cure)を受けることを推奨します。

淋菌感染症(淋病) Neisseria gonorrhoeae

1. 疾患概要と「無症状化」する淋病

淋菌(Neisseria gonorrhoeae)による感染症で、1回の性行為による感染率が約30〜50%と非常に感染力が強いのが特徴です。
かつては「男性は激痛が出る」のが典型的とされてきましたが、近年は様子が変わってきています。

女性の無症状率
約80%
男性の無症状率
約50% ※近年、軽症・無症状例が増加
咽頭(のど)・直腸感染はほぼ無症状(90%以上)

「膿(うみ)が出ないから大丈夫」という自己判断は危険です。
特にオーラルセックスによる咽頭感染が拡大しており、自覚症状がないまま「キャリア(保菌者)」となっているケースが急増しています。

2. 放置した場合の重篤なリスク

淋菌は進行が早く、組織への侵襲性(ダメージ)が強いため、放置すると不妊などの後遺症リスクがクラミジア以上に高まります。

女性:PID・重症化
  • 骨盤内炎症性疾患(PID):クラミジアより炎症が強く、緊急入院が必要になることもあります。
  • 卵管閉塞・不妊:上行感染により卵管が詰まり、不妊の直接的な原因となります。
  • 新生児感染:出産時に産道感染し、赤ちゃんの失明(淋菌性結膜炎)の原因となります。
男性:不妊・炎症拡大
  • 精巣上体炎:尿道から精巣へ菌が回り、精巣機能にダメージを与え、男性不妊の原因となります。
  • 前立腺炎:慢性化すると治療が難しく、排尿障害などが長く続くことがあります。
  • スーパー淋菌化:中途半端な治療で放置すると、耐性菌を生む温床となります。

3. 推奨される検査時期と方法

潜伏期間 2〜7日(比較的短い)
推奨検査時期 行為から1〜2週間後〜
※症状(膿や痛み)がある場合は即日検査可能です。無症状の場合は、1週間以上空けてからの検査を推奨します。
検査方法 核酸増幅法(NAAT / PCR法)
淋菌とクラミジアの同時検査が一般的です。
男性:尿検査(初尿)
女性:腟ぬぐい液
のど:咽頭ぬぐい液

4. 最新の診断・治療ガイドライン

💉 治療は「点滴(注射)」が世界標準です

淋菌は世界的に「薬剤耐性(薬が効かない菌)」が深刻化しており、飲み薬だけでは治らないケースが増えています。
そのため、日本および世界のガイドラインでは「点滴静注」が第一選択とされています。

  • セフトリアキソン(ロセフィン等)点滴静注
    当院の標準治療です。
    1回の点滴(または静脈注射)で、高濃度の薬剤を全身に行き渡らせ、確実に菌を死滅させます。
    ※経口薬(飲み薬)は耐性の問題から、現在は推奨されていません。
  • スペクチノマイシン(トロビシン)筋注
    セフトリアキソンにアレルギーがある場合などに代替使用されますが、咽頭淋菌には効果が劣るため注意が必要です。

※淋菌患者の約20〜30%はクラミジアも併発しているため、同時にクラミジア治療(アジスロマイシン等)を行うことが推奨されています。

5. 予防とパートナー対策

淋菌は感染力が強く、一回の接触で容易にうつります。
「症状がない=治った」ではありません。中途半端な自己判断は、耐性菌(スーパー淋菌)を生み出すリスクがあります。

必ず医療機関で「点滴治療」を受け、治療後の再検査(Test of Cure)で陰性を確認するまで性行為は控えてください。
パートナーも同時に検査・治療を受けなければ、完治は望めません。

梅毒 Syphilis (Treponema pallidum)

1. 疾患概要:現代の「隠れた大流行」

梅毒トレポネーマによる全身性の感染症です。
「昔の病気」と思われがちですが、現在日本(特に東京)で20代女性を中心に爆発的に増加しており、社会問題となっています。

梅毒の最大の特徴は、「症状が出たり消えたりしながら、静かに進行する」点です。
痛みがなく、症状が自然に消えてしまうため、「治った」と勘違いして放置し、無症状のままパートナーへ感染させてしまうケース(潜伏梅毒)が後を絶ちません。

2. なぜ気づかない?「消える症状」の罠

第1期:初期硬結・潰瘍 感染から約3週間〜
感染部位(性器、口、肛門など)に小豆大のしこりや潰瘍ができます。
痛みがないことが多く、数週間で治療しなくても自然に消失します。
第2期:バラ疹(全身発疹) 感染から約3ヶ月〜
全身(手のひら、足の裏含む)に赤い発疹が出ます。
これも痒みがないことが多く、数ヶ月で再び自然に消失します。
潜伏梅毒(無症状期) 数年〜数十年
最も危険な期間です。
見た目は健康そのものですが、体内で菌が増殖し続けています。
この期間も他者への感染力を持つ場合があり(早期潜伏梅毒)、知らぬ間に感染源となります。
晩期顕性梅毒 10年後〜
心臓血管梅毒、神経梅毒(認知症様症状、麻痺)など、生命に関わる重大な臓器障害を引き起こします。

3. 推奨される検査時期と方法

梅毒は血液検査で発見できますが、感染直後は反応が出ない「ウィンドウ期」があります。

推奨検査時期 行為から4週間後〜
※4週目で陰性でも、確実性を期すために3ヶ月後(12週後)に再検査をして陰性確認(念押し)をすることが推奨されます。
検査内容 血液検査(RPR法 + TP抗体法)
現在は、この2つを組み合わせることで「現在の感染」か「過去の既往」かを正確に診断します。

⚠ 妊婦の方へ: 梅毒に感染すると、胎盤を通じて胎児に感染し「先天梅毒(奇形や死産)」の原因となります。妊娠初期と後期のスクリーニングは必須です。

4. 最新の治療:注射が世界標準へ

💉 ベンザチンペニシリン筋注(ステルス®)

長らく日本では内服薬のみでしたが、2021年より世界標準薬である「持続性ペニシリン製剤の筋肉注射」が承認され、ガイドラインでも第一選択となりました。

治療法 特徴・メリット
筋肉注射
(単回〜3回)
【現在の標準・推奨】
早期梅毒なら1回打つだけで治療完了します。
飲み忘れがなく、血中濃度が長く維持されるため確実な治療が可能です。
内服薬
(アモキシシリン等)
【従来の治療・代替案】
1日3回 × 4週間(28日間)以上の内服が必要です。
注射が苦手な方やアレルギーがある場合に選択されますが、長期服用によるドロップアウト(飲み忘れ)リスクがあります。
※ヤーリッシュ・ヘルクスハイマー反応について
治療開始後数時間〜24時間以内に、一時的な発熱・悪寒・発疹の悪化が起こることがあります。これは薬が効いて菌が破壊された時の反応であり、通常は数日で自然に治まります(副作用ではありません)。

5. 予防とパートナー対策

梅毒はコンドームのみでは完全に防げない場合があります(覆われていない皮膚や口からも感染するため)。
最も重要なのは、パートナーとの相互検査です。

もし陽性と診断された場合、現在のパートナーはもちろん、過去数ヶ月に関係を持った方への通知(パートナー通知)が、感染拡大を防ぐために強く推奨されています。
当院では、プライバシーに配慮しながら治療と再発防止をサポートします。

HIV感染症 / エイズ HIV / AIDS

1. 疾患概要:10年続く「沈黙の期間」

HIV(ヒト免疫不全ウイルス)は、免疫細胞(CD4陽性T細胞)を徐々に破壊し、最終的に「エイズ(AIDS:後天性免疫不全症候群)」を発症させるウイルスです。
最も恐ろしいのは、感染してからエイズを発症するまでの平均5〜10年もの間、自覚症状がほとんどない(無症候性キャリア期)ことです。

① 感染急性期 感染から2〜4週間
発熱、喉の痛み、発疹などインフルエンザに似た症状が出ることがありますが、数日で治まるため「ただの風邪」と見過ごされがちです。
② 無症候性キャリア期 5年〜10年以上
自覚症状は全くありません。
しかし、体内ではウイルスが増殖し続け、免疫システム(CD4細胞)を静かに破壊し続けています。
この期間に検査を受けない限り、感染に気づくことは不可能です。
③ エイズ発症期
免疫力が限界まで低下し、健康な人なら感染しない弱い菌やカビによる肺炎(カリニ肺炎など)や悪性腫瘍を発症します。生命の危険がある状態です。
⚠ 「いきなりエイズ」の問題
日本では、HIV感染者の約30%が、無症状期に気づかず、エイズを発症して搬送されて初めて感染を知る「いきなりエイズ」です。
これを防ぐ手段は、症状がないうちの検査(スクリーニング)しかありません。

2. 推奨される検査時期と方法

現在の標準検査は、ウイルスの「抗原」と「抗体」を同時に調べる第4世代検査(コンボ検査)です。

推奨検査時期 行為から1ヶ月後(4週間後)〜
※即日検査(第4世代)で高い精度が出ますが、万全を期すため3ヶ月後(12週後)に最終確認を行うことが推奨されます。
検査方法 血液検査(抗原抗体同時検査)
従来より早く発見可能です。陽性の場合は、確認検査(ウェスタンブロット法・PCR法)で確定診断を行います。

3. 治療の進化:もはや「死の病」ではありません

現在はART療法(多剤併用療法)の進歩により、1日1錠の服薬でウイルスをコントロールできれば、非感染者と変わらない寿命を送ることが可能です。

Undetectable = Untransmittable

「検出限界値未満であれば、感染しない」
治療により血中のウイルス量が測定できないレベルまで下がれば、コンドーム無しの性行為でもパートナーに感染させることはないと科学的に証明されています(WHO/CDC等が支持)。

4. 新しい予防のカタチ:PrEPとPEP

コンドームに加え、お薬による医学的な予防法が普及しています。

PrEP(プレップ) 暴露「前」予防内服
感染リスクのある性行為の「前」から薬を継続して飲むことで、HIV感染リスクを極限まで(99%以上)下げる予防法です。
海外では一般的で、日本でも普及が始まっています。
PEP(ペップ) 暴露「後」予防内服
避妊具の破損など、リスクのある行為から「72時間以内」に薬を飲み始めることで、感染成立を防ぐ緊急避妊のような予防法です。
※早ければ早いほど効果があります。

マイコプラズマ・ウレアプラズマ Mycoplasma / Ureaplasma

1. 疾患概要:「第3の性病」としての脅威

マイコプラズマ・ウレアプラズマは、淋菌・クラミジアに次ぐ頻度で見つかる細菌ですが、一般の認知度が低く見逃されやすい疾患です。
最大の特徴は「細胞壁を持たない」ことです。そのため、細胞壁を壊して菌を殺す一般的な抗生物質(ペニシリン系・セフェム系)が全く効きません。

特にマイコプラズマ・ジェニタリウム(M. genitalium)は病原性が強く、治りにくい尿道炎や、女性の不妊症の原因として国際的に警戒されています。

2. 無症状率と「治療すべき菌」の区別

この細菌群は、無症状で保有している率が極めて高い一方で、中には「常在菌(健康な人にもいる菌)」に近い種類も存在します。
当院では、医学的根拠に基づき以下のようにリスクを分類しています。

菌種 病原性と治療の必要性
M. genitalium
(ジェニタリウム)
病原性:高(要治療)
明確なSTI(性感染症)です。
男性の約50%、女性の90%以上が無症状ですが、放置すると不妊やHIV感染リスクを高めるため、検出されたらパートナーと共に治療が必要です。
U. urealyticum
(ウレアリチカム)
病原性:中
男性の非淋菌性尿道炎の主要な原因の一つです。
症状がある場合や、妊活中の方は治療推奨度が高くなります。
M. hominis
U. parvum
(ホミニス / パルバム)
病原性:低(常在菌の可能性)
健康な女性の膣内にも数〜数十%の割合で存在します。
「いる=病気」とは限らないため、無症状の場合は過剰な治療を行わないのが世界のトレンドですが、症状がある場合や不妊治療中は対象となります。

3. 推奨される検査時期と方法

一般的な細菌培養検査では検出できない(育たない)ため、遺伝子検査(PCR法)が必須です。

推奨検査時期 行為から2〜3週間後〜
※クラミジアや淋菌が陰性なのに、痛みや違和感が続く場合はこの菌を疑います。
検査方法 精密PCR検査(遺伝子検査)
男性:尿検査
女性:腟ぬぐい液

4. 治療の難関:薬剤耐性菌の増加

薬が効かない「耐性菌」が増えています

特にマイコプラズマ・ジェニタリウムは、従来特効薬とされていた「アジスロマイシン(マクロライド系)」への耐性が日本でも著しく進んでいます。
安易な抗生物質の乱用は治癒を遅らせるだけです。

  • 第一選択(アジスロマイシン等が効かない場合):
    シタフロキサシン(グレースビット)やモキシフロキサシンなどの「ニューキノロン系」の薬剤を使用します。
  • 治療期間:
    クラミジアよりも長く、1週間〜2週間程度の内服が必要になるケースが多いです。自己判断で中断せず、最後まで飲み切ることが完治への鍵です。

5. 予防とパートナー対策

コンドームの使用が基本ですが、無症状での「ピンポン感染」を防ぐため、パートナーも同時に検査を受けることが重要です。
特に不妊治療中の方や、反復する尿道炎・膀胱炎にお悩みの方は、一度マイコプラズマ・ウレアプラズマの精密検査をおすすめします。

トリコモナス感染症 Trichomonas vaginalis

1. 疾患概要:細菌ではなく「原虫」の感染

トリコモナスは、肉眼では見えない微小な「原虫(寄生虫の一種)」が、性器に入り込んで炎症を起こす病気です。
性感染症の中では古くから知られていますが、現在でも中高年を含め幅広い年代で感染が見られます。

女性では「泡状の悪臭があるおりもの」や「強い痒み」が出ることが多い一方、男性は感染してもほとんど症状が出ないのが最大の特徴です。

2. 再発の主犯:「無症状の男性パートナー」

🚹 男性
ただの「運び屋」になりやすい

男性はトリコモナスに感染しても、尿と一緒に原虫が洗い流されることが多く、自覚症状が出にくい傾向があります。
しかし、原虫は前立腺などに潜んでいるため、性行為のたびに女性へうつし返し、女性の再発(ピンポン感染)の原因となります。

3. 推奨される検査時期と方法

一般的な婦人科等では「顕微鏡検査」が行われますが、感度が低く(50〜70%)、見逃されるケースが少なくありません。
そのため、当院では見逃しを防ぐために「PCR検査(遺伝子検査)」を採用しています。

推奨検査時期 行為から2週間後〜
※顕微鏡では見えない微量の感染も、PCR法であれば高感度で検出可能です。
当院の検査 PCR法(遺伝子増幅検査)
顕微鏡検査は行わず、確定診断ができるPCR検査を行います。
無症状の男性や、慢性化して菌量が減っている女性でも正確に判定できます。
※マイコプラズマとの同時PCR検査なども可能です。

4. 治療薬と重要な注意点

トリコモナス原虫には、一般的な抗生物質は効きません。
「5-ニトロイミダゾール系」と呼ばれる専用の抗原虫薬(飲み薬または膣錠)を使用します。

💊 治療薬:メトロニダゾール / チニダゾール
  • 内服薬(飲み薬):
    最も確実な治療法です。通常1週間〜10日間の服用、あるいは高用量単回投与を行います。
    男性の尿道・前立腺に潜む原虫を駆除するには、内服薬が必須です。
  • 膣錠(女性のみ):
    妊娠中の方など、内服が難しい場合に局所治療として用います。
⚠ 服用中の飲酒は厳禁です
このお薬を服用中にアルコールを摂取すると、激しい吐き気・腹痛・頭痛(アンタビュース作用)を引き起こします。
飲み終わってからも、少なくとも24〜48時間は飲酒を控えてください。

5. パートナー同時治療の絶対性

トリコモナスは、「パートナーを同時に治さない限り、終わらない病気」です。
男性パートナーに全く症状がなくても、必ず検査・治療を受けてください。

カンジダ(性行為関連) Candida albicans / Glabrata

1. 疾患概要:「性病」とは少し違います

カンジダは、カビの一種(真菌)ですが、性行為がなくても発症する「日和見感染(ひよりみかんせん)」の側面が強い疾患です。
疲れ、ストレス、抗生物質の服用、生理前後など、体調の変化で菌が増殖して症状が出ます。

「性病になった=浮気された?」と不安になる方が多いですが、必ずしも性行為が原因ではありません。

他の性感染症との決定的な違い
原因 自己感染が多い
(体内の常在菌が増える)
パートナー治療 基本不要 (症状がなければ治療しない)

2. 無症状での保有率と治療の是非

健康な女性の膣内にも、カンジダ菌は常在しています。

健康な女性の約10〜20%はカンジダを保有
無症状キャリア(保菌者)
💡 専門医の判断基準:
  • 症状がある場合:治療します(痒み、酒粕状のおりもの等)。
  • 無症状の場合:原則、治療は不要です。

カンジダは常在菌であるため、無症状の段階で薬を使っても、またすぐに戻ってきてしまいます。
クラミジア等とは異なり、「いること」自体は悪ではありません。

3. 検査と診断

特徴的なおりもの(ヨーグルト状・酒粕状)や強い痒みがあれば、臨床的に診断がつきます。
培養検査等で菌種を特定することもあります(難治性のカンジダ・グラブラータ等の場合)。

推奨検査時期 症状(痒み・おりもの異常)が出たとき
※無症状でのスクリーニング検査は、陽性でも治療対象にならないため通常行いません。

4. 治療方法とパートナーへの対応

抗真菌薬(カビのお薬)を使用します。

  • 女性: 膣錠(膣に入れるお薬)やクリーム、または内服薬(フルコナゾール等)を用います。
  • 男性: 亀頭包皮炎(赤み・痒み)がある場合のみ、クリームを塗布します。

👫 パートナーはどうする?
女性がカンジダを発症しても、男性パートナーに症状がなければ、男性の検査・治療は不要です。
これはガイドライン(CDC/日本性感染症学会)でも推奨されています。
※ただし、頻繁に再発を繰り返す場合などは、念のためパートナーチェックを行うこともあります。

性器ヘルペス Genital Herpes (HSV-1 / HSV-2)

1. 疾患概要:「隠れ感染」が非常に多いウイルス

単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染により、性器に水ぶくれや潰瘍(ただれ)ができる病気です。
一度感染するとウイルスは神経節に潜伏し、一生体内に留まります。

疫学的に最も重要な点は、感染者の約80%は「自分がヘルペス持ちだと気づいていない」ということです。
症状が軽すぎて「ただのかぶれ」だと思っていたり、全く症状が出ない(不顕性感染)ケースが大半を占めます。

2. 症状がないのにうつる「無症候性排菌」

「水ぶくれができている時だけ気をつければいい」というのは誤解です。
ヘルペスには「無症候性排菌(Shedding)」という現象があります。

⚠ 何もできていない日も、ウイルスは出ている
📅

グレー:ウイルスが出ていない日
赤:ウイルスが出ている日(症状なし)
濃赤:発症(水疱・痛みあり)

1年のうち数%〜20%程度の日数は、見た目が綺麗でも皮膚表面からウイルスが排出されています。
これが「何も症状がなかったのに、パートナーにうつしてしまった」という事例の正体です。

3. 当院の診断方針:熟練医による「視診」

ヘルペスの診断にはPCR検査などもありますが、結果が出るまでに数日かかり、その間治療が遅れてしまいます。
また、ヘルペス特有の病変は、経験豊富な医師が見れば高い精度で診断可能です。

🏥 「検査結果待ち」をさせません

当院では、性感染症に精通した医師が「視診(患部の観察)」のみで即座に診断を行います。

ヘルペスは特徴的な「小水疱の集まり」や「浅い潰瘍」を形成します。他の皮膚トラブルと見分け、その場ですぐに抗ウイルス薬を処方・治療開始できるのが最大のメリットです。
※明らかに症状がない時期の診断(無症状スクリーニング)は、視診ではできないため原則行っていません。何か「できもの」や違和感がある時にご来院ください。

4. 治療と再発予防(抑制療法)

抗ヘルペスウイルス薬(バラシクロビル等)の内服を行います。
早めに飲み始めれば、症状を軽く、短く済ませることができます。

🛡 再発抑制療法(Suppressive Therapy)

「年に6回以上」など頻繁に再発する方や、パートナーへの感染を極力防ぎたい方には、毎日1錠お薬を飲み続ける治療法があります。
これにより再発を抑えるだけでなく、上記の「無症候性排菌」を減らし、パートナーへの感染リスクを低減させる効果も期待できます。

「無症状=安心」ではありません

性病の多くは、水面下で静かに進行します。
少しでも不安な行為があったり、パートナーが変わるタイミングでは、
ご自身と大切な人のために、一度検査を受けておくことを強くおすすめします。

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よくあるご質問(無症状の方へ)
症状がまったくなくても、本当に検査が必要ですか?
はい、必要です。
本記事で解説した通り、クラミジアや淋菌、梅毒などは「無症状のまま進行する」ことが非常に多い感染症です。
「症状がない=感染していない」ではありません。特にパートナーが変わった際や、避妊なしの行為があった際は、安心材料を得るためにも検査を強くおすすめします。
どの検査セットを選べばいいか分かりません。
ご予約時にメニューが決まっていなくても大丈夫です。
来院時に医師が「いつ、どのような行為があったか」をうかがい、リスクに応じた無駄のない検査プラン(例:のどを含むか、血液検査も必要かなど)をご提案します。
パートナーも一緒に検査を受けたほうがいいですか?
強く推奨します。
性感染症はパートナー間でうつし合う(ピンポン感染)リスクが高いです。ご自身だけ治療しても、パートナーが感染していれば再び感染してしまいます。
当院はカップルでの受診も歓迎しており、お二人同時に検査・治療が可能です。
検査結果はどれくらいで分かりますか?
検査内容によりますが、即日検査であれば2時間程度で結果が出ます。
精度の高いPCR検査や培養検査の場合は、数日〜1週間程度お時間をいただき、結果はLINEまたはメール上で確認可能です(再来院不要)。
保険証を使わずに、匿名で検査できますか?
はい、可能です。
当院の性病検査・治療は「自由診療(自費)」で行っているため、保険証は不要です。会社やご家族に通知が行くことはなく、匿名で受診いただけます。