「最近、自信が持てなくなった」「途中で萎えてしまう」
ED(勃起障害)は、日本人男性の約1,400万人が悩んでいるとされる決して珍しい症状ではありません。
EDは「年齢のせい」や「恥ずかしいこと」ではなく、心血管疾患などの体のサインである場合も多く、適切な治療を行えば改善が期待できる疾患です。
本ページでは、EDの基礎知識から原因、保険診療ガイドラインに基づく標準治療、さらに再生医療などの最新アプローチまで、モイストクリニックが専門的な視点で網羅的に解説します。
1. ED(勃起障害)とは:定義と現状
ED(Erectile Dysfunction)とは、日本語で「勃起障害」または「勃起不全」と訳され、医学的には以下のように定義されています。
「性行為の際に十分な勃起が得られない、
または維持できない状態」
完全に勃起しない状態だけを指すのではありません。「たまに勃起しないことがある」「途中で萎えてしまう(中折れ)」「硬さが不十分」といった症状が、持続的または再発的に見られる場合もEDと診断されます。
日本人男性とEDの現状
EDは決して一部の人だけの問題ではありません。加齢とともに有病率は上昇しますが、ストレス社会である現代においては、若年層での発症も珍しくありません。
(2023年 日本性機能学会調査より)
中等度以上のEDに該当
EDは単なる「下半身の問題」と捉えられがちですが、実は命に関わる疾患の前兆であるケースが多く報告されています。
陰茎の血管は心臓の冠動脈よりも非常に細いため、動脈硬化の影響がいち早く現れます。
研究によると、「EDの症状は、心筋梗塞や狭心症などの心疾患発症の2〜3年前に現れる」ことが知られています。 「最近調子が悪い」と感じたら、それは身体全体の血管リスクを知らせるSOSかもしれません。放置せず、専門医へご相談ください。
2. なぜ起こるのか:原因とリスク因子
正常な勃起は、「脳が性的刺激を感じる」→「神経を通じて信号が送られる」→「陰茎の血管が拡がり血液が流れ込む」という一連の流れで起こります。この経路のどこかに障害が起きるとEDが発症します。
原因は大きく以下の3つに分類されます。
(身体的原因)
血管や神経、ホルモンなど身体の機能自体に問題があるタイプです。加齢による血管の老化や、生活習慣病による動脈硬化が主な原因です。50代以降に多く見られますが、若年でも糖尿病などが原因となる場合があります。
(精神的原因)
身体機能は正常でも、精神的なストレスやプレッシャーにより神経伝達がうまくいかないタイプです。「失敗したらどうしよう」という不安や、うつ症状、パートナーとの関係性が影響します。20〜30代の若年層にも多く見られます。
(複合的原因)
器質性と心因性の両方が混ざったタイプです。最も多いパターンの一つで、例えば「糖尿病で血管が弱っている(器質性)」ところに、「自信喪失による不安(心因性)」が加わり、症状が悪化するケースです。
具体的なリスク因子
特に以下の要因は、血管内皮機能や神経伝達を阻害し、EDのリスクを直接的に高めることが医学的に明らかになっています。
動脈硬化を進行させ、陰茎海綿体への血流を低下させます。特に糖尿病は神経障害も併発するためED発症リスクが高く、一般男性に比べて約3倍なりやすいとされています。
治療薬の影響でEDが起こることもあります。降圧薬(特に利尿剤やβ遮断薬の一部)、抗うつ薬、前立腺肥大症治療薬(5α還元酵素阻害薬)などが知られています。
※自己判断での断薬は危険ですので、必ず医師にご相談ください。
前立腺がんや膀胱がんの手術、交通事故などによる骨盤骨折で、勃起に関わる神経や血管が損傷されると重度のEDになることがあります。
加齢やストレスにより男性ホルモン(テストステロン)が急激に低下すると、性欲の減退とともに勃起機能も低下します。
喫煙は血管を収縮させ、肥満はテストステロンを低下させます。これらは「改善可能なリスク因子」であり、禁煙や減量に取り組むだけでEDが改善するケースも多く報告されています。
3. 診断と検査:クリニックでの流れ
EDの診断において最も重要なのは、画像検査よりも「問診」です。
患者様がリラックスしてお話しできるよう、プライバシーに配慮した個室で、専門医が丁寧にお話を伺います。
「いつ頃から症状があるか」「朝立ち(夜間陰茎勃起)はあるか」「服用中の薬はあるか」などを確認します。特に早朝勃起の有無は、心因性か器質性かを見極める重要な判断材料となります。
世界共通の診断基準である「国際勃起機能スコア(IIEF-5)」という5項目の問診票を用いて、EDの重症度を数値化(客観化)します。
必要に応じて、陰茎の形状(弯曲やしこりがないか)や精巣の状態を確認します。これはペロニー病などの器質的異常や、男性ホルモン低下の兆候を見逃さないための短時間の診察です。
EDの背後に隠れた病気を見つけるため、採血を行います。主に以下の項目をチェックし、根本治療の方針を立てます。
| 血糖・HbA1c | 糖尿病の有無を調べます。糖尿病はEDの主要な原因です。 |
|---|---|
| 脂質・尿酸 | コレステロールや中性脂肪を測定し、動脈硬化のリスクを評価します。 |
| テストステロン | 男性ホルモン値(遊離テストステロン等)を測定し、LOH症候群(男性更年期)によるEDでないかを鑑別します。 |
| PSA | 50歳以上の方など、必要に応じて前立腺がんの腫瘍マーカーも確認します。 |
※高度な専門検査について:
一般的なED治療では上記で十分ですが、治療抵抗性の場合や手術を検討する場合には、陰茎海綿体への血流を可視化する「超音波ドップラー検査」や、夜間の勃起を測定する「NPTテスト」を行うこともあります。
「スピード」と「プライバシー」を優先し、
必要なチェックのみに絞っています
上記はあくまで精密検査のガイドラインです。当院は自由診療クリニックとして、患者様の「早く薬が欲しい」「恥ずかしい検査は避けたい」というニーズに合わせ、実際の診療は以下のように簡略化しています。
-
ズボンを脱ぐ診察(視診・触診)は原則行いません。
※ご希望の方のみ対応いたします。 -
既往歴と服用薬(飲み合わせ)の確認が中心です。
安全性が確認できれば、採血なしで当日の処方が可能です。 - もちろん、原因をしっかり調べたい方には「採血」や「IIEF測定」も対応可能です。
4. 治療法:ガイドラインに基づく標準治療
当院では、『ED診療ガイドライン(第3版)』および最新の医学的知見に基づいた標準治療を提供しています。
治療は「生活習慣の改善」から始まり、「第一選択薬(PDE5阻害薬)」、効果不十分な場合の「二次治療」へと進むアルゴリズムが推奨されています。
薬の効果を最大限に引き出すためにも、血管内皮機能(血管の若さ)を保つことが重要です。特に以下の4点は医学的に推奨されています。
1日30分の早歩きやジョギングは血流を改善し、EDリスクを低下させます。
肛門を締めるトレーニング(ケーゲル体操)は、勃起の維持力向上に有効です。
抗酸化作用のある食事や、肥満の解消(BMI適正化)は血管を守ります。
喫煙は血管を収縮させる最大の敵です。禁煙により機能が回復する例も多いです。
世界中で第一選択薬として使用されているのが「PDE5阻害薬」です。陰茎の血管を拡張させ、性的刺激を受けた際に自然な勃起をサポートします。
当院では、患者様のライフスタイル(食事のタイミングや行為までの時間)に合わせて最適な処方を行います。
| バイアグラ Sildenafil | レビトラ Vardenafil | シアリス Tadalafil | ステンドラ Avanafil | |
|---|---|---|---|---|
| 特徴 |
知名度 No.1 力強い硬さが出る |
即効性 水に溶けやすい |
長時間 自然な使い心地 |
海外・未承認 超即効性・副作用少 |
| 効果発現 | 30〜60分 | 15〜30分 | 1〜3時間 | 15分〜 (海外データ) |
| 持続時間 | 4〜6時間 | 5〜8時間 | 30〜36時間 | 6時間程度 |
| 食事の影響 |
受けやすい 空腹時推奨 |
標準的な食事ならOK |
受けにくい 800kcal以下ならOK |
影響を受けにくい |
※ステンドラは国内未承認薬です。海外では第4の治療薬として広く使われています。
(当院での取り扱い状況はお問い合わせください)
狭心症・心筋梗塞の治療で「硝酸剤(ニトログリセリン等)」を使用中の方。
併用すると血圧が危険なレベルまで低下し、命に関わる恐れがあります。
内服薬(バイアグラ等)で十分な効果が得られない場合や、持病で内服ができない場合には、医学的に以下の治療法が選択肢となります。
これらは専門の設備が必要なため、ご希望の場合は実施可能な医療機関をご紹介する形となります。
陰茎海綿体注射(ICI療法)
ご自身で陰茎に直接薬剤を注射する方法です。血管拡張剤を直接届けるため、神経障害(脊髄損傷や糖尿病性神経障害など)がある場合でも、非常に高い確率で勃起が得られる強力な治療法です。
陰圧式勃起補助具(VED)
ポンプ(ビガー等)を用いて筒の中を真空状態にし、陰圧を利用して物理的に血液を吸い上げる医療機器です。薬剤を使わないため全身への副作用が少なく、前立腺がん術後のリハビリ目的でも使用されます。
5. 最新の研究動向と再生医療:根本治療への挑戦
これまでのED治療(バイアグラ等)は、あくまで一時的に症状を抑える「対症療法」でした。
近年、組織そのものを修復し、自然な勃起力の回復を目指す「根本治療(Restorative Therapy)」の研究が進んでいます。
薬効中のみ血管を広げる。
効果が切れると元に戻る。
血管・組織を新生・修復する。
薬に頼らない機能回復を目指す。
エビデンスレベルで見る最新治療
低強度体外衝撃波療法 (LI-ESWT)
欧州ガイドライン推奨微弱な衝撃波を陰茎に照射し、血管新生(新しい血管を作る)を促す治療法です。 欧州泌尿器科学会(EAU)では「血管性EDに対する第一選択の一つ」として推奨されており、世界的に最もエビデンスが確立された再生治療です。
PRP療法(多血小板血漿)
AUAガイドライン記載ご自身の血液から採取した「多血小板血漿(PRP)」を陰茎海綿体に投与する治療です。血小板に含まれる豊富な成長因子が組織修復を促します。
米国泌尿器科学会(AUA)のガイドラインにおいても、将来性のある「研究的治療(Investigational Modality)」として言及されています。
自己血液由来のため安全性が高く、複数の臨床試験でIIEFスコアの改善が報告されており、衝撃波に次ぐ有望な選択肢とされています。
幹細胞治療・エクソソーム(培養上清液)など
これらは基礎研究(動物実験レベル)では神経再生などの効果が示唆されていますが、人間に対する大規模な臨床データやガイドラインでの位置付けはまだ確立されていません。
当院では医学的根拠を重視するため、現状ではこれらを推奨治療とは区別し、慎重に情報のアップデートを行っています。
※再生医療はいずれも公的保険適用外の自由診療となります。
6. 注意点:サプリメントや自己判断のリスク
「誰にも知られたくない」という心理から、市販のサプリメントや、インターネットでの個人輸入に頼ってしまう方が後を絶ちません。
しかし、医学的・安全性の観点からは推奨できません。その理由を明確に解説します。
「精力剤(サプリ)」と「治療薬」の決定的な違い
| 医療用医薬品 (バイアグラ等) |
サプリメント (マカ・亜鉛等) |
|
|---|---|---|
| 目的 | 病気の「治療」 | 健康の「補助・補給」 |
| 効果の根拠 | 大規模臨床試験による 明確なエビデンスあり |
医学的エビデンスは 確立されていない |
| 作用 | 血管に直接作用し 勃起を助ける |
栄養を補うのみ (即効性はない) |
| 安全性 | 医師の管理下で使用 (副作用対応可) |
自己責任 |
※サプリメントはあくまで「食品」です。栄養補給としての意義はありますが、EDそのものを治す効果は認められていません。
「天然由来」に潜む罠(無承認無許可医薬品)
「天然ハーブ配合」「即効性あり」と謳う海外製サプリメント(いわゆる強壮剤)の中には、ED治療薬成分(シルデナフィル等)が隠れて混入されているケースが厚生労働省やFDA(米国食品医薬品局)から多数報告されています。
これらは成分量が不均一だったり、不純物が混ざっていたりするため、予期せぬ副作用(重篤な低血圧や意識消失)を引き起こす可能性があり極めて危険です。
インターネットによる「個人輸入(通販)」のリスク
ネット通販で安価に売られている海外製ジェネリック薬(未承認薬)の約4割〜半数が「偽造薬(ニセモノ)」であるという調査データがあります。
(※2016年 製薬会社4社合同調査より)
- 不衛生な環境で製造されているリスク ペンキや殺虫剤、覚醒剤成分などが混入していた事例も報告されています。
- 効果がない、または健康被害が出るリスク 全く効かないだけならまだしも、死亡事故につながるケースもあります。
- 「医薬品副作用被害救済制度」が使えない 国内正規薬で万一重い副作用が出た場合は国の救済制度が使えますが、個人輸入薬は対象外です。
EDはデリケートな問題ですが、医師の管理下であれば安全に、かつ安価に治療できる時代です。
一時の恥ずかしさや安さを優先して、取り返しのつかない健康被害を招くことがないよう、正規の医療機関への相談を強く推奨します。
医師にご相談ください。恥ずかしいことではありません。
モイストクリニックでは、プライバシーに最大限配慮し、
あなたに合った最適な治療法(内服薬・衝撃波・再生医療)をご提案します。
※診察は個室で行います。男性スタッフ中心ですのでご安心ください。
金谷 正樹 モイストクリニック 院長
Masaki Kanaya
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックにて性感染症を中心に診療を行う。
日本性感染症学会の会員として活動しており、得意分野である細菌学と免疫学の知識を活かして、患者さまご本人とパートナーさまが幸せになれるような医療の実践を目指している。
・日本性感染症学会 会員
- 日本泌尿器科学会 編『ED診療ガイドライン第3版』
- 日本性機能学会『男性性機能障害診療ガイドライン2025年版』
- European Association of Urology (EAU) Guidelines on Sexual and Reproductive Health
- 厚生労働省:医薬品等の個人輸入について
- PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構):医薬品副作用被害救済制度
