PrEP(プレップ)とは、HIV非感染者が抗ウイルス薬(エムトリシタビン・テノホビル配合剤等)を予防的に内服し、性交渉等によるHIV感染リスクを回避する医療的介入手法です。 リスク行為の「前」から血中の薬物濃度を高めておくことで、ウイルスが体内に侵入しても増殖・定着を防ぎ、感染成立を阻止します。
- 高い予防効果:適切なアドヒアランス(服薬遵守)下において、性行為によるHIV感染リスクを約99%低減させることがCDCおよび多数のRCT(IPERGAY試験等)で実証されています。
- 推奨対象:日本エイズ学会等のガイドラインでは、MSM(男性間性交渉者)、トランスジェンダー、およびリスクのある性行動を行う全ての人に推奨されています。
- 国内承認:2024年より日本国内においても予防目的での薬剤使用が正式に承認されました。
- 安全性:重篤な副作用は稀ですが、開始前および継続的なHIV検査、腎機能、B型肝炎等のモニタリングが必須となります。
本ページでは、日本エイズ学会「HIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き(第2版)」および最新の国際的エビデンスに基づき、PrEPの薬理学的機序、臨床データ、および具体的な運用指針について包括的に解説します。
1. PrEPの基本概念と薬理学的機序
PrEP(曝露前予防)は、HIV非感染者が抗レトロウイルス薬を予防的に服用することで、ウイルス曝露時の感染成立(体内への定着)を化学的に阻止する手法です。 ここでは、混同されやすいPEP(曝露後予防)との臨床的な相違点、および分子レベルでの感染阻止メカニズムについて解説します。
PEP(曝露後予防)との臨床的相違点
PrEPとPEPは共に抗HIV薬を使用しますが、その適用タイミングと目的において明確な違いがあります。 PEPはあくまで緊急時の対応策(Emergency)であるのに対し、PrEPは計画的な予防戦略(Strategy)として位置付けられます。
| 項目 | PrEP(曝露前予防) | PEP(曝露後予防) |
|---|---|---|
| 名称 | Pre-Exposure Prophylaxis | Post-Exposure Prophylaxis |
| 開始タイミング | リスク行為の「前」から継続 | リスク行為後、可能な限り早く (72時間以内推奨) |
| 服薬期間 | リスクがある期間は継続 (数ヶ月〜数年単位) |
28日間(短期間で完了) |
| 使用目的 | 継続的な感染リスクの管理 | 事故的な曝露に対する緊急避難 |
| 適応例 | 特定のパートナーがいないMSM、 コンドームを使用しない性交渉が多い方 |
コンドーム破損、性暴力被害、 針刺し事故など |
抗ウイルス薬による感染阻止のメカニズム
PrEPで使用される主な薬剤は、エムトリシタビン(FTC)とテノホビル(TDF または TAF)の合剤です。 これらは薬理学的に「核酸系逆転写酵素阻害剤(NRTI: Nucleoside/Nucleotide Reverse Transcriptase Inhibitor)」に分類されます。
HIVの侵入と「逆転写」
通常、HIVが体内の免疫細胞(CD4陽性リンパ球)に侵入すると、自身のウイルスRNAをヒトのDNAに組み込むため、酵素を使ってRNAをDNAに変換します。この工程を「逆転写(Reverse Transcription)」と呼びます。
PrEP薬の作用点(偽のパーツとして振る舞う)
PrEP薬(テノホビル等)は、ウイルスのDNA原料(ヌクレオシド)と構造が非常によく似ています。そのため、HIVの酵素は本物の原料と間違えて薬剤を取り込んでしまいます。
連鎖の遮断(Chain Termination)
薬剤が取り込まれると、DNAの合成はその時点で強制的にストップします。これにより、ウイルスの遺伝情報が完成せず、細胞核内のヒトDNAに組み込まれること(感染成立)が阻止されます。
PrEPを服用し血中・細胞内の薬物濃度を十分に高めておくことで、万が一HIVが体内に侵入しても、ウイルスは自己複製(増殖)ができず、感染が成立する前に死滅します。
2. 臨床試験に基づく有効性とエビデンス
PrEPの有効性は、過去10年以上にわたる複数の大規模無作為化比較試験(RCT)により確立されています。 以下に、世界的なガイドライン推奨の根拠となった主要な臨床試験(ランドマーク・スタディ)の結果を示します。
主要RCT(iPrEx, IPERGAY, HPTN等)の結果
世界で初めてPrEP(TDF/FTC)の有効性を示した試験。全体解析では44%のリスク減少にとどまったが、血中薬物濃度が検出された群(実際に服用していた群)では92%のリスク減少が確認され、アドヒアランスの重要性が示唆されました。
オンデマンドPrEP(性行為前後のみ内服)の有効性を検証した試験。プラセボ群と比較してHIV感染リスクが86%減少し、毎日内服しない方法でも高い予防効果があることが証明されました。
長期作用型注射薬(CAB-LA)と経口薬(TDF/FTC)を比較。注射薬群は経口薬群よりもさらに66%感染リスクが低く、「飲み忘れ」のない注射薬の優越性が示されました。
99%のリスク低減効果とアドヒアランスの相関
PrEPの予防効果は「薬を飲んでいるかどうか(アドヒアランス)」に完全に依存します。 米国CDC(疾病予防管理センター)は、「毎日正しく服用すれば、性行為によるHIV感染リスクを約99%低減できる」と報告しています。逆に、服用頻度が下がると予防効果は劇的に低下します。
週あたりの服用回数と推定予防効果(iPrEx試験サブ解析データに基づく)
※上記のデータはMSM(男性間性交渉)における推定値です。女性(膣性交)の場合、薬剤の組織内濃度が上がるのが遅いため、より厳格な「毎日服用」が必須とされています。
STI(梅毒・淋菌等)への影響とリスク補償行動
PrEP導入時に懸念されるのが「リスク補償行動(Risk Compensation)」です。これは、「PrEPでHIVは防げる」という安心感からコンドーム使用率が低下し、結果として梅毒や淋菌など他の性感染症(STI)が増加する現象を指します。
PrEP自体には、梅毒、淋菌、クラミジアなどのSTIを防ぐ効果はありません。 実際のコホート研究では、PrEPユーザーにおいてSTIの診断率が高い傾向にありますが、これには以下の2つの要因が含まれます。
- 行動変容:コンドームなしの性交渉(UAI)が増加することによる実質的な感染増。
- 検査バイアス:PrEP利用者は3ヶ月ごとの定期検査が必須となるため、無症状のSTIが「発見されやすく」なり、見かけ上の報告数が増える。
対策: PrEPは「HIV予防」には最強の盾ですが、他の感染症には無力です。そのため、当院ではPrEP処方時の定期検診(3ヶ月ごと)でSTIを早期発見・早期治療し、総合的な性感染症予防(Combination Prevention)を行うことを推奨しています。
3. 適応対象とガイドライン上の推奨
PrEPの適応は、個人の性的指向や属性だけで決まるものではありません。「過去および将来において、HIV感染のリスクがある行為を行う可能性があるか」という行動学的リスク評価に基づきます。 日本エイズ学会の「PrEP利用の手引き(第2版)」および国際ガイドライン(WHO/CDC)に基づき、推奨される対象者を詳述します。
MSM・トランスジェンダーへの推奨
日本国内の新規HIV感染報告の大半は男性同性間性的接触(MSM)によるものです。また、トランスジェンダー女性も世界的にHIV感染リスクが極めて高い集団とされています。 疫学的観点から、以下のいずれかに該当する場合はPrEPの強い推奨(Strong Recommendation)対象となります。
- 過去6ヶ月以内に、コンドームなしの肛門性交(受け/挿入問わず)を行った。
- 過去6ヶ月以内に、細菌性性感染症(梅毒、淋菌、クラミジア等)と診断された。
- 性交渉の相手が不特定多数である、またはパートナーのHIVステータスが不明である。
- 性交時に薬物(Chemsex)を使用する機会がある。
※特に、直腸(肛門)粘膜は膣粘膜に比べてHIVウイルスが侵入しやすく、感染確率は数倍〜数十倍高いとされています。そのため、MSM層へのPrEP普及は公衆衛生上の最優先課題です。
異性間性交渉およびその他のリスク因子
異性愛者(ヘテロセクシュアル)であっても、特定の条件下ではHIVリスクが高まります。特に近年、日本国内では梅毒の感染急増が見られ、これは「コンドームなしの性交渉」が増えている指標(サロゲートマーカー)でもあります。 性別を問わず、以下の状況にある方はPrEPの導入を検討すべきです。
- 異性間 パートナーがHIV陽性であり、ウイルス量が検出限界未満に抑制されていない(または不明な)場合。
- 異性間 不特定多数とのコンドームなしの性交渉がある。
- 異性間 過去6ヶ月以内に梅毒などのSTIに罹患した(STIの罹患はHIV感染のゲートウェイとなり得るため)。
- 性風俗産業に従事しており、コンドーム使用が不徹底になる可能性がある。
- 注射薬物使用者(PWID)で、注射器の共用リスクがある。
「情報提供の機会」としてのPrEP
従来の医療では、医師が患者のリスクを判定し「あなたは必要/不要」と選別する傾向がありました。しかし、最新のガイドラインでは、医療者側から見たリスク評価だけでなく、「本人が抱える不安や希望」を尊重する姿勢へと転換しています。
「性的に活発な全ての成人・青年に、PrEPについての情報提供を行うべきである」
医療者は、受診者の性的指向や性行動についての偏見(先入観)を持たず、本人がHIV感染に対して不安を感じているならば、その不安を解消する手段としてPrEPを提示・提供することが推奨される。
たとえ客観的な感染確率が低いと見なされる場合でも、PrEPを使用することで「性行為への恐怖心が減った」「パートナーとの関係が改善した」という心理的・社会的メリット(QOL向上)が得られる場合があります。 当院では、上記のリスク基準に厳密に当てはまらない場合でも、ご本人が予防を希望される際には、十分な説明の上でPrEPを処方しています。
4. 投与プロトコル(服用方法)
PrEPの服用方法には、毎日服用する「デイリーPrEP」と、性行為に合わせて服用する「オンデマンドPrEP」の2種類が存在します。 ライフスタイルや性行動の頻度に合わせて選択しますが、医学的適応が異なるため、必ず医師の指導のもとで決定する必要があります。
デイリーPrEP(連日服用法):標準的アプローチ
Daily PrEP(毎日1錠)
1日1回、毎日決まった時間に1錠を服用する方法です。 血中の薬物濃度が常に一定に保たれるため、最も確実で失敗の少ない予防法です。性行為の頻度が高い方や、突発的な性行為が多い方に適しています。
- 対象:全ての性別・セクシュリティ(MSM、女性、異性愛男性、トランスジェンダー)
- メリット:いつ性行為があっても保護される。飲み忘れが1日程度あっても効果が維持されやすい。
- 使用薬剤:ツルバダ(TDF/FTC)、デシコビ(TAF/FTC)
オンデマンドPrEP(2-1-1法):MSM向け選択肢
On-demand PrEP(イベントベース / 2-1-1法)
性行為のタイミングに合わせて、短期間集中的に服用する方法です。性行為が週1回以下など頻度が低い場合に、薬の総量とコストを抑えられるメリットがあります。 ただし、スケジュール管理が厳格に求められます。
- 女性(膣組織への薬剤浸透に時間がかかるため)
- ホルモン療法を受けているトランスジェンダー女性
- 慢性B型肝炎ウイルス感染者(断続的な服薬が肝炎の再燃・悪化を招く恐れがあるため)
開始・中止のタイミングと休薬プロトコル
PrEPは「今日飲んで今日効く」ものではなく、組織内の薬物濃度が上がるまでのリードタイムが必要です。また、止める際も体内のHIVを完全に排除するための「後始末期間」が不可欠です。
| 開始時 (効果発現まで) |
MSM(直腸) | 服用開始から7日間で効果安定(※オンデマンド初回2錠なら2時間後から有効) |
|---|---|---|
| 女性・異性間(膣・血液) | 服用開始から21日間(約3週間)の継続が必要 | |
| 中止時 (いつまで飲むか) |
最終のリスク行為から「2日間(48時間)」は服用を継続する ※これを守らずに止めると、残存ウイルスにより感染が成立する危険があります。B型肝炎キャリアの方は自己判断での中止は厳禁です。 |
|
5. 開始前のスクリーニングとフォローアップ
PrEPは「検査なくして処方なし(No Test, No PrEP)」が大原則です。 安全性を担保するため、開始前および服用期間中に医学的なモニタリングが必須となります。特にHIVの未検出感染を見逃したまま開始することは、治療の失敗と薬剤耐性の獲得につながる最大のリスクです。
Window Periodを考慮したHIV検査の重要性
HIVに感染してから検査で陽性反応が出るまでには、数週間〜1ヶ月程度のタイムラグ(ウィンドウ・ピリオド)が存在します。 もし、この期間中(すでに感染しているが検査は陰性)にPrEPを開始してしまうと、中途半端な投薬によりウイルスが薬に慣れてしまい、「薬剤耐性HIV」へと変異する恐れがあります。
感染から検出までのタイムラグ
当院では、問診で直近のリスク行為を確認し、必要に応じてより検出感度の高い検査法を用いたり、開始時期を調整するなどのリスク管理を行います。
B型肝炎(HBV)および腎機能の評価
PrEP薬(テノホビル等)は、HIVだけでなくB型肝炎ウイルスに対しても治療効果を持ちます。また、腎臓で代謝されるため腎機能への影響評価も欠かせません。
理由:PrEP薬はB型肝炎の治療薬でもあります。B型肝炎キャリアの方がPrEPを自己判断で中断すると、ウイルスが急激に再増殖し、重症肝炎(肝炎フレア)を引き起こす危険性があります。
理由:テノホビル(TDF)は稀に腎尿細管障害を引き起こすことがあります。開始前に腎機能が正常であることを確認し、服用中も数ヶ月ごとに数値をチェックします。
定期的なSTI検査と包括的予防ケア
PrEPはHIV以外の性感染症(STI)は防げません。PrEPユーザーはコンドーム不使用(UAI)の頻度が高くなる傾向にあるため、症状がなくても定期的なスクリーニングが推奨されます。 当院では、PrEP処方とセットで以下の「包括的予防ケア」を実施します。
| タイミング | 実施内容・検査項目 |
|---|---|
| 初回 (開始時) |
・HIV即日検査 / NAT検査 ・B型肝炎スクリーニング ・腎機能(eGFR) ・梅毒、淋菌、クラミジア(咽頭・直腸含む) |
| 1ヶ月後 |
・HIV検査(ウィンドウピリオド漏れの再確認) ・副作用(消化器症状など)の問診 |
| 3ヶ月毎 (推奨) |
・HIV検査(必須):処方ごとの陰性確認 ・STI検査(梅毒等):無症状感染の早期発見 ・腎機能検査:半年に1回程度推奨 |
※PrEPは「薬を渡して終わり」ではありません。定期的な通院自体が、ご自身の健康状態を把握し、パートナーを守るための重要なメンテナンスとなります。
6. 安全性と副作用のマネジメント
PrEPで使用される抗HIV薬(ツルバダ等)は、長年のHIV治療実績があり、安全性プロファイルが確立された薬剤です。 重篤な副作用は極めて稀ですが、服用初期の一過性症状や、長期使用に伴う軽微な生理学的変化については理解しておく必要があります。
急性期症状(Start-up Syndrome)
Start-up Syndrome(初期の不快感)
服用開始直後の数日から数週間、一部の方に「軽い吐き気、軟便、腹部膨満感、頭痛」などが見られることがあります。 これを医学的に「スタートアップ・シンドローム」と呼びますが、身体が薬剤に慣れる過程で起こる一時的な反応であり、多くは服薬を継続することで自然消失します。
※症状が気になる場合は、制吐剤や整腸剤を併用することでコントロール可能です。自己判断で中止せずご相談ください。
長期的な骨密度・腎機能への影響
テノホビル(TDF)を含む製剤の長期連用において、以下の事象が報告されています。これらは通常、可逆的(薬を止めれば戻る)であり、定期検査で管理可能な範囲です。
腎尿細管への負担により、eGFR(腎濾過量)の軽度低下が見られる場合があります。
iPrEx試験等のメタ解析では、臨床的に問題となる腎障害の発生率はプラセボ群と比較しても極めて低い(1%未満)とされていますが、高齢者や腎疾患の既往がある方は慎重なモニタリングが必要です。
開始後数ヶ月で、脊椎や大腿骨の骨密度が平均1〜2%程度低下することが報告されています。
ただし、この減少は非進行性(ある程度で下げ止まる)であり、骨折リスクの有意な増加には直結しないとのデータが一般的です。服薬中止後には回復傾向を示します。
薬剤耐性ウイルスのリスク管理
PrEPの安全性において最も警戒すべきは、副作用ではなく「不適切な使用による薬剤耐性HIVの獲得」です。
もし、HIVに既に感染している状態(特に検査で陰性となるウィンドウ・ピリオド期間中)でPrEPを開始すると、本来3〜4剤で治療すべきウイルスに対し、2剤(ツルバダ等)だけで攻撃することになります。 この「中途半端な攻撃」により、ウイルスが生き残り、薬剤に対する耐性変異(M184V変異など)を獲得してしまうリスクがあります。
これを防ぐ唯一の方法は、医師の管理下で「確実なHIV陰性」を確認してから開始し、服用中も定期的な検査を欠かさないことです。
7. 国内外の制度と最新トレンド
HIV予防医学の分野は現在、世界的に急速な進展を見せています。 日本国内における法規制の現状と、海外ですでに実装段階に入っている「次世代PrEP」の動向について解説します。
日本における承認状況とアクセス・費用
日本では長らくPrEP目的での薬剤使用は適応外(本来の使い方ではない)とされてきましたが、2024年8月、ツルバダ配合錠が正式に予防適応の承認を取得しました。これにより、日本の医療機関において安心して処方を受けられる基盤が整いました。
現在の日本の医療保険制度は「病気の治療」を対象としているため、予防医療であるPrEPは全額自己負担(自由診療)となります。 決して安価ではありませんが、HIVに感染した場合の生涯にわたる治療負担や健康リスクを考慮すれば、極めて費用対効果の高い「健康への投資」と言えます。
※当院では、正規の承認薬に加え、経済的負担を軽減するためのジェネリック薬(海外承認薬)の取り扱いも行い、継続しやすい環境を整えています。
海外動向:長時間作用型注射薬(CAB-LA, LEN)
世界(米国やWHOガイドライン)では、「毎日飲む」ことから「数ヶ月に1回注射する」スタイルへのパラダイムシフトが起きています。 特に注目すべきは、長時間作用型注射薬(Long-Acting Injectables)の実用化です。
| 経口薬(現在) Oral PrEP |
CAB-LA カボテグラビル |
LEN レナカパビル |
|---|---|---|
| ツルバダ / デシコビ 飲み薬 | Apretude 筋肉注射 | Sunlenca 皮下注射 |
| 毎日 1回 (またはオンデマンド) |
2ヶ月に 1回 | 6ヶ月に 1回 |
| アドヒアランスに依存 (飲み忘れ注意) |
経口薬より66〜88% 高い予防効果* |
臨床試験で100%の 予防効果報告あり** |
| 日本承認済 | 日本未承認 | 日本未承認 |
* CAB-LA (Apretude):
HPTN 083/084試験において、毎日の経口薬よりも優れた予防効果(優越性)が証明されました。「飲み忘れ」という最大のリスク要因を排除できるため、米国FDA等で既に承認されています。
** LEN (Sunlenca):
年2回の投与で済む画期的な薬剤です。2024年のPURPOSE試験では、女性群において感染ゼロ(有効性100%)という驚異的なデータが報告され、ゲームチェンジャーとして期待されています。
現時点では日本では未承認ですが、当院ではこれらの最新知見を常にアップデートし、国内導入が可能になった段階で速やかに提供できる体制を整える予定です。
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日本エイズ学会. “HIV感染予防のための曝露前予防(PrEP)利用の手引き 第2版”. 2024.
https://jaids.jp/ (日本エイズ学会公式サイト) -
Centers for Disease Control and Prevention (CDC). “Pre-Exposure Prophylaxis (PrEP)”.
https://www.cdc.gov/hiv/risk/prep/index.html - Molina JM, et al. “On-Demand Preexposure Prophylaxis in Men at High Risk for HIV-1 Infection (IPERGAY Study)”. N Engl J Med. 2015;373:2237-2246.
- Grant RM, et al. “Preexposure Chemoprophylaxis for HIV Prevention in Men Who Have Sex with Men (iPrEx Study)”. N Engl J Med. 2010;363:2587-2599.
- Landovitz RJ, et al. “Cabotegravir for HIV Prevention in Cisgender Men and Transgender Women (HPTN 083)”. N Engl J Med. 2021;385:595-608.
- Gilead Sciences. “添付文書:ツルバダ配合錠”. 2024年8月改訂版.
- World Health Organization (WHO). “Consolidated guidelines on HIV prevention, testing, treatment, service delivery and monitoring”.
