【医師監修】PEP(HIV予防内服)中の過ごし方ガイド|飲み忘れ・副作用・性行為の注意点

PEP(曝露後予防内服)を開始されたみなさん、まずは迅速な行動、お疲れ様でした。

「もしも」の不安を抱えて受診され、お薬を手にしたことで、少しホッとされている部分もあるかと思います。しかし同時に、これから始まる28日間の服用生活に対して、新たな疑問や不安も感じていらっしゃるのではないでしょうか。

💡 このような不安はありませんか?

「薬を飲み忘れたらどうしよう…」
「副作用で仕事に影響が出たら…」
「この期間、パートナーとの生活はどうすればいい?」

PEPは、正しく飲みきれば非常に高い確率でHIV感染を防ぐことができる予防策です。しかし、そのためには「28日間、決められたルールを守り抜くこと」が何よりも重要になります。

この記事では、現在PEPを使用中の方が直面しやすいトラブルや、日常生活での具体的な注意点について、専門クリニックの視点から分かりやすく解説します。
万が一の時の対処法を知っておくことで、安心して28日間を完走しましょう。

【最重要】PEP成功のカギは「時間厳守」

PEPの効果を最大限に発揮し、HIV感染を阻止するために最も大切なこと。それは「体内の薬の濃度を一定に保ち続けること」です。

⚠️
ここがポイント!
PEPは「28日間、毎日決まった時間」に飲み続けることで、初めて90%近い予防効果(あるいはそれ以上)を発揮します。

なぜ「時間厳守」がそれほど重要なのでしょうか?

抗HIV薬は、一度飲むと体の中でウイルスと戦う準備を整えますが、時間が経つにつれてその効果(血中濃度)は徐々に下がっていきます。

🛡️ お薬は「見えないバリア」です

薬を定時に飲むことで、ウイルスを跳ね返す「バリア」が常に張られた状態になります。
しかし、飲み忘れたり時間が大幅にズレたりすると、バリアに「隙間」ができてしまいます。
ウイルスはその一瞬の隙間を狙って増殖しようとするため、隙間を作らないことが何よりの防御策なのです。

飲み忘れを防ぐための「3つの工夫」

28日間という期間は、短いようで長く感じるかもしれません。人間の記憶力だけに頼らず、以下のツールを活用して「飲み忘れゼロ」を目指しましょう。

  • スマホのアラームをセットする
    「薬」という表示が気になる場合は、「ビタミン」「会議」など自分だけの合図にするのがおすすめです。
  • 生活の動作とセットにする
    「歯磨きの後」「就寝前」など、毎日必ず行うルーティンと組み合わせると忘れにくくなります。
  • 予備を持ち歩く
    急な外泊や残業に備え、1〜2回分はお財布やポーチに入れて常に携帯しておきましょう。

完璧を目指すあまりストレスを感じすぎる必要はありませんが、この28日間だけは、お薬を生活の優先順位の1番に置いてくださいね。

飲み忘れ・嘔吐時の緊急対処法

人間ですから、どんなに気をつけていても「うっかり」は起こり得ます。
もし飲み忘れてしまっても、焦ってパニックになる必要はありません。冷静に、以下のルールに従ってリカバリーを行いましょう。

ケース1:「飲み忘れた!」と気づいた時

基本的には「気づいた時点ですぐに飲む」のが正解です。ただし、タイミングによって対応が異なります。

✅ 気づいた時が、次の服用時間まで「まだ余裕がある」場合
→ すぐに1回分を飲んでください。その後のスケジュールは変えず、次はいつもの時間に飲んでOKです。
✅ 気づいた時が、次の服用時間の「直前」だった場合
→ 忘れた分は「スキップ(1回飛ばす)」してください。そして、いつもの時間に1回分だけを飲みます。
❌ 絶対にやってはいけないこと
「2回分をまとめて飲む」のは絶対にやめてください。薬の血中濃度が高くなりすぎ、副作用のリスクが急激に高まります。
🤮 ケース2:薬を飲んだ後に吐いてしまった時

体調不良や副作用で、服用後に嘔吐してしまうことがあるかもしれません。この場合は「時間」が判断基準になります。

服用から「1時間以内」に吐いた場合

まだ薬が吸収されていません。
もう一度、1回分を飲み直してください。

1時間以上経過してから吐いた場合:
すでに薬の成分は体に吸収されていると考えられますので、飲み直す必要はありません。次は通常通りの時間に服用してください。

※吐き気が強くて薬が飲めない状態が続く場合は、無理をせずすぐにクリニックへご連絡ください。制吐剤(吐き気止め)の処方などを検討します。

飲み合わせ注意!サプリや市販薬

PEPで使用するお薬(特にインテグラーゼ阻害薬など)は、他の薬やサプリメントとの相性が非常に重要です。
組み合わせによっては、お薬が体内で吸収されにくくなり、予防効果がガクンと落ちてしまうことがあります。

⚠️ 特に注意が必要なもの(ミネラル類)

以下の成分が含まれるものは、PEP薬とくっついて吸収を邪魔してしまいます。

カルシウム マグネシウム 鉄分 亜鉛 アルミニウム

具体的によくある製品:

  • マルチビタミン&ミネラル
  • 貧血用の鉄剤
  • 胃薬・制酸剤(成分をよく見てください!)
  • ジム用のプロテイン(ミネラル配合のもの)
💡 どうしても飲みたい時は?
PEP薬を飲む時間の「前後2時間以上」あければ大丈夫な場合が多いですが、可能な限りこの28日間だけは中止することをおすすめします。
🙆 一般的に併用OKなもの

以下の市販薬は、用法用量を守れば一緒に飲んでも問題ないケースがほとんどです。

解熱鎮痛剤(ロキソニン等) 風邪薬 アレルギー薬(花粉症) ビタミン剤(ミネラルなし)

※製品によって成分が異なりますので、念のため医師または薬剤師にご確認ください。

🍺 お酒(アルコール)について
「お酒を飲んではいけない」という決まりはありません。適量であれば薬の効果に影響はありません。
ただし、深酒をして「薬を飲むのを忘れた」「吐いてしまった」という事態になるのが一番のリスクです。
また、肝臓への負担を少しでも減らすため、この期間の大量飲酒は控えましょう。

「いつも飲んでいるこのサプリは大丈夫?」
「頭が痛いけど薬を飲んでいい?」
と迷ったら、自己判断せずにお気軽にLINEでご相談ください。製品のパッケージ写真を送っていただければ確認いたします。

副作用が出たら?(受診すべきサイン)

「強い副作用が出るのでは…」と不安に思う方も多いですが、ご安心ください。
現在処方されている新しい抗HIV薬は、ひと昔前の薬に比べて格段に副作用が少なく、安全性が高まっています。

🤢 よくある症状(多くは軽度です)
  • 吐き気、胃のムカムカ
  • お腹がゆるくなる(下痢・軟便)
  • 軽い頭痛、だるさ(倦怠感)

💡 対処法:
これらは体が薬に慣れる過程(飲み始めの数日〜1週間)で起こりやすく、自然に治まることがほとんどです。
生活に支障が出る場合は、吐き気止めや整腸剤、頭痛薬を一緒に飲んでコントロールしましょう。当院でも処方可能ですのでご相談ください。

⚠️ 最も避けてほしいこと

「気持ち悪いから」といって、
自己判断で薬を勝手にやめること(中断)です。

途中でやめると、ウイルスへの防御力がゼロになり、感染リスクが跳ね上がります。
辛い時は、やめる前に必ずご連絡ください。

🚨 すぐに連絡・受診が必要なサイン

極めて稀ですが、重篤なアレルギー反応や肝機能障害の可能性があります。以下の症状が出た場合は、服用を中止する前に直ちに医療機関へ連絡してください。

  • ひどい発疹(全身のブツブツ、水ぶくれ)
  • 黄疸(白目や皮膚が黄色くなる)
  • 尿の色が異常に濃い(紅茶色など)
  • 激しい腹痛や背中の痛み
  • 筋肉の激しい痛みや脱力感
📞 緊急連絡先
050-8885-0783(モイストクリニック)
※夜間や休診日は、お近くの救急外来にご相談いただくか、翌朝一番にご連絡ください。

「副作用かな?それとも風邪かな?」と判断に迷う場合も、遠慮なくLINEでご相談ください。 あなたの体調に合わせて、最後まで飲みきれる方法を一緒に考えましょう。

PEP期間中の性行為と日常生活

PEP内服中の28日間、そして検査で陰性が確認されるまでの期間は、「まだ感染しているかどうかが確定していない期間(ウインドウ期)」でもあります。
ご自身だけでなく、大切なパートナーや周囲の人を守るために、いくつかのルールを守る必要があります。

❤️ 性行為(セックス)について

Q. 性行為をしてもいいですか?

A. 基本的には控えることを強く推奨します。
もし行う場合は、最初から最後まで必ずコンドームを使用してください。オーラルセックスであっても同様です。

⚠️ なぜコンドームが必要なの?
万が一、PEPが効かずに感染が成立してしまった場合、体内のウイルス量が一時的に爆発的に増える時期(急性期)に入ります。
この時期は非常に感染力が強く、パートナーへうつしてしまう危険性が最も高いのです。
「自分は薬を飲んでいるから大丈夫」と過信せず、結果が出るまでは「もしかしたら」を想定して行動しましょう。

日常生活での制限・注意点

普段通りの生活を送っていただいて構いませんが、以下の点だけは「陰性確認」が終わるまで控えてください。

🩸 献血・臓器提供の禁止 血液を通じて他者に感染させるリスクがあるため、PEP期間中および終了直後は献血を行わないでください。
🪒 カミソリ・歯ブラシの共有NG 目に見えない微量の血液が付着している可能性があります。家族やパートナーとの共有は避け、自分専用のものを使ってください。
🤰 避妊の徹底(妊娠を避ける) 女性の場合、万が一母体が感染すると胎児への影響が懸念されます。検査で陰性が確認できるまでは、確実な避妊を行ってください。
🍼 授乳について(要相談) 母乳を介して乳児へ感染するリスクがあります。授乳中の方は、一時的にミルクに切り替えるなどの対応が必要ですので、必ず医師にご相談ください。
この期間のルールを守ることは、
あなた自身を守るだけでなく、
「大切な人を守るための優しさ」でもあります。
不安なことがあれば、いつでも私たちに相談してください。

28日後の検査とアフターケア

28日間の服用、本当にお疲れ様でした。
しかし、お薬を飲み終わった時点では、まだ「100%安全」と言い切ることはできません。

体内のウイルス量が検査で検出できるレベルになるまでには少し時間がかかります(ウインドウ期)。そのため、PEP終了後も必ず決められた時期に検査を受けてください。

STEP 1:服薬完了 28日目

お薬の服用終了です。飲み忘れなく完走できた自分を褒めてあげてください!

STEP 2:フォローアップ検査① 服用終了直後〜1ヶ月後

まずは一旦、HIV検査を行います。
また、このタイミングで梅毒、淋病、クラミジア、B型/C型肝炎など、他の性感染症も一緒にチェックすることをおすすめします。
※HIV以外の性病はPEPでは防げないためです。

STEP 3:最終確認検査(ゴール!) 3ヶ月後

ここでの検査が陰性であれば、今回の曝露によるHIV感染はなかったと確定診断できます。
これにてPEPプログラムは全て終了です。晴れて卒業となります!🎉

当院では、次回の検査時期が近づきましたらLINEなどでリマインドも可能です。「うっかり検査を忘れてしまった」ということがないよう、私たちがスケジュール管理をサポートします。

🌈 次回からは「事前の予防(PrEP)」を

今回のような「もしも」の不安を、もう二度と感じたくない方へ。
セックスの前に飲むことでHIVを防ぐ予防薬「PrEP(プレップ)」をご存知ですか?

PEP完了後、そのままPrEPへ移行することで、副作用の負担も少なくスムーズに継続的な予防が可能です。

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