HIVの感染リスクを知りたい方へ
HIVの感染確率は?行為別の目安とPEP・検査の判断
「一度だけだから、大丈夫だろうか」「1%と書いてあったけれど、自分の場合は?」
心配な性行為のあと、感染確率を調べても、安心してよいのか、受診したほうがよいのか迷うことがあります。数字を判断に役立てるには、どんな条件で求められた確率かを知ることが大切です。
Q行為別の感染確率は、どのくらいですか?
以下は、HIVに感染している相手から、HIVに感染していない人へ、1回の接触で感染する確率の推定値です。性行為の数値には、コンドーム、PrEP、相手の治療による予防効果を含めていません。すべての人に共通する固定値や、最大値ではありません。[1][2]
| 接触の内容 | 1回あたり |
|---|---|
| 肛門性交受け手/挿入される側 | 1.38% |
| 肛門性交挿入する側 | 0.11% |
| 膣性交受け手/挿入される側 | 0.08% |
| 膣性交挿入する側 | 0.04% |
| オーラルセックス口を使う性行為 | 低い正確な数値の推定は困難 |
| 注射針の共用血液を介した感染経路 | 0.63% |
出典:CDCの感染リスク推定値、Patelらの系統的レビュー。主に海外の研究に基づく推定で、日本の一般人口や当院受診者の感染率ではありません。性行為と注射針の共用は、感染経路を分けて考えます。[1][2]
HIV治療を継続し、ウイルス量が検出限界未満に維持されている人から、性行為でHIVがうつることはありません(U=U)。上の数値を当てはめず、U=Uの条件を確認してください。[3]
挿入する側・される側で、なぜ違うのですか?
HIVは、感染に関わる体液が粘膜や傷のある皮膚などに触れることで体内へ入ります。肛門性交の受け手は直腸の粘膜が接触するため、性行為の中で高い推定値となっています。挿入する側も、尿道の入り口や皮膚の傷などから感染する可能性があります。性別だけで判断せず、どの部位に、どのような接触があったかを確認します。[4]
オーラルセックスにも、PEPが必要ですか?
オーラルセックスによるHIV感染のリスクは低く、通常はPEPを一律に勧める接触ではありません。ただし、外傷による血液への接触、粘膜の傷、相手のウイルス量などを踏まえて個別に判断する場合があります。「口内炎がある」という情報だけで、PEPが必要と決まるわけではありません。[5]
HIVのリスクが低いことと、すべての性感染症のリスクが低いことは別です。口やのどにも淋菌・クラミジアなどが感染することがあるため、検査は接触した部位に合わせて相談します。[9]
Q1回だけなら、大丈夫ですか?
感染が起こり得る接触なら、1回でも感染する可能性はあります。ただし、1回の接触で必ず感染するわけでもありません。回数だけでは、感染の有無やPEPの必要性は判断できません。
たとえば1.38%という推定値は、「約70回までは大丈夫」「70回に1回、順番に感染する」という意味ではありません。同じ条件の多数の接触から見積もった平均的な目安で、あなたの結果を予言するものではないためです。接触を繰り返せば感染する機会は増えますが、表の数値に回数を掛けても、個人の正確な確率にはなりません。[1][2]
接触から72時間以内の方はPEPの相談へ。時間が過ぎている方は検査時期の確認へ進んでください。

相手のHIVの状態が分からない場合は?
表は「相手がHIVに感染している」という条件の数値です。相手の状態が不明なら、そのまま今回の確率として使うことはできません。「不明」は「陽性」と同じではありません。一方で、元気そうだった、症状がなかった、という印象だけで陰性とも判断できません。[5][6]
医師は、行為の種類、コンドームの使用・破損、血液との接触、相手の検査時期や治療状況、PrEPの服用状況などを合わせて判断します。分からない項目は「不明」のまま伝えて構いません。相手の検査結果が分かる前でも、PEPの必要性を相談できます。[5][7]
U=Uと、感染リスクを変える条件
行為の種類に加えて、相手のウイルス量、コンドーム、PrEPなどが判断に関わります。数字の表だけで結論を出さず、予防できていた条件と、確認が必要な条件を分けて考えます。
U=U:治療でウイルスが抑えられている場合
U=Uは「検出されない=性行為では感染しない」という意味です。HIVに感染している人が抗HIV薬による治療を継続し、血液中のウイルス量を検出限界未満に維持できていれば、性行為で相手にHIVをうつしません。[3]
「薬を飲み始めた」「以前の検査で一度低かった」だけでは、現在も条件を満たすと判断できません。PEPを相談する際は、分かる範囲で直近のウイルス量の検査や服薬の継続状況を伝えてください。U=Uのこの説明は性行為によるHIV感染についてで、注射器の共用や他の性感染症にそのまま当てはめるものではありません。[3][5]
コンドーム・PrEPで予防していた場合
コンドームを最初から最後まで適切に使い、破損や脱落がなかった性行為は、通常、PEPを勧める状況ではありません。途中から装着した、外れた、破れた場合は、その前後の接触も含めて評価します。[5]
PrEPも、指示どおりに服用できていればHIV感染を予防する効果が高く、通常はPEPを追加しません。ただし、開始直後や飲み忘れがある場合は判断が変わることがあります。手元のPrEP薬を自己流でPEPの代わりにせず、商品名・飲み方・最後の服用時刻を医師に伝えてください。[5]
感染初期のウイルス量や、炎症・傷がある場合
HIVの感染初期はウイルス量が多くなることがあり、感染リスクに影響します。また、他の性感染症による炎症や、接触した部位の傷なども評価する要素です。ただし「傷があると必ず何倍」と、表に一律の倍率を掛けることはできません。相手が治療でウイルスを抑制している場合は、その条件も含めて判断します。[1][5]
HIVは日常のふれあいや唾液だけでは感染しません。こうした接触を性行為の確率表に当てはめる必要はありません。血液が粘膜や傷のある皮膚に触れた場合は、接触の内容を分けて相談します。[4]
薬物使用は、どうリスクに関わりますか?
性行為に伴う薬物使用(ケムセックス/ケムセ)は、薬物を使ったという事実だけでHIVの感染確率が決まるものではありません。次の2つを分けて確認することが大切です。[8]
注射器などの共用
相手の血液が付着した注射針や注射器などを共用すると、血液を介してHIVに感染する可能性があります。性行為の有無とは別の感染経路です。
判断・予防への影響
薬物や飲酒の影響で、コンドームの使用を判断しにくくなったり、PrEPなどの服用を忘れたりする場合があります。確認するのは、実際にどんな接触があったかです。
記憶があいまいなときも、分かる範囲の時刻、血液との接触、コンドームの状況を伝えてください。詳細を思い出せるまで相談を待つ必要はありません。薬物を使った人への評価や非難ではなく、必要なケアを決めるために状況を確認します。[5]
Q接触後は、何をすればよいですか?
感染の可能性がある接触から72時間以内なら、PEPの必要性をできるだけ早く相談します。確率が低く見えることや、症状がないことだけで、相談の要否は決められません。[7]
PEPは、接触後に抗HIV薬を服用して感染の成立を防ぐための方法です。開始は早いほどよく、原則72時間以内に開始し、通常28日間服用します。72時間まで待ってよいという意味ではありません。処方が必要かどうかは医師が判断し、開始時の検査結果を待つことで必要な開始を遅らせないよう対応します。[7]
早めに相談したい接触
コンドームなし・破損を伴う肛門性交や膣性交で、相手がHIV陽性かつウイルス抑制を確認できない場合などです。相手のHIVの状態が不明な場合や、注射器を共用して血液に触れた場合も、内容を伝えて個別に相談します。不明だから全員にPEPが必要、とは限りません。[5]
72時間を過ぎている場合
PEPの標準的な開始期限を過ぎても、相談や検査の意味がなくなるわけではありません。接触の時期・内容に応じて、HIV検査と他の性感染症の検査、今後の予防を相談してください。[7]
相談で伝えること
- 接触した日時と、今までの経過時間
- 膣・肛門・口のどの接触か、挿入する側か・される側か
- コンドームの使用・破損、血液との接触
- 相手のHIV検査・治療状況(分かる範囲)
- PrEPを含む薬の服用状況
PEPは感染を完全に防ぐ保証ではなく、服用後も適切な時期のHIV検査が必要です。副作用や飲み合わせを確認し、処方元の指示に沿って続けます。
QHIV検査は、いつ受ければ分かりますか?
接触直後の陰性では、その接触による感染を否定できません。検査で検出できるようになるまでには期間があり、検査の種類で異なります。受検時には、最後の心配な接触日とPEP・PrEPの使用を伝えてください。[6][7]
感染から検査で捉えられるまでの期間を「ウインドウ期」と呼びます。CDCが示す通常の目安は次のとおりです。表の最短の日数は、「その日に陰性なら感染していないと確定できる」という意味ではありません。実際には使用する検査と服薬状況に合わせて、受検・再検査の時期を決めます。
| 検査の種類 | 感染から検出できるようになるまでの期間(目安) |
|---|---|
| NATウイルスの遺伝子を調べる検査 | 10〜33日 |
| 第4世代の抗原・抗体検査静脈採血・検査室で行うもの | 18〜45日 |
| 抗体検査 | 23〜90日 |
感染後の期間についての一般的な目安です。NATの「10〜33日」は、通常その間に検出できるようになるという意味で、33日を過ぎると検出できなくなるという意味ではありません。指先採血の迅速抗原・抗体検査は18〜90日で、静脈採血の検査とは異なります。当院で上記すべての検査を実施するという案内ではありません。[6]
早い時期の検査にも意味はありますか?
あります。PEP開始時などの検査は、それ以前からの感染がないかを確認する目的があります。ただし直前の接触による感染は検出できないことがあるため、後日の検査も必要です。「今は早いから」と、PEPの診察まで先送りしないでください。[7]
PEPやPrEPの薬を使っていると、感染していても検査で検出できるようになる時期が遅れることがあり、通常のウインドウ期の表だけでは判断できません。米国CDCのPEP指針では、接触後4〜6週と12週のフォローアップ検査が示されています。実際の日程・検査方法は処方元で確認し、途中の陰性だけで予定された検査を中止しないでください。[7]
症状や検査結果は、どう受け止めればよいですか?
発熱、のどの痛み、発疹があっても、症状だけでHIVとは判断できません。[10]症状がない場合も同じで、感染の有無は適切な検査で確認します。スクリーニング検査で陽性と出た場合は、確認検査が必要です。HIV感染が確認された場合には、専門医療機関での診療・治療につなげます。[6]
当院への相談と検査費用
感染確率が気になるときは、「何%なら安心か」を探し続けるより、接触した日時と内容を整理すると、必要な対応を決めやすくなります。当院ではPEPとHIV検査の相談に対応しています。
- HIV検査
- 4,500円税込・自由診療
- HIV検査の即日結果オプション
- +4,000円検査料と合わせて8,500円(税込)
「即日」は結果のご案内についてです。接触当日の感染を判定できるという意味ではありません。検査の種類、受検時期、即日結果への対応可否は受診前に確認してください。PEPや追加する検査の費用は別です。
PEPの費用・受け取り方法は、PEPの料金・受診案内で確認できます。オンラインでの受診を検討する方は、PEPオンライン診療の案内もご覧ください。薬の到着時刻は、地域や配送状況などによって異なります。
PEPの開始を急ぐ方は、LINEの返信や配送を待つことで開始が遅れないよう、まず受診・受け取りの可否を確認してください。
医師紹介
金谷 正樹
モイストクリニック
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックにて性感染症を中心に診療。日本性感染症学会会員。細菌学と免疫学の知見を活かし、患者さまご本人とパートナーさまが共に幸せになれる医療を目指しています。
参考資料
参考資料の閲覧日:2026年9月12日
- CDC. HIV Risk and Prevention Estimates. 数値の条件はHIV Risk Reduction Tool:About the dataも参照。
- Patel P, et al. Estimating per-act HIV transmission risk: a systematic review. AIDS. 2014;28:1509–1519.
- WHO. The role of HIV viral suppression in improving individual health and reducing transmission: policy brief. 2023.
- CDC. How HIV Spreads.
- CDC. Known or Possible HIV Exposure Scenarios and Associated nPEP Considerations. 2025.
- CDC. Getting Tested for HIV.
- CDC. Antiretroviral Postexposure Prophylaxis After Sexual, Injection Drug Use, or Other Nonoccupational Exposure to HIV — United States, 2025.
- CDC. What Can Increase HIV Risk?
- HIV検査・相談マップ「これって、性感染症?」
- 日本感染症学会「急性HIV感染症」
