監修:金谷正樹 医師|医学確認日:2026年9月23日
クラミジアに感染しても、必ず不妊になるわけではありません。ただし、性器の感染が子宮や卵管へ広がると、炎症による癒着や卵管の詰まりが妊娠を妨げることがあります。感染を治すことと、卵管の状態を調べることは別です。陽性なら治療を受け、妊娠を希望している方はこれまでの感染歴も含めて婦人科へ伝えましょう。[1][2]
「陽性だったので、もう妊娠できないのでは」「以前治療したけれど、卵管は大丈夫だろうか」。このページでは、クラミジアと不妊の関係、検査でわかること、妊娠に向けた相談の目安を説明します。
クラミジアは、なぜ不妊の原因になるのですか?
女性の性器クラミジアは、子宮の入り口にあたる子宮頸管から、子宮内膜や卵管などへ広がることがあります。このような子宮やその周囲の炎症を、骨盤内炎症性疾患(PID)と呼びます。クラミジアは原因の一つで、PIDにはほかの細菌が関係することもあります。[2]
卵管は、卵子を取り込み、精子と卵子が出会い、受精卵を子宮へ運ぶ働きをしています。炎症で卵管が狭くなったり詰まったり、周囲と癒着したりすると、この働きが妨げられます。こうした卵管の問題による不妊が「卵管性不妊」です。卵管の損傷は、子宮以外の場所に妊娠する異所性妊娠(子宮外妊娠)のリスクにも関係します。[1][4]
ただし、クラミジア陽性、PID、卵管の損傷、不妊は同じ診断ではありません。検査が陽性だったという結果だけで、「卵管が詰まっている」「妊娠できない」と判断することはできません。
不妊になる確率は、どのくらいですか?
感染した人のうち何%が不妊になるかを、一律には示せません。治療の有無、繰り返した感染、調査対象、追跡期間などによって数値が変わるためです。
2024年に報告されたオランダの長期追跡研究では、クラミジア感染歴のある女性は、ない女性に比べて、卵管性不妊のリスクが約2.8倍と推定されました(調整ハザード比2.75、95%信頼区間1.53〜4.94)。ただし、研究全体で卵管性不妊の発生率は低く、感染歴があっても多くの人には起きていません。[5]
この「約2.8倍」は、感染した人の28%が不妊になるという意味でも、当院を受診した方の確率でもありません。治療を受けた人も含む海外の観察研究であり、未治療のまま放置した場合の確率や、一人ひとりの妊娠の見通しを示す数値ではないことに注意が必要です。
症状がなければ、卵管への影響は心配ありませんか?
痛みがないことだけでは、感染や卵管への影響を否定できません。クラミジアは自覚症状がないことが多く、PIDも症状が軽い、またははっきりした症状がないために見逃されることがあります。[1][2]
おりものの変化、不正出血、性交時の痛み、下腹部痛などがあれば、原因を調べるために受診してください。パートナーが陽性の場合は、自分に症状がなくても検査・治療の相談が必要です。[1]
一方、「無症状のほうが不妊になりやすい」とは言い切れません。前述の研究では、症状があった感染ではPIDのリスク上昇がみられましたが、無症状の感染では明確な上昇は確認されませんでした。無症状なら放置してよいという結論にはなりませんが、症状の有無だけで将来の不妊リスクを決めつけないことが大切です。[2][5]
何か月・何年放置すると、不妊になりますか?
「何か月までは大丈夫」「何年経ったら必ず不妊になる」という境界はありません。感染した時期がわからないことも多く、経過年数だけでは卵管の状態を判断できません。
過去の感染が心配な方も、今から検査・治療や必要な婦人科の評価を受ける意味があります。すでに陽性とわかっている場合は、症状が出るのを待たずに治療を受けてください。最近の接触について調べたい方は、クラミジア検査を受ける時期も参考にしてください。
治療すれば、不妊の心配もなくなりますか?
抗菌薬で感染を治療することはできますが、すでに生じた卵管の癒着や損傷まで治るとは限りません。感染がなくなったかどうかと、妊娠しやすさに影響が残っているかどうかを分けて考えます。[1]
| 状態 | 治療・確認の考え方 |
|---|---|
| クラミジア感染が確認された | 処方された抗菌薬で治療し、指示された時期に経過や検査結果を確認します。 |
| 下腹部痛などがあり、PIDが疑われる | 婦人科での診察が必要です。合併症のないクラミジア感染とは薬の組み合わせや治療期間が異なり、入院が必要な場合もあります。 |
| 感染は治療したが、妊娠しにくい | 卵管だけでなく、排卵やパートナーの精液所見なども含め、不妊の原因を調べます。 |
PIDでは複数の細菌を考慮した治療が必要です。クラミジア用の残り薬を自己判断で飲むことや、治療後も続く腹痛を「薬を飲んだから大丈夫」と放置することは避けてください。[2]
卵管の問題が見つかっても、妊娠の可能性や治療の選択肢は、損傷の程度、年齢、ほかの検査結果によって異なります。手術や体外受精などを検討する場合もありますが、クラミジア陽性という理由だけで、すぐに体外受精が必要と決まるわけではありません。[4]
薬の種類・飲み方はクラミジアの治療薬、治療後の検査時期は再検査・陰性確認で詳しく説明しています。
クラミジア検査が陰性なら、卵管も問題ありませんか?
感染を調べる検査と、卵管が通っているかを調べる検査は別です。尿や膣ぬぐい液のクラミジア検査が陰性でも、過去の炎症による癒着や卵管の通り道まではわかりません。[2][6]
| 知りたいこと | 主な検査と、その限界 |
|---|---|
| 採取した部位にクラミジアがあるか | PCRなどの核酸増幅検査。検査時期や採取部位の影響を受け、卵管の通り道は評価できません。 |
| 過去に感染した可能性があるか | 不妊診療で血液のクラミジア抗体を調べることがあります。陽性だけで現在の感染や卵管閉塞は確定できません。 |
| 卵管が通っているか | 婦人科で子宮卵管造影などを検討します。検査の必要性や時期は、症状・感染の有無・妊娠希望などに応じて判断します。 |
クラミジア抗体が陽性でも、その結果だけで「不妊」と診断されるわけではありません。反対に、抗体が陰性でも卵管の問題を完全に除外できません。不妊の検査結果を受け取った方は、核酸増幅検査なのか、抗体検査なのかも確認しましょう。[6]
また、下腹部痛などが続く場合は、性器のクラミジア検査が陰性でもPIDなどの評価が必要なことがあります。陰性結果だけを理由に婦人科の受診を先延ばしにしないでください。[2]

妊娠を希望している場合、いつ婦人科へ相談すればよいですか?
陽性だった場合は、まず感染の治療を受け、妊娠を希望していることを担当医へ伝えてください。妊娠中、または妊娠の可能性がある場合は、薬の選択やその後の確認も変わるため、処方前に必ず伝えましょう。[7]
妊娠しにくさについては、一般に、避妊せずに性交を続けても35歳未満では1年、35歳以上では6か月妊娠しない場合が、検査を始める目安です。ただし、PIDや異所性妊娠の既往、卵管の異常、月経不順などがある方、40歳を超える方は、この期間を待たずに相談を検討します。[6]
過去にクラミジアを治療した方も、検査を受けた時期、薬を飲んだ時期、治療後の結果を婦人科へ伝えると評価に役立ちます。不妊には複数の原因があるため、クラミジアだけに原因を絞らず、必要に応じてパートナーも一緒に検査を進めます。
男性のクラミジアも、不妊に関係しますか?
クラミジアが精巣上体炎を起こし、不妊につながることがあります。ただし、尿のクラミジア検査が陽性だっただけで、精子の状態は判断できません。妊娠しにくい場合は、精液検査を含めて泌尿器科・生殖医療の専門施設へ相談します。[6][8]
精巣の痛みや腫れがある場合は早めに受診してください。突然の強い精巣痛は、精巣捻転などの緊急疾患の可能性があり、すぐに救急受診が必要です。[8]
治療後の再感染を防ぐには、何が必要ですか?
自分だけが治療しても、パートナーの感染が治療されていなければ再感染することがあります。パートナーも症状の有無にかかわらず医療機関へ相談し、検査と必要な治療を受けてください。[7]
性行為を再開する時期は、ご自身とパートナーの治療、症状の改善を確認したうえで、医師の案内に従ってください。陰性確認の指示がある場合は、その指示にも従いましょう。治療後には、再感染を調べる検査が必要になることもあります。[7]
妊娠を希望していても、感染が未治療の間は妊活を急がず、双方の治療を優先します。具体的な再開条件や伝え方は、パートナーの検査と性行為の再開時期をご覧ください。
当院では、どこまで相談できますか?
モイストクリニックでは、クラミジアなどの性感染症の検査・治療を行っています。性器クラミジアの単独検査は1部位4,500円(税込)、通常の結果は2日が目安です。検査処理は月〜土曜日で、検体状態などにより1日程度前後する場合があります。即日検査にも核酸増幅検査を使用しており、通常料金に追加費用がかかります。
当院の性感染症診療は自由診療です。検査項目・部位、即日検査の利用、陽性後の治療によって費用が変わるため、性感染症の検査・治療料金をご確認ください。
卵管の通り道や不妊原因の詳しい評価は、婦人科・生殖医療の専門施設での相談が必要です。当院の性感染症検査だけで、将来妊娠できるかどうかを判定することはできません。下腹部痛や発熱がある場合、妊娠中の腹痛・出血がある場合は、婦人科などでの対面診察を優先してください。
受診時には、症状、過去の検査結果と治療歴、妊娠の希望・可能性をお伝えください。
監修医師

金谷 正樹 医師
国際医療福祉大学病院、東京医科歯科大学病院(現 東京科学大学病院)などで研鑽を積み、モイストクリニックで性感染症を中心に診療。日本性感染症学会の会員として活動しています。
参考資料
- CDC — About Chlamydia(2025)
- CDC — 骨盤内炎症性疾患(PID)の診療指針(2021)
- NHS — 異所性妊娠の症状と緊急受診の目安
- 米国生殖医学会(ASRM)— 卵管の手術と生殖補助医療に関する委員会見解(2021)
- オランダの長期追跡研究(2024)— クラミジア感染歴と生殖器合併症
- 米国生殖医学会(ASRM)— 不妊症の評価に関する委員会見解(2021)
- CDC — クラミジア感染症の診療指針(2021)
- CDC — 精巣上体炎の診療指針(2021)
資料確認日:2026年9月23日。海外の研究・診療指針と当院の提供内容を区別して記載しています。
